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07 05
2014

右傾化再考

個別研究すぎ――『昭和期日本の構造』 筒井 清忠

4061592335昭和期日本の構造―二・二六事件とその時代 (講談社学術文庫)
筒井 清忠
講談社 1996-06

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4480090177二・二六事件とその時代―昭和期日本の構造 (ちくま学芸文庫)
筒井 清忠
筑摩書房 2006-10

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 これはミニマムな個別的研究すぎて、社会精神的なことを知りたいわたしにはムリというか、時期尚早の本だった。15年戦争はなぜおこったのかの探究を重ねてその先の針みたいな源流を探る本なので、読む人を選ぶ本。

 なおこの本は講談社学術文庫の絶版のあと、ちくま学芸文庫がひきついでまた絶版になっているよう。

 戦争の主導者とされる陸軍の派閥闘争や下克上、若手や中堅の勉強会、研究会をことこまかに追っており、まさしく15年戦争の水源を探し当てる旅。

 二・二六事件にしてもほかの研究もそうだろうが、個別経緯を追いすぎて、前史的な思想・精神状況を知りたいわたしには適さない本だった。

 すこし抜き書き。

 昭和超国家主義は二世代に分けられる。北一輝や大川周明のような思想的指導者と実行者たる青年将校。どうして古い世代が若い世代をひきつけることができたのか。

「彼らを突き動かしていたのは伝統的明治国家の「形式」に盛りこまれるのを峻絶した(逆にいえば明治国家の側が盛り込みきれなくなった)明治末期青年層の「生」=「自我」の問題であった。
…「自我」「個人」の問題を殆ど語ることのない伝統的な国家主義運動が第二世代の青年層を獲得することができなかった原因もここに求められるであろう」

 陸軍のものが考えていたこと。「人間の実生活に直接の関係を持たない問題に(大衆は)熱はない。哲理的、文化的理屈は兵卒や大部の国民には解らないのだ。すなわち直面した困難によらなければ士気は揚らない。よって、太平の世に士気を鼓舞するためには戦争は避くべからざるものなのである」
「一般大衆は実生活に直接関係あることでなければ動かないのだから戦争によって彼らを困難に直面させ士気を昂揚させねばならない」。倒錯した論理。

 二・二六事件の主導者の言。「然るに今の日本は何と云ふざまでありませうか、天皇を政治的中心とせる元老、重臣、貴族、軍閥、政党、財閥の独裁国ではありませんか、いやいや、よくよく観察すると、この特権階級の独裁政治は、天皇をさへないがしろにしているのでありますぞ、天皇を……」

 昭和初期は超国家主義のテロ・クーデターで充満している。社会主義の崩壊のあと、日本的社会主義の支持は民衆にもそうとうにひろがった。五・一五事件の減刑嘆願書は百万通あつまった。しかし元老や財閥、軍閥を倒そうとしたかれらの主目的は、歴史は彼らの思惑とは反対のコースをたどった。

 著者の言。「極端な国家主義や戦争を人々が礼賛した時代を理解不能なものとしてレッテルはりによって裁断しただけでは、再び同じような状況が現われそうになった時には何の力にもならないのである」


二・二六事件 (河出文庫)二・二六事件―「昭和維新」の思想と行動 (中公新書)私の昭和史(上) - 二・二六事件異聞 (中公文庫)図説・2・26事件 (ふくろうの本)五・一五事件―橘孝三郎と愛郷塾の軌跡 (中公文庫)


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だいぶ以前に加藤久武氏の「現代倫理学入門」
を「難しい」と書かれていましたが 私も難しいと
思いました。倫理学を学んだ 或る人によると
あれは良い本なのだが 加藤氏の説明にも 不分明な
所がある、理解の行き届かないのは 読者の責任
だけでは無い のだそうです。
では代わりに何を推薦するかというと 私も倫理学の
本は 余り知りません。
代わりに現代倫理学と深い関係のある中山竜一氏の
「二十世紀の法思想」岩波書店 は どうでしょうか。
これは法哲学の入門書なのですが、法哲学の本を
何冊も読んだが、どうしても わからないとことが
多かった。でも中山氏の この本では実に明快に
法哲学のキーポイントを伝えてくれる、と大評判
なのです。法哲学は現代倫理学と深い関係に
あります。この本を読まれてから加藤氏の本を
読むと よく理解できると思います。
とにかく入門書の名著だと思います。
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