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04 01
2014

右傾化再考

ネット空間を「日陰者」と表象すること――『ネット右翼の逆襲』 古谷経衡

4862860702ネット右翼の逆襲--「嫌韓」思想と新保守論
古谷経衡
総和社 2013-04-25

by G-Tools


 「ネトウヨ」は底辺でも年収二百万でも非モテでもないと名誉回復をはかった本であるが、とちゅう、かなりどうでもいい心境になったw 当事者ではないとそういう名誉回復なんて興味ないw 

 雑誌・時事レベルの題材がおおすぎて、もうすこし時間をこえた本の題材レベルにたっしてないというのもあったかな。

 ただ、ネトウヨが底辺とイメージされる現象というのは、ほかのネット空間の動きにもすべてあてはまるのであって、実社会で底辺でいたり、鬱屈を抱えた人が欲求不満をぶちまける場所であり、いずれそこを卒業する場所と表象されていることは、マスメディアやリアル社会が抑えておきたい新興の権力層がたどる共通の運命かもしれないね。

 ネット空間は底辺であるという表象を、ネトウヨにかぎらず、マスメディアやリアル社会はもちたがっているのではないかという知識社会学的な知見としては傾聴にあたいするかもね。「人はどう考えているか」ではなくて、「人々がそう考えるのはなぜか」と考えるのが、知識社会学。

 ネットでは社畜批判や企業批判もひとつの大きな勢力をなしているのだが、公的なマスメディアがそれらをあまりとりあげない、もしくは個人の声がマスメディアにぜんぜん届いていなかったというあり方は、ネトウヨもマスメディアでとりあげられない話題をネットに求めたという点で共通しているかもしれない。

 つまりマスメディアに欠落していることを、ネットに求めている。

 ある人たちがマスメディアで欠落を感じているものをネット空間に求める、そしてそういう人たちを「底辺」や「日陰者」、「非モテ」と表象する。

 ネトウヨに「現実逃避」や「底辺」の連中というレッテルを貼りつけたということは、マスメディアやいっぱんの人たちがネット空間に抱こうとしているイメージもしくは願望と捉えることもできるかもしれない。

 つまりネット空間は「底辺」で「日陰者」の鬱屈と鬱憤を晴らす場所にすぎなく、「下層」の場所であるという認識を、ある人たちやマスメディアはもちたがっているのではないか。「ネトウヨ」の底辺というイメージはその無意識的願望が合流したものではないかと考えることができる。

 マスメディアでこれまで欠落してきたものと、ネットでおぎなおうとする声と勢力が拮抗しており、ネトウヨは底辺で日陰者という表象は、マスメディアやいっぱんの人たちが新興の勢力を抑えておきたいがために表象する慰安物ではないのかと考えることもできる。

 この本ではネトウヨが「オタク」や「底辺」と表象されていった契機を段階的にあげているが、「麻生人気と秋葉」の契機があり、『電車男』でネット空間は逃避と卒業する対象とされたこと、などがいわれている。秋葉のオタク表象と麻生人気の愛国表象がネトウヨに結びついていった過程。オタクの粉末がネトウヨにふりかけられているのである。

 ネトウヨはオタクや底辺のしいたげられた、めぐまれない人たちが欲求不満やルサンチマンを抱えた先に飛び込む国家主義の自尊心という表象は、「物語」としては「あってほしい」「納得されそう」な論理をもっているが、はたしてこういう表象で実相をとらえられるのか。

 部外者が安心しているあいだに大きな無視しがたい勢力となって、といった手遅れ感をもたらす「うかつ」で「メルヘン」な暗幕になってしまうかもしれない。

 「ネトウヨ」というのはマスメディアとネットメディアの対抗というふたつの勢力のせめぎあいが生み出した表象であるという側面を注意するほうが、これらの周辺にひそんでいる実相をとらえるために必要なのかもね。

 底辺で日陰者という蔑視で人々が笑ってなぐさめているあいだに、違うところで右傾化というものはもくもくと育ってゆくのかもね。この表象はマスメディアとネットの抗争だけを捉えているのかもね。



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