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01 02
2014

日本崩壊80年周期説

明治からの世代論で近現代史を読み解く

 近代の80年周期説を検証するためには世代論が時代精神を際立たせると考えていたのだが、近代からの世代論といった資料や文献はそう見あたらない。

 ネットでJMR生活総合研究所の松田久一氏が「これだ!」といった幕末からの世代論をアップされておられた。

 「世代は繰り返される-循環史観からみた現代」という記事のなかで、 「第二回 日本をつくりあげた世代」において、江戸末期からの11世代の特徴や人物などをグラフでまとめられておられた。

 あまりにも有益なグラフなので無断であるが、コピペさせてもらった。世代についての詳細も上記の記事に書かれてあるので読んでみてほしい。


図表4.江戸末期から現代までの日本の11世代
circulation04.gif


 詳細は上記記事に書かれてあるのだが、わたしなりの咀嚼や解釈をしたい。



新しい時代は前の時代に生きた人になされる


 明治維新というのは、明治以前、江戸時代に生を受けた人によってなされており、維新前後に生まれた人たちは日清・日露戦争の実務部隊として働いていることになる。

 戦後昭和の復興と成長を主導した世代も、明治半ばや大正に生まれた人たちによってなされており、戦後に生まれた人たちはその実行や継承が役割である。

 つまりは前時代、旧時代の価値観や空気、時代を生きた人たちに新時代はつちかわれているのである。歴史は線を引いて急に時代が変わるのではなくて、上の世代がふたつの時代をまたぎながら、新しい時代をつくってゆくのである。

 明治維新を主導した世代はおもに天保年間(1830年~1844年)に生まれており(グラフでは分断されているが)、明治の20年代には急進的な青年たちから「天保の老人たち」と揶揄されるようになっている。

 1833年の天保の飢饉を若年期に経験した世代を先頭に、維新を主導した世代は、維新の68年の十年前には生まれていたとすることができる。この江戸のあいだに生まれた人たちが維新の主導者たちなのである。


ピークを生きた人たちの目標喪失と挫折


 80年周期説で重要なことは40年目にピークになり、目標達成がなされたがゆえに目標喪失がおこり、挫折と停滞へと転がり落ちる契機の節目となることである。

 ピークの40年目ころに成人した青年たちはすでに頭の上がつっかえており、立身出世が叶わない時代にぶちあたることになる。明治の時代では1905年の日露戦争がピークのころに当る。

 この青年の時代閉塞と軌を一にするかのように社会も転落と停滞の坂道を転げ落ちるのである。その坂道には漱石の「高等遊民」や現代ではニートやフリーターといった働かない、社会での立身出世を斜に構える、あきらめる世代があらわれるのである。

 明治のサイクルでは1886年に生まれた石川啄木や1892年に生まれた芥川龍之介あたりの世代に顕著な特徴だったということができるだろうか。

 その後の世相は世界大恐慌や太平洋戦争と奈落の底に落ちてゆく時代が控えていたのである。げんざいではバブル経済崩壊以後、「失われた二十年」からはい上がれないことと似ているのである。

 この世代あたりからはその時代の体制で立身出世するよりか、つぎの新しい時代、体制において活躍する世代がめだってくる。


日本を崩壊に導いた世代


 時代の流れの咎を世代に押しつけるのは酷というものだが、時代のめぐりあわせのために日本を崩壊に導いた世代は残念ながら存在する。

 日中・太平洋戦争を主導した世代が日本をはからずも破滅に追い込んだとしたら、この世代に責任と原因を追及しなければならないだろう。

 老年期に太平洋戦争を主導した世代は、先の項目でとりあげた目標喪失と挫折の世代と重なる。1876年から1895年のあいだに生まれた⑥「戦争」世代が太平洋戦争の主導者となるだろうか。東條英機、山本五十六、石原莞爾、井上成美といった人たちの名があがっている。

 つづく⑦の「戦前」世代も日本を崩壊に導いた世代にふくまれるだろうか。1896年から1915年の間に生まれた世代である。のちの⑧の「戦中世代」は若年期に大戦を経験し、実行部隊や戦争の犠牲者となった世代ともいえるかもしれないが、1936年の二・二五事件をおこした青年将校らがふくまれるとしたら、時代を軍部の暴走へと導いた責任の一端をになっていることになる。もっともこの世代の多くは戦後の復興や成長の推進役となった人たちのほうが多いのであるが。

