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01 12
2014

恋愛・性・結婚

新自由主義は「男らしさ」の理想、福祉国家は「女らしさ」の理想?

 G.R.テイラーの『歴史におけるエロス』のなかで、性行動の変化と対立はふたつのタイプの対立によって説明できるとされた。それぞれ父親を手本にする者を「パトリスト」と仮によび、母親を手本にする者を「マトリスト」とよんだ。

4403120210歴史におけるエロス
G・R・テイラー
新書館 2008-10-23

by G-Tools


 パトリストは「政治的に権威主義的で保守的」になる。マトリストは「政治的に民主的で進歩的、革命的」になるとされた。

 それぞれ、かんたんに「男らしさに向かう社会」と「女らしさに向かう社会」ということもできると思う。図表では以下のようになる。


パトリストマトリスト
セックスに対する制限的な態度セックスに対する許容的な態度
女性の自由の制限女性の自由
女性を劣等で罪深いと見る女性に高い地位を認める
幸福より純潔を高く評価する純潔より幸福を高く評価する
政治的には権威主義的政治的には民主主義
保守的、反革新進歩的、革命的
調査、研究を信用しない研究を信用しないことはない
自発性の恐怖、禁止が強い自発性、自己顕示
同性愛への深い恐怖近親相姦への深い恐怖
性差の誇張(服装)性差の減少
禁欲主義、快楽への恐怖快楽主義、快楽を歓迎する
父親宗教母親宗教



新自由主義、社会主義はそれぞれ男と女の理想?


 このふたつの区分けは、そのまま経済主義の「新自由主義」と「福祉主義・社会主義」にあてはまることがわかる。保守主義と社会主義はいってみれば、男性性の志向と女性性の志向の対立と見ることもできるのではないのか。

 男らしさは独立や自立を理想とし、女らしさは平等や保護を理想とする。この男らしさ、女らしさの志向性と理想が経済主義に向かったのがそれぞれ保守主義と社会主義だということもできるのではないのか。

 経済主義の理想はそれぞれ男性性と女性性の志向の違いによるものなのだろうか。

 男は平等や保護の思想を屈辱に思い、女は独立や序列の思想を冷酷に思う。性差による理想がこのふたつの思想にあらわれているのではないのか。男性志向と女性志向の社会はそれぞれべつの理想社会に向かっているのではないのか。


女性化・安定志向化された戦後日本

 
 戦後の日本社会は福祉主義による保護や依存を理想とする社会をつくりあげてきた。大企業信仰のような安定志向もまさにマトリスト的理想、女性性を志向する社会をかたちづくってきたのではないのか。

 このような保護的な思想にたいして、男性性を志向するものにとって自立や独立をうながさない社会は屈辱や男らしさを奪うものとして感じられる。男は人に頼らない自立を理想とするものであり、感情をそぎおとし、人に頼ること、保護されることを恥だと思う。

 しかし戦後の日本は母親的な理想を男もとりこみ、大企業信仰や安定志向を目標とするものとなってきた。男も女性的理想を自分のものとしてきたのである。戦後の日本社会はいちじるしい女性志向、マトリスト志向をまとった社会になったのではないのか。戦後のピーク・バブル時代には「女性の時代」といわれるような女性の頂点の時代をむかえた。

 このようなきっかけになったものはもちろん先の大戦による敗戦と戦争放棄によるものだろう。軍事力だけではなく、戦後日本は「男性性」もいっしょに捨てたといえる。もっとも社会の福祉国家化や社会主義化は世界的な趨勢だったということもできるが。

 こんにちの右傾化や自虐史観批判といった動きも、男性性の回顧と復活という見方もできるのではないのか。「男らしさ」を求める人たちが群れをなして集まるが、「軍国化の懸念」はよういにかれらの台頭をゆるさない。男性性の禁圧された時代といえるのであり、男らしさの解放はなんらかの出口を必要としているのではないのか。


男性性に向かう社会、女性性に向かう社会


 歴史には男性性に向かう社会と、女性性に向かう社会の志向が表面に躍り出た時代がとうぜんにあっただろう。戦争時にはとうぜん男性性のたくましさが至上になる時期であろうし、平和時には女性性の理想が社会を染めあげるのだろう。

 戦国時代は男らしさの理想が亢進したことだろうし、女性らしさ、女々しさをあらわすような言動・行動は最大限の蔑視や屈辱を感じさせられる趨勢になっていたことだろう。さもないと命を惜しむ逸脱者は軍事力にならないからだ。明治から戦前昭和にかけての社会も男性性をかなり志向した社会に染めあげられていたのではないのか。

 性差による理想はあまりにもたんじゅんだから忘れられていることが多いが、思想や理想のなかには性差の志向がまぶしこまれていることが多いと自覚することも大切なのではないか。性差の理想を追求しているにすぎないと自覚することも社会趨勢の反省や歯止めには必要なことだ。極端にならずにバランスをとるために男女と性差はこの社会に存在するのではないのか。

 それぞれの性差の理想が暴走し、歯止めをなくしたときにどのような弊害や欠点が現われ出るかを自覚した上で、時代の趨勢を制御することが必要なのでないのかと思う。

 男らしさ、女らしさの理想と志向はこの社会に最善の制度と情勢をつくりだすだろうか。それぞれの理想が極端になったとき、別性の生き方は困窮に窮するのではないだろうか。

 もうすこしこの性差による社会志向の問題の発見とありようについて追求したくなった。


▼以上のようなテーマはこれらの著作のテーマと合致するだろうか。
男のイメージ―男性性の創造と近代社会男の歴史―市民社会と「男らしさ」の神話 (パルマケイア叢書)ナショナリズムとセクシュアリティ―市民道徳とナチズム (パルマケイア叢書)セクシュアリティの帝国―近代イギリスの性と社会 (パルマケイア叢書)「男らしさ」の人類学

日本人の「男らしさ」 -サムライからオタクまで 「男性性」の変遷を追う-「日本男児」という生き方“女らしさ”の文化史―性・モード・風俗 (中公文庫)「女らしさ」はどう作られたのかオトメの身体―女の近代とセクシュアリティ

「女らしさ」の社会学―ゴフマンの視角を通して戦う女、戦えない女: 第一次世界大戦期のジェンダーとセクシュアリティ (レクチャー第一次世界大戦を考える)母性という神話 (ちくま学芸文庫)成熟と喪失 “母”の崩壊 (講談社文芸文庫)母性社会日本の病理 (講談社プラスアルファ文庫)


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