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2014

右傾化再考

歴史とは政治学――『日本を呪縛する「反日」歴史認識の大嘘』 黄文雄

4198936293日本を呪縛する「反日」歴史認識の大嘘 (徳間文庫)
黄文雄
徳間書店 2012-11-02

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 歴史修正主義なんておそろしい、おどろおどろしいものに思えて、右翼的なナショナリストの見解なんか近づきたくないという運動に思えていた。

 読んでみると、ああ、こういう見解もあるな、こういう見方もできるんだな、学者的な態度とするのなら、こういう違った見方・見解は、いくつも捉えてみるのが正解なんだろうなと思えた。ただ、この見解にくみせずにいかに反対側の立場とか批判する側の見解もしっかりととり入れられるかという作業も大事なんだと思う。ネトウヨさんとかはこの一方的な立場をたったひとつの真実だとか思い込んでしまうのだろう、というか、擁護や称賛こそが目的なんだろうけど。

 この著者の立場は、「日本擁護史観」とか「日本称賛史観」とかいっていいのかな。「自虐史観」という名前はよく聞くが、それに相対する史観の名前は「自由主義史観」とよくいわれるのだが、ぴんとこない。「侵略史観」とか「暴虐史観」というものをしりぞけて、あるいは擁護とか称賛の系統をつまみあげてきて、「日本正義史観」というものを啓蒙するのが、著者の立場のよう。

 ひとことでいえば、著者の立場は「近代化史観」というか、「文明使命史観」といったらいいのかな、未開の朝鮮や中国、台湾に近代化・文明化をほどこしたのはだれか、日本が侵攻するいぜんのそれらの国家は内乱や殺戮、病が蔓延する未開の国だったではないか、というのが著者の立場のよう。なるほど、これは納得できたというか、それ以前に反論や批判できる歴史知識をわたしはもっていないのだけどね。

 著者は台湾の38年生まれだが、風土病や道路も匪賊が跋扈してつくられなかった台湾に、近代的なインフラをつくり、近代国家をつくりだしたのは日本であるという感謝と称賛の気持ちがあるらしい。朝鮮合邦後には人口が2.4倍もふくらむほどの近代化を達成したのだし、満州国は未開の東北の地に近代工業国家をこつぜんと生んだし、中国は日本に侵攻されなくとも列強に分割・侵攻されていたわけだし、日中戦争時には中国は国家として統一されず、三つ巴の内戦に日本はひきずりこまれただけだというのが、著者の見解。

 「近代化の恩恵史観」だよね。「文明の使命観」は西欧の国家が植民地化するさいの正当化と正義の論理であったのであり、被植民地化された人民たちは、その一面的な裁断だけをとり入れられるかというと疑問だよね。

 日露戦争の勝利により、西欧や白人による植民地化されていたアジアの国々ははじめて独立の意志や劣等感を払拭できるようになった日本の近代化の意義は大きいと著者はいう。この見解はとうぜん中韓には反発を生む問題の多い歴史観なのであって、一面的な解釈はとてもできそうにもない歴史観といってもいいかもしれない。

 著者は「中国人にとって歴史とは政治学だからだ。歴史学は、すなわち政冶学である」というのだが、これはひとり中国人に当てはまるのではなくて、すべての人間と国家にあてはまる歴史観だろう。政治や立場が先行すると、もう真理のよって立つ場はなくなってしまって、ひたすら政争の具でしかなくなるわけだから、歴史とは目隠しをされることが常識なのかもしれない。自国の勝利や正義が正当化・優先されるともう歴史の真理なんて永遠に閉ざされるし、そもそも歴史にはどちらかの側に立つしかない「正当化史観」といった要素はぬぐえないのかもしれない。

 日本の戦争はなんだったかというと、アジア保全の戦いを日本一国だけで戦っていたものだ、西欧列強から侵略されないための正当防衛の戦いだったのだと著者はいう。日本が悪かったのは戦争に敗れたことだけ。

 新聞やマスコミの報道になると歴史認識はものすごく恐ろしくて、おどろおどろしくて、アンタッチャブルでヒステリックな論争に思える。でも学問的態度からすれば、ただの見解や見方がいくつもあるうちのひとつの解釈にしかすぎない静かなものに思える。べつにそういう見解もありかなくらいにしか思えない。

 まあ、わたしにはヒステリックな国家闘争のイメージばかりがあったのだが、歴史修正主義というのは、読んでみるとたんに歴史のひとつの解釈・見方にしか思えなかった。静かだった。できるだけ第三者的な立場に立ちたいのだけどね。歴史観の違った角度からの見方というのは、知識をたのしむ者としてはおもしろいものだった。


歴史における「修正主義」 (シリーズ歴史学の現在)「歴史認識」論争 (知の攻略 思想読本)歴史修正主義からの挑戰―日本人は「日本」を取り戻せるのか?英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄 (祥伝社新書)「自由主義史観」の病理―続・近現代史の真実は何か


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