 日本を崩壊に導いた世代は、明治初年代につくられた官僚システムや学歴選抜によって指導者となった人たちが多い世代だといわれる。学歴や官僚の選抜システムによって出世し、日本を主導する中枢の立場についた人たちだ。かれらが日本を崩壊に導いたとしたら、かれらの資質がそうさせたのか、学歴・官僚選抜システムというしくみがかれらを破滅に導かざるを得なくしていたのか。システムの暴走に咎を求められるものだろうか。

 かれらが育った時代は日露戦争によって西洋列強に劣らない優越感や自尊心を付与された世代だといえるし、大正デモクラシーや豊かさを経験した世代でもある。また、あらかじめ挫折や目標喪失といった青年の野望や大望が閉ざされた世代だともいえるのである。

 かれらが日本を崩壊に導いたのか、もろもろのシステム、それまでにつちかわれた過去の蓄積・体制が日本を崩壊に導いたのか、問われなければならないだろう。


ミネルバの梟はたそがれ時に飛ぶ立つ


 価値観や目標ががらりと変わったとされる戦後は、戦後以降に生まれた世代によって復興したのではなくて、戦前や戦中を生きた明治半ばや大正に生まれた人たちによってなされたものである。いわば旧時代の価値観や考え方をたっぷりと吸って自分たちのものにした世代が、新体制を築いている。

 グラフを見ると時代の近いほうが目立つものが多いという点で拡大化がなされているのかもしれないが、戦前に生を受けた人たちが、戦後の復興や成長の時代の文化面において多く活躍されている。

 戦後の文化人をおおく輩出した世代は、1896年から1915年に生まれた⑦「戦前」世代であったり、1916年から1935年のあいだに生まれた⑧「戦中」世代であったりする。

 このふたつの世代は青年期に大戦に出征したり、若年期に空襲や学童疎開を経験したいわば実行部隊や犠牲者となった世代だともいえる。崩壊や危機にさらされた時代を受動的に経験した世代といえる。

 そしてそういった悲惨な経験をした世代から、戦後の文化のおおくは生み出されているのである。前時代では受動的に受難を経験するしかなかった世代だったかもしれないが、戦後の復興期において文化の面において花開いているのである。

 黄昏時にミネルバの梟は飛び立つといった表現がぴったりくる現象であるといえるかもしれない。

 経済面や産業面においても、受動的に戦争に対面せざるをえなかった世代は、のちの新時代において自由に事業や産業をおこしているのである。


「線引き史観」なんてない


 歴史の誤った思い込みとして、新しい時代は急激な断絶と価値観の転換がおこったと思い込み勝ちである。新しい時代には新しい時代が線を引いたように出現したかのように思い込まれる。

 だけど世代論で見てみると、新しい時代は前の古い時代を生きた世代によって構築されていることがわかる。新しい時代は旧時代をおおく生きてきた老年・壮年の人たちに主導されるのであって、新時代に生まれた人たちだけでなされるのではない。

 価値観や考え方の転換が急激になされるわけではない。旧時代を生きた老年や壮年の人たちが新時代を主導するならとうぜんのことに旧時代の価値感・考え方をひきずることだろう。

 明治は江戸時代の空気と価値観を生きた人たちによってかたちづくられたのであり、戦後日本も明治や大正の空気や価値観を生きた人たちによって生み出されたものである。

 世代によって旧時代は終っておらず、存続と継承がつづくばあいもあるだろうし、明治の新時代に江戸時代を生きた人たち、戦後昭和に明治・大正を生きた人たちもたくさんいることだろう。

 歴史の思い込みである「線引き史観」や「断絶史観」なんてないのである。

 時代がきっぱりと線を引いたように変わるということはありえなくて、上の世代は前の時代をひきずりながら、あるいは前の時代そのものを生きながら、世代交代をじょじょにおこしながら新しい時代は育ってゆくのだろう。

 人生60年から80年だとするのなら、成人するまでの20年をさしひいて、40年から60年は前の時代を引きずる、旧時代を生きる人たちが存続すると考えてもいいのではないか。というより、高齢者が時代や社会を主導する体制から考えて、新時代はとつぜん新生するとは考えようもないのである。


▼松田久一氏の著作。現代の消費分析の本であって、明治からの世代論の著作も出してほしいのだけどね。
4492395989ジェネレーショノミクス: 経済は世代交代で動く
松田 久一
東洋経済新報社 2013-11-22

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