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05 25
2014

右傾化再考

戦後思想のまとめ本が少ない――『戦後思想は日本を読みそこねてきた』 鈴木 貞美

4582855016戦後思想は日本を読みそこねてきた―近現代思想史再考 (平凡社新書)
鈴木 貞美
平凡社 2009-12

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 げんざいの右傾化の懸念から右翼思想を読んでみようと思ったけど、右傾化の反省なら戦後の思想家たちがしたはずだから戦後思想で本をさがしてみたが、教科書的な本もすくなく、ブックオフでもほぼ見つからない。右傾化の懸念は感情的な嫌悪だけで防ぎえるのだろうか。

 西欧の思想は読んできても、日本の思想はさっぱりスルーしてきた。右傾化という懸念から近現代思想に入るこめるとは、このさいだから日本の思想史を読んでみたい。この本は近現代思想のブックガイドとして活用したい。

 また右傾化の道すじでだけではなく、こんにちの問題意識の思考の道すじはすでに近代におこなわれてることがあって、こっ恥ずかしいというか、おなじまちがいの修整にもなる。ただ入手困難の本もおおいだろうから、どこまですすめるか。

 どちらかというとこの本は戦後思想の分量が多いというよりか、おもに戦前までの近代思想をとりあつかったものが多い。「読みそこねてきた」ことにたいして、正統とされる思想すらよく知らないので判別もできない。覚えておきたいことを断片的な抜き書きで。

 開戦直前の『中央公論』での座談会、『世界史的立場と日本』が皇戦、聖戦の意義を説いており、反響が大きかった。

 全体主義に批判的だった竹山道雄は神がかりナショナリズムがあらわれた例として、哲学界の大御所だった井上哲次郎、筧克彦、上杉慎吉といった人の名をあげている。こういった「ある苦笑をもって見逃されていた思想」こそ、のちの神がかりを主導したものだという。大正や昭和はすでにたっぷりとヨーロッパの洗礼をうけたあとの時代であったのだが。筧克彦の『皇国精神講和』(1930)はクーデターをおこした青年将校の教科書となった。横光利一も筧の著作に感銘。

 竹山道雄の『昭和の精神史』(1955)はげんざい、中公クラシックスで手に入る。ただ竹内好は価値論が混入していると批判。日中戦争期に日本はおかしくなったという。明治の終りには「東西文明の調和」がとなえられ、第一次世界大戦後には国際的に平和ムードが高まったのだが。ときの浜口首相は軍縮化に協力して、右翼に銃撃。

 岡倉天心『日本のめざめ』、『東洋の理想』は東洋精神文明の発揚や日本の精神性の高さを西欧に訴えかけたものだが、日本のナショナリズムにどう作用したのか。

 土地に根ざした神秘思想を象徴誌に表現したイェーツやブレイク、タゴールといった思想は帝国主義本国では体制の反逆になり、植民地においては民族独立の運動とむすびつく。しかし日本では体制に組み入れられ、それを支えるものになってゆく。

 大正のころには宇宙の生命エネルギー論や生命主義がさかんになった。エマソン、ホイットマン、トルストイは「神は生命である」といい、ショーペンハウアーは「宇宙の意志」を問題にし、ニーチェの思想など。

 幸田露伴は商売堅気の変質をかぎとり、相互扶助こそ社会の原理であるべきと説いた。資本の圧力に対して個人の自体をたもつことになんの危険思想があるのかといっている。帝国主義への批判もおこなっている。『修省論』(1914)。『努力論』(1912)もベストセラーでロングセラーに。

 1923年に関東大震災がおこったが、財界から「近年、贅沢と放縦に慣れ、危険思想に染まりつつある国民に対する天罰である」といった「天譴論」がとなえられた。

 1930年ころには「日本精神」という言葉が流行った。紀平正美の『日本精神』(1930)がきっかけ。

 倉田百三の『出家とその弟子』(1917)は大ヒット、賀川豊彦の『死線を越えて』(1920)とならぶ人気。しかく倉田はファシズム革命運動の昭和維新に傾倒してゆく。吉川英治も青年将校のテロに共鳴し、堕落した日本人に希望と信念を与え、民族的な血液を輸血するために『宮本武蔵』(1935)を書く。

 石原莞爾は対米英戦争の対抗として大東亜共栄圏を考えていたようにいわれるが、それは神話という。石原は中国戦争を終結し、世界大戦には不参戦の漁夫の利を得よといっていた。

 大東亜共栄圏はソ連の五カ年計画、ナチスの四ヵ年計画を参照にした方式である。シュペングラーの『西欧の没落』(1918)が話題をよび、文化圏を生命体になぞらえた説から、ヨーロッパ共同体(EC)設立の提案がなされた。大東亜共栄圏はこの構想に対応するものである。

 以上、要点書きのノートのような引用終り。近現代思想の活用法むづかしそう。ブックガイドとして利用しようと思っても、手に入らない本は多いだろうしね。


▼近代デジタルライブラリーでチェックしてみたい本をリンクしてます。


井上哲次郎『日本精神の本質

筧克彦『国家の研究

紀平正美『日本精神

紀平正美『日本的なるもの

倉田百三『出家とその弟子

賀川豊彦『死線を越えて

加藤弘之『国体新論

穂積八束『愛国心

徳富蘇峰『皇道日本の世界化

徳富蘇峰『皇国必勝論

西村真次『大東亜共栄圏

石原莞爾『世界最終戦論

作田壮一『大東亜戦の意義

幸田露伴『修省論

幸田露伴『努力論

エルンスト・ヘッケル『宇宙の謎

エルンスト・ヘッケル『生命の不可思議

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