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10 23
2014

右傾化再考

侮蔑はなぜ必要なのか?――『悪韓論』 室谷 克実

悪韓論(新潮新書)
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 書店にはダジャレでおちょくったような嫌韓本が山のようにならぶ。これはなんだということでお金をかけることすらもったいないと思う嫌韓本の一冊をブックオフで手に入れる。



 たくさん増えたはずの心理学者がこのような現象を分析する本だけを読みたいのだが、そういう本がまだ出ていないようでしかたなく嫌韓本を読むしかない。原因的にはなんなのだろう。経済大国凋落の補償か、韓流ブームへのコンプレックスなのか、相手国の反日思想の反感からなのか。

 本の内容はどれほど批判バイアスがかかった本なのか検証するほどの知識量がわたしにはないのだが、批判されることはそのまま日本へもとうぜん当てはまるブーメラン批判になるし、見下げる視点をもつ者はみずからの品性のなさと下劣さをさらすだけであると思う。

 批判は自分自身にいちばん当てはまることが多いので自身の下劣さにはね返ってくるし、だれかを見下し罵倒する人間が尊敬されたり品格を褒められることなどまずないと思うのだが、怒りに頭を燃やしている人間にはそれが見えない。

 ふしぎなことは対人個人では自己中や身勝手な人はまわりから批判されることがわかっているはずなのに、国家のことになるとなぜ自分勝手や自己利益に邁進することがはばかられることに思われないのかということである。貪欲と利己主義だけが国家に投影されるのはおかしな現象である。国家には他国や他人という関係がないのだろうか。

 高学歴競争や就職難、職業差別、自殺、売春など日本にも同じような病魔があるはずなのだが、韓国だけが批判される意味がわからない。他国を批判すれば、日本では問題が消滅して、問題が解決されるというのだろうか。批判すれば、とうぜん自国の問題にもはね返ってくる。なぜ自国を棚上げできると思うのだろうか。

 ウソつき大国、詐欺大国というあり方はさすがに異常に思えたが、このバイアスはどれほどかかっていて、冷静にはどの程度が事実なのかわからないのがこの本の欠点だ。

 韓国は「滅公奉私」で、もっとも大事なのは自分自身と家族、先祖と一族だと批判されているのだが、会社は「オーナーの私物」としか思っていないというあり方は批判されるべきものではなくて、「滅私奉公」で個人が滅ぼされる日本人にとってはうらやましい、学ぶべきものではないのか。

 基本的に批判したい、憎悪したいために書かれる本なんて正確さや客観性などまず信用も保証もされない本なので、冷静に疑わずに読むことができない。怒りや侮蔑に燃えるために読む本など、有益な情報などひとつもつかめないではないか。ものごとにはいい面もあるし、悪い面もある。善悪両方の面を冷静に見比べてどちらの傾向が強いかを見比べる視点をもたないと、そのことがらの良し悪しなど判断できない。一方的な視点の見方がいかに役立たないか。

 この本にはなぜ韓国をそんなに目の仇にするのかの理由を書いてくれていない。反日思想に激昂しているのか。それとも韓流文化や経済成長に嫉妬や劣等感をいだいているのか。あるいは民族的自尊心にすがるしか、もはや自尊心を満足させるものはないという自己の虚無感や劣等感がなせるものなのか。批判や蔑視はブーメランのように自分へと帰ってくるようにしか思えないのだが。

 すくなからずの人たちがこの嫌韓本のラッシュに日本人はこんなに下劣で品性のない国人だったのかと驚いていることだと思う。欧米との比較において劣等感から経済成長をめざした日本人はまだ謙虚で品性があった。いつからこのような侮蔑や罵倒で他国を貶めるような日本人が出現するようになったのだろう。

 ある程度の年齢のものなら違和感や不快感をいだく嫌韓本も、若い無垢な世代がこのようなシャワーをうけた十年、二十年後にどうなっているかということがもっと恐ろしいことではないだろうか。誇りある、名誉ある日本というのは、それをもち上げれば上げるほど、このような下劣な人間性も芽ばえてくるものではないのか。


▼岩波や中公の新書や学術書を読まないと韓国の実情なんて判断できないね。
先進国・韓国の憂鬱 (中公新書 2262)戦後韓国と日本文化――「倭色」禁止から「韓流」まで (岩波現代全書)徹底検証 韓国論の通説・俗説 日韓対立の感情vs.論理 (中公新書ラクレ)近代朝鮮と日本 (岩波新書)女たちの韓流――韓国ドラマを読み解く (岩波新書)


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