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2014

書評 労働・フリーター・ニート

真摯に自己に問いかける――『おとなの進路教室。』 山田 ズーニー

4309411436おとなの進路教室。 (河出文庫)
山田 ズーニー
河出書房新社 2012-04-05

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 自分の人生はこのままでいいのか。自分のやりたいことはなにか。ほんとうに自分に合った仕事はなんなのか。そういった進路の迷いには好著の一冊。

 ものすごく心の深部に響いてくる言葉もあるし、著者の人生行路のうえの問いかけだから同じ経験をしたことのない読者にはとどかない部分もあるかもしれない、またこちら側の自分にたいする深い問いかけをなさなかったら読み込みもできない書であると思った。著者自身の自分にたいする真摯な問いかけがあるからこそひびいてくる書であって、もし読者自身の自分にたいする問いかけがなければ共振することもない部分もあるだろう。自分が試される一冊。

 著者は編集の仕事を16年やり、そのあと思ってもみなかった自身が執筆や講演をおこなう独立の道をえらび、そのためにひじょうに真摯な問いかけをもって、人生の進路についての言葉をひねりだしている。まさしく「ひねりだしている」のであって、適当に進路を決めている人間には浮かびもしない考察である。

 やりたいことは自分の中にあると思っていたと著者はいうが、独立後の仕事は自分が思ってもみなかった人とのつながりのなかで引き出され、導かれた経験から、やりたいことは人とのつながりのなかにあると思うようになる。

 やりたいことは未来、未来はだれも経験はないし、スキルもない。失敗する日々。しかし希望がある日々。できることだけやっていても、希望・やりたいことにつながらない。

 やりたいことがないからダメだ、就職に積極的になれないは放漫だという。会社は自己実現の場ではない。自分には決められないならそれを受け入れて、生計を立ててゆく上で見えてくるものもある。

「いまから外に出て、五千円稼いできてください」といわれれば、どうやって稼ぐか。「五千円分、勉強してきてください」といわれれば、ずいぶん楽だろう。お金というのは、「ひとりの人間を歓ばすか、役に立つ」ことではじめてもらえる。ひとりの人間を「お金を払いたい」と思わせる域まで歓ばすことがあなたはできますか? 会社に勤めるということは初日からそういった労働の価値を、勉強することではなくて、提供する勤めを背負うということだ。

 この本はいくつかのコラムが並んでいるが、いちばんの傑作は21章の「いつかより強くなって」だろう。いまの自分はダメだから、いつか稼いで、いつかもっと高い地位に立ってそれから…という人が多いのだが、友だちや恋人がもとめているのは、その「いつか」だろうか。強いアイテムで鎧を固めようとしない素の自分ではないのか。この章はひじょうにひびくものがあった。

 就職で落ちる人の文章は事実から意見へといっそくとび。好きだから→ここで働きたい。人の心を打つ文章はその理由を深く追究したものだ。自分が働きたい根拠をいかに深く掘り下げられるか。このねばり強さまで掘り下げられる問いをみずからに課しているか。

 表現することやステージに立つことは、自分が死ぬことだという。自分の思いを人前に出すことは、その思いの死だ。「自分と別の場所に投げ出されて、誰がどう思おうが関与できないということはある意味、死だと思います」。人前に出るということは他人の思惑の推測をいっさい放棄してしまうことなんだなと。

 この本は「真摯に問いかける」という言葉がぴったりくる本だと思う。自分の生き方や進路について、自分はこれほどまでの真摯に、深く掘り下げ、問いつめたことがあるだろうか。そういった適当さ、浅はかさがうきぼりになる書であると思った。


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