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04 26
2014

右傾化再考

連続した戦争状態――『戦時期日本の精神史』 鶴見 俊輔

4006000502戦時期日本の精神史
―1931‐1945年 (岩波現代文庫)

鶴見 俊輔
岩波書店 2001-04-16

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 1979年から80年にかけてカナダの大学でおこなわれた講義録のおこしで、翻訳文体がすこしヘンなところがある。カナダでこんな日本のくわしい話をだれが聞いていたんだろうと思うけど。

 わたしは戦時期の歴史をあまり知らないので、知識人中心の精神史はいろいろ学ぶところがあった。ただ、重要度の高い項目やトピックについては焦点をしぼりにくく、全体としてはなにを語っていたのかはあいまいになりやすい本との印象。

 1931年というのは満州事変がおこった年で、鶴見俊輔によるとこういう戦闘状態が日本人にはべつべつのかたちで入ってきて、ひとつの連続した戦争として捉えられていなかったという点で、「十五年戦争」の概念を提唱している。

 鶴見は中国との戦争に負けたのだとはっきり言い切っているが、いまも日本人は認めていないとか。そのために連続した十五年戦争という見方をしたがらないのだと。

 この戦争のはじめは石原莞爾の「東亜連盟」の構想からはじまったのだが、東條からの追放により、責任者不在であり、また37年からの戦争に石原は反対するようになっており、戦闘状態を終らせる能力が欠如していたために太平洋戦争の泥沼に落ち込んだのだといわれている。

 テーマとしては「転向」「鎖国」「大アジア」「朝鮮」「非スターリン化」「玉砕」「戦時下の日常生活」「原爆」といったテーマで語られている。

 わたしは大アジア主義とか日本のなかの朝鮮人といったテーマに興味をひかれたという感じかな。

 大アジアには日本が戦争をはじめるきっかけになる構想はなんだったのかという思いがある。日本は西欧=白人からのアジア=黄色人種の解放という連帯の思想があったようなのだが、いちぶのアジアの独立運動家には支持されたそれは、こんにちでは占領や支配の国家犯罪という認識がつよくなっている。この図式はどうだったのかという思いがある。

 もうひとつのトピックで日本のなかの朝鮮人の歴史で、35年の朝鮮併合の時代で自分たちからきた人たちと戦時中の強制連行のかたちで連れてこられた人たちの歴史に哀切を感じる。残った人たちは差別をうけるのだが、終戦時にきびしい労働で手に入れた財産をほとんど手ぶらで帰らなければならなかったという事実はどうなるんだと思う。長時間労働、日本人の賃金の半分といったきびしい労働条件を押し付けられた人たちを見ないふりをできるのか。

 まあ、国家と個人としてのわたしの語りのズレと、責任をどれだけ負うのかという「自分の範囲」と「国家との同調」はわたしのなかではうまく統合されていないのだけどね。「国家人」としてのアイデンティティを放棄してきたほうだから、「国家がうんたらこうたら」という話はどうも自分との同調を感じないウソくさい語りになって困る。

 あとひとつ社会主義者の弾圧や殺されてきた歴史をもうすこしくわしく知りたくなったかな。思想が危険なものとして弾圧された歴史に知識の公認性と毒のふたつの要素をどう見たらいいのだろうか。

 ぜんたいとしては十五年戦争というのは西欧の先進と後進という文明のイデオロギー序列の図式の中で見てみる必要があるのではないかと思った。



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