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12 09
2014

書評 労働・フリーター・ニート

「人生でなにをすべきか?」――『このつまらない仕事を辞めたら、僕の人生は変わるのだろうか?』 ポー・ブロンソン

4757210477このつまらない仕事を辞めたら、
僕の人生は変わるのだろうか?

ポー ブロンソン Po Bronson
アスペクト 2004-06

by G-Tools


 タイトルもよすぎるし、テーマもひじょうに興味深いのだが、50人の人生の転機について集めたこの実例集は、要約やエッセンスがなされておらず、教訓や意味をつかみとるのがひじょうにむづかしいのでわたし的には残念感がつよい。類書がないだけに豊かな果実をもぎとりたい思いはつよかったのだが。

 本書は「人生でなにをすべきか?」という問いに真摯に立ち向かった人たちの物語が、著者のインタビューや交流によって描かれている。

 スタッズ・ターケルの膨大な『仕事!』(72年)という本に似ているのだが、この書は仕事自体が問題とされているのに対し、本書は人生の転機がテーマである。アメリカでも70年代ころまでは終身雇用的な自分の仕事にたいする疑問をもたない生き方が主流であったのだが、そのころを境に転職をしない人間は稀有になるほど社会変化の激しい時代に突入している。ゆえに「人生でなにをなすべきか」「自分はほんとうはなにをしたのか」と問うことがひじょうに重要な問いになっている変化をあらわしているのだろう。

 著者のポー・ブロンソンは64年に生まれており、両親の中年の危機をみて育ったといっている。両親ははやくに大人の仲間入りをし、住宅ローンや子どもの責任のために夢をあきらめ、中年になって青春をとりもどしたい思いに駆られるようになる。そして著者の世代はそのような失敗におちいらないよう、できるだけ責任にとりこまれず、青春時代にしがみつき、遅い結婚をし、子どもを先延ばしにする。このような世代の変化のなかに本書の問いのような「人生でなにをなすべきか」という問いは生まれたのだろう。

 著者はスタンフォード大を卒業し、証券会社で働き、作家をめざした青年だったので、本書に出てくる人生の転機を迎えた人たちはかなりのところエリートや文学まわりな人たちであったと思う。ホワイトハウスに出入りする人や起業をおこなう人など、かなりのところわたしには実感をともなわない経歴の人も多かった。

 これまでの人生はいかに金を多く儲け、出世するかが成功物語であったが、おのれの心を解放し、才能を花開かせ、世界への贈り物を明白にする、そのような物語が成功になるべきだというのが著者の思い。

 いく人かの印象深い人をあげるとすれば、弁護士からトラック運転手になったある男は、子どもの質問の一瞬一瞬に注意を払って、有意義にすごすことを教えてくれた体験によって、弁護士の仕事を投げ出した。また27年間、物理学を教えた教授が年齢をかえりみず弁護士に挑戦する話は、人生に遅すぎるということはないという教訓の一例に思えた。

 子どものときから医学の道に憧れてその道にひたすら邁進してきたのに、与えてばかり、捧げてばかりの人生にいや気がさしてやめた女性の話も興味深かった。人好きのする男がセールスマンは天職だと思っていたのに情熱をそそげず、看護士という人助けのできる仕事に天職をみつける例も意義深いと思う。

 ニューオリンズの職業で自己を規定しないという土地柄には興味をもった。成功を追い求めるとほんとうにやりたいこと、ほんとうになりたい自分が犠牲になることがある。ニューオリンズはほんとうにやりたいことと触れ合える場所だという。夢は現実化されなくても現実であるし、人は自由時間を増やすために働く。失敗のしようがない、努力だけで認められる文化であると。いささか理想化されすぎるに思えるが、環境が人を変えることもあるのだなと。

 家族や子どもをもつと人生の意義をさがすという苦労から解放されるという話もある。家族が意味をあたえてくれるから。いっぽう、意義のない仕事についやすのに耐えられなくなるということもある。情熱を欠いた人生を子どもたちに見られたくないと思うからだ。

 子どもをもつと自分を成功者のような気分にさせてくれるのか。子どもを持つと従順ではなく忍耐強くなる。寛大になる。ありきたりな成功や失敗で測らなくなる。与える満足に満たされるようになる。満足のかたち、モノサシが変わるのだろう。他人のモノサシで自分を測るクセを人生のどこかで捨てることはたいせつである。

 まあ、本書の50人の人生の転機から、教訓や示唆を読みとるのはなかなかむづかしいように感じられた。こちらになにか機が熟しているものがないかぎり、他者の人生から啓示をうけとるのも容易ではないのだろう。

 この本は人生の転機を後押ししているのだろうか、それともおしとどめようとしているのだろうか。生計の維持に釘づけられていると迷うことすら禁止されているのだが、抑えていてもいつかわきあがる問いが、「人生このままでいいのか」といった疑問だろう。

 本書の問い、「人生でなにをすべきか」という問いによって、いかに自分のことを知らないか思い知らされた。


Q・次の2つから生きたい人生を選びなさい ― ハーバードの人生を変える授業II「勇気」の科学 〜一歩踏み出すための集中講義〜「このままでいいのか」と迷う君の 明日を変える働き方「働く居場所」の作り方‐あなたのキャリア相談室キャリア・サバイバル―職務と役割の戦略的プラニング (Career Anchors and Career Survival)


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