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01 18
2014

日本崩壊80年周期説

維新に疑問を思いつくか――『明治維新を考える』三谷 博

4006002742明治維新を考える (岩波現代文庫)
三谷 博
岩波書店 2012-11-17

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 明治維新には大きな謎がいくつかあるという

 最大のものは支配身分がみずから解体したこと、身分的自殺だという。武士みずからが家禄を剥奪し、身分を解体した。フランス革命のような民衆が王や貴族の権利を奪取したという「階級革命モデル」を大きく逸脱している。

 また大規模な権利の再分配がおこなわれたにもかかわらず、死者がすくなかったこと。犠牲者は三万人とされるが、フランス革命では60万人以上の犠牲者を出したとされる。

 明治維新にははっきりとした反体制イデオロギーがなかった。尊王は幕府の実権と矛盾するとは考えられていなかった。

 維新にははっきりとした原因が見当たらないと著者はいう。反体制グループもなかった。黒船の襲来が維新の起源とされるのだが、開国を要求したがだれも幕藩体制を破壊しろといったわけではない。

 西洋の革命ではふつう「進歩」の概念のもと直線的に文明に進む図式が適用されるのだが、明治維新では「王政復古」がスローガンとなった。進歩ではなく、復古が革命の原動力となったのである。フランス革命も古代ローマ人になぞらえていたというし、キリスト教文化圏では「千年王国主義」という運動もあったし、近世の百姓一揆では「世直し大明神」が崇拝された。メラネシアでは「カーゴ・カルト神話」というのもあった。

 こういう疑問をもつことが知識や学問の欲求を昂じさせることをよく感じさせられた。明治維新は決まったことで疑問なんてそう思いつかなかった。学校の学問は答えを覚えるだけの暗記知識になっているのは学問の導入のしかたを完全にまちがっていると思うね。疑問と疑問の解決が知識欲のすべての原動力だと思うのだけどね。

 著者はあとがきで「人の創った言葉に頼らず、自分の脚で地面に立ち、そこに問題を発見し、それを解くための言葉も自分で創ろう」という学問のありかたを理想としてきたといっている。歴史学とか研究では実証主義にがちがちになってしまって自由に発想できなくなるのかもね。こういう理想は哲学ではあたりまえのことで自由に思索・考えることがふつうのことなんだけどね。

 第一章の「ナショナリズムの生成」という論文では国民国家や国家のテリトリーの範囲、国民とか国家とか現代でくくられる語はどこまでの範囲のことをいっているのかという疑問にこたえる興味深い内容になっている。国民とか国家ってふくまれる原郷や範囲って時代や場所ではだいぶ異なっていたのではないかという疑問はふつふつとわきあがるね。黒船とか関ヶ原の合戦を弁当をひろげて見物していた人たちは現代の「国民」とおなじなのか。

 つづく2章、3章では明治維新に問いかけられた謎が複雑系とか王政・公儀などの語で解き明かされようとしている。複雑系とか歴史の複雑で錯綜した事実のつみかさねはややこしいのだけどね。

 第Ⅱ部では維新史家たちが語られている。

 なぜ日本だけ近隣アジア国にくらべて西洋化が先に進んだのかという疑問には興味深い事例がのっている。近世では中国も朝鮮も西洋の事物をよくとりいれたのだが、中国では官僚知識人は西洋の学問に親しもうとせず、朝鮮では西学に深入りした官僚知識人もあらわれたが、政争で根絶やしにされたということだ。日本ではキリスト教は絶対的タブーとされ、医学とかはけっこう輸入されたが人文学は排除された。

 中国・朝鮮では知識人が西洋学を排除する側に回ったのに対して、近世日本では自ら西洋の言語を学び、普及させた。人文学を排除し、自然科学に集中したのは近代化受容に有利にはたらいた。

 疑問を抱き、疑問の謎を解き明かそうとするのが学問・知識欲の原動力だということがよく感じられる本だった。わたしも自分の知識欲の源泉はつぎつぎとわきあがる疑問だと思っているが、学校教育って疑問を抑えつけて事実と答えばかり覚えさせられるね。なにも覚えていない学問嫌いの創出をおこなわない人たちを生み出すだけと思うのだけどね。


明治維新 (岩波現代文庫)近代日本の国家構想―1871‐1936 (岩波現代文庫)明治国家の終焉 1900年体制の崩壊 (ちくま学芸文庫 ハ 32-1)愛国・革命・民主:日本史から世界を考える (筑摩選書)世界史のなかの明治維新 (岩波新書 黄版 3)


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