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11 03
2014

右傾化再考

戦争観のうつり変わりと時代――『「反戦」のメディア史』 福間 良明

479071196X「反戦」のメディア史
―戦後日本における世論と輿論の拮抗 (SEKAISHISO SEMINAR)

福間 良明
世界思想社 2006-05

by G-Tools


 ブックオフで線引きが多さの値引きをいえば、かんたんに値引きしてくれて100円で買えたので、みなさんもお試しあれ。

 基本的にわたしは戦争とか国家の議論にほぼ無関心であったので、にわかにこの本を既知の態度で語ることはできない。サンデルが問うていたけど戦争責任は戦後生まれや何世代あとまで背負わなければならないのかといった疑問がわたしの基本。国家や戦争に同一化する態度もわたしには縁遠いものだし、そういうこと抜きに市民生活に邁進する市民であるほうが平和を確保するのではないかとばくぜんと思っている。

 遠巻きにみていた戦争にたいする態度はわたしにとって不快感や欺瞞を感じるものであったので、こういった分析的・批判的態度からわけいってみるのがふさわしいだろう。戦争関連にかんするアレルギーだけで世の中をわたる態度はそれなりに批判されるものなんだろうが。

 この本はおもに反戦ものの古典とされる作品がどう受け入れられ、時代ごとにどういった異なった態度や思いを感じるように変わっていったのかといった学術的分析がなされている。平易に流れることなく、わかりやすさや単純さにも向かわず、議論も錯綜しているのでけっして読みやすい本ではないと思う。

 とりあげられた作品は、『ビルマの竪琴』、『二十四の瞳』、『きけわだつみの声』、『ひめゆりの塔』、『原爆の子』、『黒い雨』といった作品とそれに類するものである。小説や本、映画までが分析対象になっている。

ビルマの竪琴 (新潮文庫)二十四の瞳 (角川文庫)きけ わだつみのこえ―日本戦没学生の手記 (岩波文庫)ひめゆりの塔をめぐる人々の手記 (角川ソフィア文庫)黒い雨 (新潮文庫)


 古典はなんども映画化されているので、そのたびに評価や興行収入が変わっており、その時代に欲されていたもの、ナショナルなものが透かされて見える。時代背景の正当化といったものが、戦争ものに求められるものとずばりいっていいのではないか。

「「二十四の瞳」を見ていると、われわれは、ただ、戦争によって、平和を破壊され、純真な若者の多くを失ったのだ、という感慨を得るだけで、敵にどれだけの損害を与えたのかという点が全くぬけ落ちてしまう」 1954年の『二十四の瞳』はヒットを記録したが、朝鮮戦争による再軍備の恐れがあった。

 全共闘の時代の1969年に「わだつみ像」は学生によって破壊されているが、その像が象徴するものは「権力に迎合する大人たち」や「何の抵抗もできなかった無気力な大人たち」を映し出すものになっていた。

 『ひめゆりの塔』は1953年に映画史を塗り替えるヒットを誇ったのだが、95年の再映画化にはもういぜんのような関心が寄せられることはなかった。53年にはなんの疑いも抱かず、負傷した本土の兵士にいちずに尽くす「純粋」で「無垢」な少女は、加害責任を思い出させない安全なものだった。一丸となって闘った郷愁をもよわせるものとして批判する意見もあった。68年の再映画化でも前作にくらべると無視されるような興行成績になったが、すでに高度成長にはナショナルな自己を積極的に肯定してくれるような語りが求められていた。

 「唯一の被爆国日本」という神話はひろく流通しているのだが、強制連行された朝鮮人・中国人も被爆しているし、連合国の捕虜たちもいた。ビキニ環礁の現地住民も被爆体験をもっている。また広島、長崎は戦前、軍事関連施設が多くあったこともあまり知られているとはいえない。

 まあ、ばらばらに本書からひきだしたが、わたしの頭のなかで図式的なものにまとめることができないし、整理もされていない。反戦の古典はとうじのナショナルものを満足させる・正当化させるものが流行り、または無視されるのだといったことが、時代背景とふかく結びついていることが、本書から読みとれるのだろう。

 「加害者責任」ではなくて、ナショナルな情緒の「正当化」である。言語化されない情緒ではなく、はっきりとした言語で見せることにこの本の意味はあるのだろう。ナショナルなものは卑怯で、やましい正当化や隠蔽がうごめいているように思える。そのような感情や情緒がどのようなものだったか、こまかく切り刻んで言葉で見せてくれるのが本書ではないだろうか。


「戦争体験」の戦後史―世代・教養・イデオロギー (中公新書)日本人の戦争観―戦後史のなかの変容 (岩波現代文庫)敗戦後論 (ちくま文庫)戦争責任論―現代史からの問い (岩波現代文庫)戦後責任論 (講談社学術文庫)


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