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03 02
2014

日本崩壊80年周期説

わたしたちの立っている地面をゆさぶる起源の書かもね――福沢諭吉 『学問のすすめ』

4043073038福沢諭吉「学問のすすめ」
―ビギナーズ日本の思想 (角川ソフィア文庫)

福沢 諭吉
 佐藤 きむ 口語訳
角川学芸出版 2006-02

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 福沢諭吉をいま読む意味は、明治維新の人々はなにをめざしたのかということになるだろう。『学問のすすめ』はおおくの出版社から出されているのだが、やはり現代語訳で読みたいね。

 こういう起源的なものを読むというのは、ものごとの根本を問う機会になり、自分たちの乗っているカーペットをひきはがす役割をするね。

 福沢諭吉は学問を「実学」のほうに理解していて、人文系のような生活や経済にちょくせつ役にたたない学問を重視していたわけではない。どちらかというと現代の学校は実学に役にたたない学問ばかり志向しているのではなかったのか。

「その性能は御飯を食べる字引であって国のためには無用の長物、経済の妨げをする居候と言っていいでしょう。
つまり、一家の生計を立てるのも学問です。商売をするのも学問です。時代の動きを察するのもまた学問なのです」



 現代の学校が実学志向でなかったのはどうしたわけだろう。わたしなんて人文系の知識ばかり好きなので、メシを食う技術につながる職業はあまりないのだけどね。

「学問の本質は、生活にどう活用するかということです。活用のない学問は、何も学問しなかったのと同じです」



 さらに福沢諭吉は文明や社会に貢献することの価値を説く。

「一身の衣食住さえ得られれば満足というのであれば、人間の一生は、ただ生まれて死ぬだけのことです。その人が死ぬときの様子は、生まれたときの様子と全く変わりはありません。
『世の中すべてが自分の生活に満足して、そこに安住するならば、今日の世界は、天地創造のときの世界と異なることがないだろう』」
人間に、社会のために役立ちたいという心があるからこそ、人間交際を広げていくという義務も達成できるのです。昔から世の中にこうした人物がいなかったら、現代に生まれた私たちは、今日世界の至る所に満ちている文明の恩恵を受けることはできなかったでしょう」



 文明の恩恵から人生の目的、めざすべきものを説くなんて、現代の利己的な消費人生とか私生活主義の人生からはちょっと忘れられた目標であるかもしれないね。

 また政府は国民の代理であると説かれるのだけど、こういう契約説は現代の政治支配や手の届かない無力感からはたわごとに思えるかもしれないね。

「一国の人民は、つまり政府なのです。一国の人民のすべてが政治を行うことはできませんから、政府というものを設けて国の政治を任せ、人民の代理人として事務を取り扱わせましょうと約束を結んだからです」



 国民と政府が約束を結んだというより、上から与えられた契約はあまり機能していないというのがこの国の実情ではないのかと思うのだけどね。

 福沢諭吉は「上下関係で人の行動を支配してはいけない」といっており、また国際関係でもそのおかしな点をつく。

「財力の勢いで貧しく弱い者に無理な要求をするのは、生活状況の違いをよいことにして他人の権理を侵害する行為ではないでしょうか。例えるならば、力士が自分には腕力があるからと言って、その力の勢いで隣の人の腕をひねり折るようなものです。

国が最強であるのを幸いと、貧しく弱い国へ無理難題を持ち掛けるというのは、いわゆる力士が腕力で病人の腕をへし折るのと同じで、国の権義から言っても許してはならない暴挙です」



 強いもの、金のあるものが支配する世の中で、こういう言葉はぎゃくに新鮮に響くのが悲しいけどね。

 ほかに罪人をとらえて処分するのは政府だけの権限であって、一般の人はかかわることではないといったことや、怨望という他人を不幸の水準までひきずり落として自分の満足をはかろうとするのは、不善中の不善であってこれ以上の悪はないといったことが心にひっかかった。

 まあ、明治の起源にかかげられた提言は、現代に生きる人の常識や考え方のカーペットや地面をゆさぶりおこす地震のような刺激をあたえるものになるのだろうね。



学問のすすめ現代語訳 文明論之概略 (ちくま文庫)福翁自伝 (講談社学術文庫)福沢諭吉の「脱亜論」と<アジア蔑視>観 (常葉叢書)福沢諭吉 朝鮮・中国・台湾論集―「国権拡張」「脱亜」の果て―



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