HOME   >>  右傾化再考  >>  投資家や貿易業者の私的利益のための――『帝国主義論』 ホブスン
01 26
2014

右傾化再考

投資家や貿易業者の私的利益のための――『帝国主義論』 ホブスン

ede5b3c483fd613f464dc18b06665dae.jpg帝国主義論 上巻 (岩波文庫 白 133-1)
ホブスン
岩波書店 1951-08-05

by G-Tools


902d3a83f8e50cc5609cde5e0c844d51.jpg帝国主義論 下巻 (岩波文庫 白 133-2)
ホブスン
岩波書店 1952-06-25

by G-Tools


 先の戦争はなぜおこなわれたのかと問われることはあっても、なぜヨーロッパは植民地支配を世界にひろげたのかと問われることは少ないね。それが開国を要求されて明治維新のきっかけにもなったのにね。

 ホブスンの『帝国主義論』はその原因を民族とか国家の威信とか優越心にもとめずに、投資家や貿易業者たちの私的利益のためだったという経済的要因にもとめた。勇ましい民族的自尊心のためではなくて、国内の一部の業者のカネ儲けのために帝国主義は世界への支配へとすすんだというのである。

 この本は岩波文庫の1952年版の古本で読んだのだが、げんざいはつかわれていない漢字が多数使用されていて、ひじょうに難渋した。文脈のなかでなんとか用語はつかめたほうだけど。また文章も長く、一文で四行とかあったりする主語がつかみにくい屈折文体なので、読み終えるのにひじょうに骨が折れた本だった。

 初版は1902年にイギリスで出されている。1948年の第四版まで改訂がおこなわれた。1902年といえば、日本では日露戦争の1905年の前で、のちの1914年の第一次世界大戦まえの期間となる。1937年から日中戦争がはじまるわけだが、この本はそれにいたるまでの歴史的な国際情勢をリアルタイムで証言していた歴史の証言本のような読み方もできる。

 上巻の第一篇では「帝国主義の経済学」があつかわれ、下巻の第二篇「帝国主義の政治学」のほうがよほど容量が大きい。

 「経済学」では「人口のはけ口としての帝国主義」、「帝国主義の経済的寄生者」といった章タイトルでいわんとしていることがわかるね。「政治学」では「道徳的および道徳的要因」や「帝国主義と劣等人種」、「アジアにおける帝国主義」といった章で論じている。ホブスンは徹底的に帝国主義に批判と反対を加えた人であった。

「以上によってわれわれは、帝国主義とは、国内で販売もしくは使用することの出来ない商品および資本を取り去るために外国市場および外国投資を求め、それによって彼らの余剰の富の流れのために水路を広げようとするところの、産業の大管理者達の努力であるという結論に達する」とまとめられている。投資家、資本家、貿易業者、開発業者といった一部の業者の私的利益のためであって、国家全体の利益ではないといわれている。

 植民地支配はいわゆる「文明の使命感」という大義や善意によっておしすすめられたとイギリスのおおくの人たちは思っていた。異教の人たちにキリスト教をひろめ、不幸な国の人たちに残虐や苦痛を軽減するという人道的使命感をもっていた。「先進国」の自負心や優越心は、他国や他民族を劣等人種だとみなす「科学的知識」にも助けられて、西洋人は「侵略」を正当化していたのである。

 ホブスンは学校によって少年たちが愛国心をうえこまれ、好戦的な野蛮性を培養され、虚偽の理想による偽英雄の賛美的歴史や、尊大な民族の自尊心を養うといった教育のあり方に憤っている。

 初期の帝国主義は「財貨」の欲と奴隷貿易というふたつの動機をもったとされる。金銀、ダイヤモンド、ルビーといったもの。奴隷貿易は世界でのいちばん古い起源をもつ貿易だともいわれる。奴隷労働は古くから多くもとめられた。近代の植民地は熱帯地方が多く、当地の人たちは食糧をさして働かずにも手に入れられたので、働く欲望を強くもたなかった。欲望をうえつけるか、さもなくば絶滅させられる民族も生まれた。

 「アジアにおける帝国主義」では利権の争奪戦にさらされる中国のことが当時の目で語られていて、1902年の時点で日本がロシアや中国と戦争がおこなわれることが予想できたか、またアメリカと一戦を交えるとか予想できたのだろうか。

 ホブソンは日本人は西洋技術や科学を完全にとりいれ、頭脳労働に適し、公共奉仕の精神に富むといっている。

 いがいだったのは中国人の秩序、民度をえらく高く評価していることだ。文学や精神性に高い尊敬と普及がひろがっており、学者と農夫が軍人より高い位置におかれることはどの西洋民族にもないといっている。ただ個性発揮の余地はほとんどないといっているが。

 中国は自治の、平等な精神の小さな自由村落共同体の巣だと指摘されている。家族がもっとも安価な統治形態であり、それによって警察もいらないといわれている。中国人は勤勉、正直、秩序ある態度、学問にたいする高い尊敬といった特徴があるとされる。わたしは中国は民度が低く、秩序が乱れていると思っていたのだが、これは後進国的な偏見だったのか、あるいは時間をへて変わってしまったのか。

 まあ、この本は読み解くのに難渋したし、ひどく骨の折れる読書であった。帝国主義を民族とか国家の要因で見るのではなくて、経済やカネの利益に見たのは意義ある書物だと思うのだけどね。


イギリス帝国と帝国主義帝国主義 (ヨーロッパ史入門)帝国主義―資本主義の最高の段階としての (岩波文庫 白 134-1)全体主義の起原 2 ――帝国主義帝国意識の解剖学 (SEKAISHISO SEMINAR)


関連記事
Comment
Trackback
title>
Trackback URL
Comment form









管理者にだけ表示を許可する






google adsense
全ての記事を表示する
ブックガイド特集
月別アーカイヴ
プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。ビジネス書、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、精神世界、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

twitterはこちら→ueshinzz

FC2カウンター

Page Top