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08 17
2014

右傾化再考

反マルクス主義の昭和8年のブックガイド――『思想問題に関する良書選奨』 文部省学生部

 
ryousyo.jpg 『思想問題に関する良書選奨
 文部省学生部
 1933年 昭和8年
 近代デジタル・ライブラリー


 近代デジタルライブラリーを読むにあたってなにかブックガイドのような本になればと思って、昭和8年、1933年に学生向けの良書を薦めたこの本をダウンロードして読んでみた。

 読みたくなるような本は見つけられなかったかな。合計で60冊、紹介と概説がのべられていて、推薦、紹介、選定の本が選ばれている。

 「思想問題」というのはマルクス主義、共産主義思想のことであって、学生が赤化にそまるのを防ぐために良書とよばれる本を薦めたものである。とにかくマルクス主義はまちがっている、ここがおかしい、と指摘する本が多く紹介されており、とうじのマルクス主義への脅威や警戒がつたわってくる。

 冒頭の推薦7冊に掲げられている本は以下のとおりである。


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 安岡正篤、紀平正美といった右翼、国家主義者のようなイデオローグが掲げられているのが時代というものか。マルクス主義に対抗・対置されるものとして、国家主義は称揚されていた構図が浮き上がる。しかしその止揚が国民におおくの犠牲を強いることになってしまうわけで、日本はここで大きな選択の過ちを犯したように思える。アメリカの対イラク政策で反政府組織をそだてて、力を得たそれに反抗されているようなものだ。

 皇国精神や国体といった戦前のまがまがしいキーワードが踊る書物も紹介されており、当時ですらいくぶん失笑を買うような精神がいつの間にか国全体を覆うようになる時代をこの時点で想像できたのだろうか。

 たとえば、筧克彦のような天皇制国家主義者は、国体に服従するのは強制ではなく、自我に従うことだといっていたりする。この皇国精神の論理とイデオロギーをもうすこしくわしく知ってみようかな。


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 つぎに掲げる紀平正美は哲学者から日本主義になった人で、マルクス主義や物質主義の葛藤の解決には国体であるといった答えを求めるようになる。


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 この時代には既成権力層の利己主義や無能に国民のおおぜいは愛想をつかし、社会主義による既得権益層の排除や転覆をねがうようになっている。その克服として、マルクス主義に変わるものとして、全体主義のような日本主義、国家主義が求められたのではないのか。

 政府を転覆しようとした人たちとそれをくつがえし、日本の既成権力に力と神話を与えるような物語が欲され、日本をとんでもない方向に導いてしまうのである。大正、昭和におこった国内改革への処方箋の失敗が、のちのカタストロフィーを用意したように思えるのである。この反省と警戒は、同じようなわだちを踏みそうな現代にも通用する教訓だろう。



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