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01 11
2014

右傾化再考

列強の利権争いのコマとしての日本――『黄禍論と日本人』 飯倉 章

4121022106黄禍論と日本人
- 欧米は何を嘲笑し、恐れたのか (中公新書)

飯倉 章
中央公論新社 2013-03-22

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 これは黄色人種をおそれた黄渦論というより、近現代の日本は世界から感情的にどう捉えられてきたかということがよくわかる本だろうね。近現代史を理解したかったら、かなり参考になる。

 世界に躍り出た日本人は西洋列強にどのような目で見られていたか、あるいはどのように扱われていたか。ひとことでいえば、西欧の利権争いのコマとして利用されていたということがよくわかるね。

 日清戦争勃発の前夜、ドイツの風刺画では蜂の巣「朝鮮」をイギリスとロシアが木の枝で刺激している。「やってられねえよ」とちょんまげ姿の日本人と辮髪姿の中国人が逃げ出している。「最後にハチミツをせしめるのは誰?」といわれたように、英露のどちらかが朝鮮を横取りして支配しようとしていたようだ。

 イギリスの風刺画もにわとりである清国と日本が争っているが、木の陰からよだれをたらして見守っているクマ・ロシアは「ハハ、どちらが勝ったって、オレ様の晩飯になる見通しだ」といっている。

 イギリスとロシアがテーブルをひっぱりあいする上で、「朝鮮」としるされた料理を食べているのは日本人軍人という画もある。朝鮮も中国も西洋列強の利権のテーブルの上にあったわけだね。

 けっきょくこの日清戦争の勝利は三国干渉によって遼東半島の返還がおこなわれ、ロシアにたいするつぎの戦争につながってゆく。

 ちょんまげ姿の日本人猟師からのがれたうさぎ・清国が逃げ隠れた場所は木の隠れ家という風刺画がある。そこにはふくろう(ドイツ)、蛇(ロシア)、キツネ(フランス)がいて、難をのがれた清がさらなる餌食になることを暗示していた。清国に恩を売った三国は借款を与えるとともに清国の分割にのりだすのである。

 日本はロシアとイギリスの極東地域での利権争いで、イギリスに後押しされるという構図があったようだね。

 「おいで、そして殺されなさい」という風刺画では鴨の中国が湖にのがれていて、ナイフをもった太った婦人が湖岸に立っている。つぎはぎだらけの服にはイギリス、フランス、アメリカ、ドイツ、ロシア、日本を象徴する図柄がプリントされている。

 日露戦争勃発時、アメリカが日本を支持していたのは門戸開放政策のために戦っていると思われていたからだ。しかし満州利権の独占はアメリカへの裏切りに思えた。それが太平洋戦争の遠因になってゆくのである。

 日露戦争の勝利後、アジアの独立運動を活発にさせて日本に学びにくるアジア人が多くやってきたが、白人がおそれるようなアジア人の結託と独立を日本はめざさなくて、西洋との協調路線をえらんだ。

 文明国とみとめられるのは軍事化であるということを日本はしめした。技術力や科学力ではなくてね。

 日露戦争に勝利し、一等国入りしたと思っていた日本人にとって、サンフランシスコでの日本人移民の学童差別問題は日本にも飛び火して、大きな問題となった。東洋人学校にまとめて入れられるのも日本人の屈辱心をえらく刺激したようだ。この黄色人種にたいする差別感が、日本をアメリカとの戦争に駆り立ててゆくのだろうか。

 第一次世界大戦に参戦した日本にたいしてミカドにひれふす西洋人たちがえがかれている。イギリス、フランス、ロシアの三国である。いやらしい顔をした小さな日本軍人にフランス女性が助けを懇願する風刺画もえがかれている。その背景にはフランスの偉大な軍人たちがえがかれているのだけどね。

 第一次世界大戦は日本や中国が連合国と三国連盟のどちらにつくかのかけひきで、得をしたり損をしたりといった違いがかなり巧妙にあったようだね。勝利側にいた日本は人種差別の項目を主張するのだが、うけいれられるものではなかった。アメリカとの戦争は白人対黄色人種の文明の戦いという要素もあったのかもね。

 風刺画は国際政治のかけひきの感情面、ホンネの部分がよくわかるようになっているね。近現代史を理解したい人には風刺画の歴史をながめるとよりいっそうの理解が深まるかもね。


▼ネットで拾い物した風刺画
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ビゴーの風刺画だね。ロシアと戦う腰の引けた日本軍人をイギリスが後押している。

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朝鮮とかかれた食事の上に立つ日本人が挑んでいるのは、ロシア軍人か。

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巨大なロシアに立ち向かう子どものような、人形のような日本人をイギリス人が抱きかかえている。

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シロクマ・ロシアに立ち向かう明治天皇。腹や足には朝鮮や満州の字か。西欧列強が観戦しているね。

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朝鮮を足蹴にする日本人と中国人をとおくで見守っているのが利権がほしいロシアだね。

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危うい綱渡りでシロクマ・ロシアと戦う芸者姿の日本。


風刺漫画で日本近代史がわかる本風刺画にみる日露戦争広告・ビラ・風刺マンガでまなぶ日本近現代史ビゴーが見た日本人 (講談社学術文庫 (1499))幕末維新の風刺画 (歴史文化ライブラリー)

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