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12 19
2013

右傾化再考

西洋コンプレックスと人種差別の自明すぎる説明――『なぜ太平洋戦争になったのか』 北原 惇

4484012227なぜ太平洋戦争になったのか
―西洋のエゴイズムに翻弄された日本の悲劇

北原 惇
阪急コミュニケーションズ 2001-12

by G-Tools


 「なぜ太平洋戦争になったのか」というような問いはわたしにはあまり興味ない。うしろ向きすぎだし、もうこういう問いを発してなんの意味があるのかという情緒をもっている。80年周期の検証というテーマでこの本を読んだだけである。

 この本は少しおどろいたというか、違和感をもったのだが、西洋コンプレックスとか西洋による人種差別とかが原因として語られているのが、これを一から十まで順番に説明してもらわないと理解できない人などいるのかという首をかしげるていねいな説明がおおかった。

 どちらかというと西洋コンプレックスや人種差別は常識的で、自明のことであると思われているのではないのか。それが秀吉の奴隷貿易の時代までさかのぼってひとつひとつ語られるのだが、これってこんな検証と説明を要するほど理解しない人なんているのか。そういう違和感とこのていねいな説明はなんだという印象をずっと読書中にもった。自明すぎる説明にあきれる章もあった。

 この著者はずっとアメリカで教鞭をとり、スウェーデンの研究所所長にまでなった「国際人」である。日本ではあまり知られている人ではないね。海外で生活する人の奇特なトンデモ本を読んだことはあるが、この本にはその気配はまったくないが、自明すぎる説明には違和感を感じざるをえなかった。

 著者は「心理反発論」として太平洋戦争に陥った道を説明するのだが、要約はこうなっている。

「(1)欧米の日本人に対する人種主義に日本が反発し、日本式の人種主義が形成され、これが、十九世紀半ば以来の西洋の威嚇と脅迫に対応するために形成された日本の軍国主義と組み合わされたこと、 (2)この反欧米の人種主義のと軍国主義の組み合わせがしだいに日本の実験を握るようになり、全体主義が日本を支配するようになったこと、そして、(3)西洋の意見と行動に極端にまで敏感であった日本人の心理が反転され、欧米の言うことはすべて無視する態度になったこと、の三つの理由が考えられる」



 要は西洋列強の脅威におびえて列強に同一視して仲間入りをめざしたが、人種主義で拒否されることを知るにおよんで、反西洋になり、日本人の優秀性を信じるようになったということである。

 恐れが憧れと同一視をよびおこし、同一視が拒否されるにおよんで、まったくぎゃくに無視と抵抗という暴発におちいったということだ。

 これは誘拐された女性が犯人に同一視するという「ストックホルム症候群」を念頭においているというわけかな。

 西洋コンプレックスとか白人による人種差別って、説明を要するほど日本人って感覚的に知らないものなのか。こんな自明な感覚を近代の歴史でていねいに検証されても、はて? 知らない人などいるのかという疑問をもたざるをえない。

 西洋コンプレックスとは日本人に言葉によるていねいな説明を必要とするものなのか。もし西洋コンプレックスの心理を知らないとしたら、海外で育った人とか、海外で長く生活した人になるのだろうか。ぎゃくに海外ではより強くそれを印象づけられるように思うのだが。

 外国の人にはこのような対象化された心理的説明をほどこさないと日本人の西洋コンプレックスの感覚は理解できないかもね。この本は外国人向けに書かれたのものなのか?


黄禍論とは何か―その不安の正体 (中公文庫)黄禍論: 日本・中国の覚醒人種差別の世界史―白人性とは何か? (刀水歴史全書)容赦なき戦争―太平洋戦争における人種差別 (平凡社ライブラリー)近代日本における人種・民族ステレオタイプと偏見の形成過程


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Comment

当時の西洋人は進取的過ぎたんじゃないかという気がします。
進取的で他人の領域に土足で踏み込んで自分のやり方押し付けながら、自己正当化する為に理論武装する人というのは、個人単位でも存在するけど。
そういう人は大抵、矛盾を指摘されて反駁されても自分の非を認めないし。
そういう一方的に進取的な人は傍若無人なので、そういう人に対し「土足で踏み込むのを止めろ!」という意思表示をすると、それがそのまま喧嘩に繋がる事もあります。
当時の西洋人全般が日本全般に対してそういう一方的な進取性を発揮してたのなら、戦争という大きな喧嘩もコンプレックスというより、対人関係の間合いの取り方の違いから起こったものに思えるんですよね…。

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