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05 16
2014

右傾化再考

アジア主義と戦後思想――『日本とアジア』 竹内 好

4480081046日本とアジア (ちくま学芸文庫)
竹内 好
筑摩書房 1993-11

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 竹内好という人をぜんぜん知らずに読んだ。わたしは日本の戦後思想というものをまったくスルーしてきたからね。

 タイトルからすれば人類学的な学問書かなと思うのだけど、戦前のアジア主義や戦争責任といった問題がおもになった書。論文は1948年から65年にかけて書かれたもので、そのとうじの問題意識がみえてくる。

 わたしがアジア主義について読みたくなったのは日露戦争まで日本は西欧支配からのアジア解放の盟主とおもわれていたのに侵略や支配の憎しみの対象になった過程をたどりたいという思いからなのかなと思う。戦前の一時期、日本はアジアの解放をたすけるアジアの希望の星だったことがあり、孫文などのアジアの独立運動家をたすけていたのである。

 この本は470ページのぶあつい本なのだが、さいしょのいくつかの論文がいちばん濃縮されているかな。

 とくにさいしょの「中国の近代と日本の近代」という論文がいい。

 日本では観念が現実と不調和になると原理は捨てられ、新しい原理がすげかえられる。古いものがダメだったら、新しいものに交換すればいい。これによって過去は捨てられ、反省されることもなく、失敗もない。このような原理や主体のなさは、日本の西欧化の変わり身や受容のしやすさにあらわれていて、ために自分でつくるような中国は近代化が遅れた。芯がないのである。

 日本は世界が追いかけてつかまえるもの、外にあるものとして観念されているが、主体や中心が自分にないからである。

 追いつき、追いこせが日本の標語であり、それをささえる「優等生文化」は自分たちは優秀で選ばれたものであり、遅れた劣等生を指導しなければならない。これは「文明の帝国意識」であり、「文明のヒエラルキー」である。日本ファシズムの根はこの優等生文化にあり、日本文化の構造そのもにあると竹内好はいう。

 つづく「日本人の中国観」では、文化の名において日本の侵略の手先をつとめた対支文化事業部と、そのスローガンである「日支親善」を中国人がどんなに憎んだかを、戦後の日本人もちっとも感じていない、知らないでいるとのべられている。

 文明のヒエラルキー意識は先進と後進によって中国を侮蔑するのだが、マルクス主義は生産力という物質で歴史の価値を測るのだから、中国の近代化の遅れを「科学的」に立証することになった。学問というものは、優越と侮蔑を科学的におしすすめるのである。

 丸山真男もジョン・デューイも中国には華夷思想があり、固有のものをもち、伝統の力がつよいのだが、日本は借り物であり、伝統の力が弱かったために近代化はよういにおしすすめられたといっている。

 「東洋の日本人観」では日本の変節と裏切りがテーマ。東洋人でただひとりのノーベル賞受賞者であったタゴールは1916年から三度来日しているのだが、孫文が1924年に神戸でおこなった講演同様、日本がアジア独立の希望から支配と侵略の手先にかわるふしめを体感したアジアの人たちであったかもしれない。

 ほかの数編の論文によって戦後間もなくの戦争体験や戦争責任などがどう考えていたかということがうかがい知ることができる。

 わたしはこんにちの右傾化の心配から右翼思想をたどってみようという気になり、そしてこのアジア主義を概括できるような本を読むにいたったのであるが、右傾化の反省は戦後思想におこなわれていたのであって、戦後思想の本を読めばいいのだとこの本で気づいた。

 わたしは80年代のニューアカ・ブームの現代思想から読書をはじめ、社会学や心理学を興味の中心にしていたから、日本の戦後思想もちっとも知らず、マスコミが話題にするような戦争責任といったキナクサイものは避けてきた。こんにちの右傾化といった心配から手の伸ばすとこの界隈のテーマにつながってきたとはね。戦争とか戦争責任といったテーマは避けてきたのだけどね。


▼そうか、右傾化の問題は戦後思想を読めばいいのか。
戦後思想の名著50戦後思想は日本を読みそこねてきた―近現代思想史再考 (平凡社新書)戦後思想を考える (岩波新書 黄版 142)近代日本思想論III 丸山眞男と戦後思想 (近代日本思想論 3)戦後日本の思想 (岩波現代文庫)


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