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2014

右傾化再考

あまりにも知らないので一読――『「在日コリアン」ってなんでんねん?』  朴 一

4062723468「在日コリアン」ってなんでんねん? (講談社+α新書)
朴 一
講談社 2005-11-18

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 いつか在日朝鮮人についてはくわしい本でも読まなければと思っていて、この本を手にとってみたが、そういう初心者にとっては政冶的な権利獲得の話が多い本書はあまり興味をひかれるものではなかったかもしれない。まずは在日朝鮮人が生きてきた苦難や差別の歴史を知るほうが先決だっただろうか。

 ヘイトスピーチや嫌韓本があふれる昨今、この本が出た2005年からは状況がだいぶ変わっている。その後、韓流ブームや白昼堂々、コリアンタウンでヘイトスピーチがくりかえされるなど、対朝鮮感情はアップダウンをへている。日本人が民族感情によって自尊心をとり戻そうとすればするほど、日本にいる他民族が浮上してくる。嫌韓本の氾濫によっていっぱんの日本人にどのような感情が醸成されることになるのだろうか。

 この本の冒頭は日本で活躍してきた有名人のうちの在日人をとりあげている。力動山などは戦後日本の復興をささえたのだが、在日人だったのであり、戦後の人たちは日本人を応援していたのだろうかとなる。近ごろでは右傾化に走っていたやしきたかじんのカミングアウトといった例もある。

 芸能人のなかにも多く在日人はふくまれており、芸能という仕事は差別や周辺の追いやられてきた人たちのハングリー精神や上昇志向の受け皿となってきたといえるかもしれない。表舞台に立つ憧れられる人たちは、周辺や差別の底辺から立ち上がってくるというのは、ひとつの図式として定番のものなのだろう。ふつうにのん気に生きてきた人はハングリー精神も競争精神もそう激しくならない。いまは沖縄の芸能人進出もめだつ。

 著者は『僕たちのヒーローはみんな在日だった』という本も書いており、芸能人や有名人の違った面を見れるかもしれない。ヘイトスピーチや嫌韓がさかんになるげんざいの状況をどう思っているのだろうか。

 けっきょく日本人は出自を明かさないと朝鮮人かも区別はできないのである。顔かたちで識別できない。国境とか国人というのはどこを見ても見出されるものではない。人は個人であって、その人となりであって、国家や政治を背負って、毎日や人生をおくっているわけではない。たいてい個人であり、政冶的・国家的でもない、ただの私生活者である。国家や国境のくくりで人を判断するのは、あまりにも「観念的」であり、「現実的ではない」といえるのではないだろうか。

 わたしとしては職業や就職で苦労してきた在日人がどのように苦難の人生を生きてきたかといった歴史のほうが興味をもてたように思える。あまり恵まれた職業人生を送ってきたわけではないわたしにとって、参考と共感ができる歴史と思うのである。

 ヘイトスピーチや嫌韓は、非正規や下流のグローバルな低賃金労働におびやかされる脅威からおこっているという見解があるが、排斥感情がおこるというより、共感や同情の気持ちがわきあがってきそうに思うのだが、どうなのだろうか。

 在日朝鮮人は日本人がやりたがらないような底辺労働でも低賃金で働かざるをえなかったのであり、大正や昭和の労働争議でも朝鮮人がいつまでもあきらめずに闘いつづけたという話も聞いたことがあるし、わたしには排斥感情より、共感のほうがわきあがりそうに思うのだが、違うのだろうか。つぎはこういった朝鮮労働者の苦難の話を中心にした本のほうを読みたい。


僕たちのヒーローはみんな在日だった在日一世の記憶  (集英社新書)在日の耐えられない軽さ (中公新書)韓国のイメージ 戦後日本人の隣国観 [増補版] 中公新書在日コリアン女性20人の軌跡


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