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02 15
2014

書評 社会学

権力・ステレオタイプ・国民性のすりこみ――『メディアスポーツ解体』 森田 浩之

4140911484メディアスポーツ解体
―“見えない権力”をあぶり出す (NHKブックス)

森田 浩之
日本放送出版協会 2009-12

by G-Tools


 G.R.テイラーの『歴史におけるエロス』を読んで、「男らしさに向かう社会、女らしさに向かう社会」という区分に興味をもった。そして『日本の男はどこから来て、どこへ行くのか』という本を読んで、関口久志「体育・スポーツにみる「男らしさ」培養の歴史」によって、スポーツと国家権力に興味をもった。

 スポーツと国家権力の関係についてはまえにこの著者、森田浩之の『スポーツニュースは恐い』を読んでいて、この本の国民性のステレオタイプにずいぶん驚かされた。でもこのようなスポーツと国家権力の関係の本はあまり出ていないので、探究のつづきをできなかった。

 スポーツは健全なものと思われていて、国民性や他国との競争意識・好戦性をすりこまれているという恐れがあまりにも微弱なのか。ぎゃくにこのくらいのガス抜きは必要なのか。戦争やファシズムの警戒は怠らない国なのに、どうして日常にくりひろげられるスポーツ・ナショナリズムは警戒されないのか。せめてスポーツではなにが語れているか批判的に見るメディア・リテラシーの能力が必要だと思う。

 人間の成長って文化規範からも客観的になれて、自由になることだと思うのだが、すりこまれる文化規範にパブロフ反応しているだけではロボットや獣と変わらない。

 この本はもちろん『スポーツニュースは恐い』とおなじような内容が書かれている。およそ二年後に書かれているので、その深化版を期待していいのだろう。

 この本では「ジェンダー」と「神話・ステレオタイプ」の章がいちばん興味深かった。

「女性のスポーツの特徴は、なわとびや石蹴りなど、古くからある女の子の遊びに共通するものがある。…自分の成功が別の子の失敗につながることもほとんどない。女の子の遊びは「競争よりも協調」という女性の社会的行動に望まれる表れとみることもできる」



 女の子の遊びからして、女の子らしさの文化的コードが習得されてゆくのだね。

「男性は自分の成功と相手の失敗を、みずからの力と才能で獲得していると位置づけられていた。これに対して女性は、自分の力以外のものが成功に結びついたことにされがちだった。たとえば「運」「感情」「家族の支え」などである」



 こういう目でスポーツ報道をみてみると、そういう事例をたくさん目にすることになるのだろうね。こういう客観的な目で、スポーツ報道を見ること、気づくことができていただろうか。

「女性アスリートを矮小化するべつの手段が、プライベートな領域に追いやるというものだ。誰かの娘、誰かの妻、誰かの母としてアスリートを描く」



 たったひとりの力で勝利も成功もえられず、依存的な支え、関係があってはじめて女性は存在できるのだといつもいわれているかのようだ。


 人種のステレオタイプについてはジョン・ホバマンの『アメリカのスポーツと人種』を読みたくなったが、七年前に出てすでに絶版、アマゾンで万がつく高値になっている。廉価版として中公新書の『人種とスポーツ 』(川島浩平)が解説本として機能しているのか。

「黒人のスポーツに対する執着が生み出す最も破滅的な結果が「知的野心の拒否だ」だ。…学校の成績を『民族の誇り』につながるものとは考えなくなっている。…勉強を「白人っぽい」ことだと思うようになる。…黒人は身体能力における優越性を誇示することによって、知的な面では劣等者であるというレッテルをみずから貼ってしまう」



 これは学校に反抗して男らしさを強調して、下層階級・労働者階級にみずから再生産されてゆくイギリス労働者階級の青年の行動を分析した『ハマータウンの野郎ども』とまったく同じ構造だね。

