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08 04
2014

右傾化再考

入門書ではなくて上級者向け――『北一輝論』 松本 清張

4480426825北一輝論 (ちくま文庫)
松本 清張
筑摩書房 2010-02-09

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 入門書として読むにはあまりにも議論が前のめりしすぎて、ついてゆくのがたいへん。ただし、入門書すぎる本も読みごたえがなさすぎるばあいもあって、一輝の思想のここがおかしい、まちがいという清張の指摘は、ほかの本でそう読めるものではないだろう。

 感銘した箇所を抜き書きする。

 世直しや一揆は一時的で散発的なものであって、豪商や商人に向かっただけであって、政治体制打倒までに向かったことがない。歴史学者は過大な期待をよせるべきではない。

 「改造法案」の出版権をゆずりわたしたあとの一輝は、ヤクザ的な暴力を背景にした「事件屋」や「恐喝屋」になっており、ロンドン軍縮会議(1930年)以降は、青年将校を威力背景にした「政治的恐喝屋」になっていた。

 宮崎箔天や頭山満というのはアジア主義の解放主義者と思っていたのだが、国権主義者は政府の手先となって外国侵略の素地をつくり、騒動をおこして日本の介入や出兵の端緒づくりが任務であったという。革命を手助けすれば、中国で内紛がおこり、実力を弱めることができる。志士たちは政府から内密に機密費や運動費をもらっていたのである。

 北は帝国主義を強調し、生存権として侵略主義も正義であると主張した。

 大正8年ころには世界的な軍縮化の流れが押し寄せ、軍人は制服を肩身せまく感じ、外に出るときは和服に着がえることが多くなっていた。

 明治憲法によって絶対君主国でなくなっている、石油王、鉄鋼王、炭鉱王、鉄道王などの王様の名にふさわしい貴族なみの立国がたくさんできあがっている。これを倒さなければ社会主義者ではないと北は考えていた。

 明治維新の大久保利通や木戸孝允のような天皇制官僚でさえ、共和民主にいかなければならないが、中間過程として君民共治をとるといっていた。

 二・二六事件はどれほど深刻でも天皇のかつぎ方をめぐる争いだった。

 以上で抜き書き終り。北一輝という人は日本の方向性・歴史を変えてしまった人なのだろうか。それとも革命家のひとりにすぎなかったのか。


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