HOME   >>  右傾化再考  >>  ドラッカーや堺屋太一のような蘇峰――『日本の名著 (40) 徳富蘇峰、山路愛山』
06 30
2014

右傾化再考

ドラッカーや堺屋太一のような蘇峰――『日本の名著 (40) 徳富蘇峰、山路愛山』

4124004303中公バックス 日本の名著 (40)
徳富蘇峰、山路愛山


中央公論社 1984-09

by G-Tools


 徳富蘇峰の『将来の日本』はおもしろかった。びっくりするくらいの鮮やかな世界の見取り図を見せてくれる書物で、明治19年(1886年)に出た本なら漢文調で読めないかもと観念していたのだけど、つっかえることもなく読めた。

 こんにちの読書でいえば、ドラッカーとか堺屋太一などのビジネス書に近い読後感をもった。世界の動態とか見取り図を明解にあらわしてくれる切り口は歴史に強いビジネス書のようだ。とうじの青年が景色をわすれるほどに熱中した気持ちがわかる。

 ただ蘇峰は平民主義や自由民権の立場をこのデビュー作ではあきらかにもっていたのだが、日露戦争の三国干渉を境に変節し、180度ひっくりかえったような国権主義者、帝国主義者になり、戦後A級戦犯の容疑をかけられたくらいなので、こんにち岩波文庫とかの古典として読まれることがないのだろうか。

 蘇峰は「生産社会」とか「武備社会」、「腕力世界」といった言葉で世界を切り分けてみせて、力ではなくて生産や富が戦争を決する時代になったと明解に解いてみせる。これはこんにちでいえばアルヴィン・トフラーを思わせるね。

 戦争に勝つのは武力ではなくて、その武器を買う経済力をもつ国なのだといった。まず第一にめざされるべきは強兵ではなくて富国なのだと説いた。19世紀からの動態がいっきょに見わたせる感をあたえる書物である。

 歴史上の褒めたたえられるべき偉人はナポレオンやビスマルクではなく、アダム・スミスやジェームス・ワットなのだといった。これドラッカーも世界を変えた偉人はダーウィン・マルクス・フロイトではなくて、マルクスの代わりにフレデリック・テイラーを入れろといった言葉に通じる。

 このころの蘇峰は民衆の味方、平和の尊さ(商業的利益からだが)を説くような人だったのだが、江戸幕府を批判する筆もまるで人情本のような民衆の搾取を説いて、貴族世界の目的はおのれを利するためであって、ほかを泣かせるのはおのれが笑うためだといった心に響く批判をしている。

 封建社会においてはみな一様に上に向かっては無限の奴隷、下に向かっては無限の主人と一蹴している。

 でもこのような人が180度の変節、裏切りをおこなうのだね。

 この「日本の名著」には山路愛山という歴史家もおさめられていて、「近世物質的の進歩」「明治文学史」といった論文を読んで、あとは未読でとりあえず閉じることにした。


勝利者の悲哀―日米戦争と必勝国民読本近世日本国民史 明治三傑 西郷隆盛・大久保利通・木戸孝允 (講談社学術文庫)近世日本国民史 維新への胎動(上) 寺田屋事件 文久大勢一変 上篇 (講談社学術文庫)徳富蘇峰―蘇峰自伝 (人間の記録 (22))徳富蘇峰―日本ナショナリズムの軌跡 (中公新書)


関連記事
Comment
Trackback
title>
Trackback URL
Comment form









管理者にだけ表示を許可する






google adsense
全ての記事を表示する
ブックガイド特集
月別アーカイヴ
プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。ビジネス書、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、精神世界、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

twitterはこちら→ueshinzz

FC2カウンター

Page Top