 身体能力の優越性は知性の劣等性をひきだし、「文明と野蛮」「先進国と後進国」という序列と侮蔑のヒエラルキー図式が適用される。「身体能力は高い=知的には劣る」という図式によって、黒人は社会のヒエラルキーの底辺におしこまれてゆく。スポーツの黒人の優秀性はいたるところで見られるのだが、それがその対照としての「文明と知性の欠如」をあぶりだしていたとはね。

「代表チームは肉体をもった国家だ。人びとが代表チームのとるべきスタイルを議論するとき、彼らは往々にして国家がめざすべき姿を議論している」 サイモン・クーパー(ジャーナリスト)



 日本のチームのばあいは「組織力」や「団結力」が強いといったステレオタイプがいつももちだされてくるのだが、はたしてそれは実証されたり、検証されてきたのだろうか。

 ただ日本経済、日本企業のステレオタイプ、あってほしい理想、押しつけられる団体主義・集団主義にしかすぎないのではないのか。わたしたちはこのステレオタイプによって集団や会社の犠牲や下支えになる精神と規範をうえつけられているだけではないのか。


 スポーツメディアの権力言説の分析には目を啓かせてくれるのだが、おしいことに、なぜか類書の出版はひじょうにお寒い状況といわざるをえない。

 フーコーが狂気や監獄、性といった領域で国家権力の浸透や規律など詳細に分析しており、アルチュセールが「国家のイデオロギー装置」といった本を書いているのに、身近なスポーツの国家権力作用については詳細な分析、探究がおこなわれていないのはなぜなのだろう。

 国家権力というのはごく身近で、ありふれたものにおおくふくまれて、規律訓育やすりこみがおこなわれているのではないのか。身近なナショナリズムを推奨して、まったく警戒や批判能力がなければ、表で表明している大声明って横断幕の隠れ蓑といわざるをえないのではないのか。まあね、経済ナショナリズムの強力性があったのだから、なにをいわんかだけどね。


アメリカのスポーツと人種人種とスポーツ - 黒人は本当に「速く」「強い」のか (中公新書)現代メディアスポーツ論 (SEKAISHISO SEMINAR)スポーツの魅惑とメディアの誘惑―身体/国家のカルチュラル・スタディーズハマータウンの野郎ども (ちくま学芸文庫)


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【今野晴貴】新左翼NPO法人POSSE(ポッセ)に注意!【ブラック企業】

【今野晴貴】新左翼NPO法人POSSE(ポッセ)に注意!【ブラック企業】
http://matome.naver.jp/odai/2136367280864865401

>その「クリーンなNPO」に見える団体は、実は、公安のマークもついたカルト的な新左翼・「過激派」の一党派だった。


池田信夫
@ikedanob
「京大政経研グループ」という革マル系。こんなのをNHKが出していいのか。
RT @NPOPOSSE20: 事実じゃないよ。現在も極左だからw党派性隠して学生騙すのはやめたまえ。
RT @konno_haruki これが事実でないなら名誉毀損の疑いもあります。RT 今野晴貴は元極左
https://twitter.com/ikedanob/status/388132217362595840

渡邉正裕
@masa_mynews
うちにもなりすましメール来てたな。実際にPOSSEに取材に行った記者によると、あれは明らかに革マルだ、
要注意だ、と。だいたいそのあたりの背景は知れ渡ってて、普通の人は相手にしないわけで。
常見陽平なりすまし祭開催からの津田大介ネタ
https://twitter.com/masa_mynews/status/330708796915740672

騎射政治botだべ
@Xseijikisha_bot
今夜、朝生に出演してる今野晴貴氏のNPO法人POSSEなんだが革マルのカバー団体なんだがや(T ^ T) コッソリ
https://twitter.com/Xseijikisha_bot/status/383634345623179264



純真な若者をカルトの食い物にさせてはなりません。

情報拡散、注意喚起をお願いいたしますm(_ _)m
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