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11 08
2013

日本崩壊80年周期説

西洋のモデルと憧憬――『西洋の事情と思想』 新渡戸 稲造

4061586386西洋の事情と思想 (講談社学術文庫 (638))
新渡戸 稲造
講談社 1984-06

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 昭和三年の早稲田での講演を本にしたものだが、まったくたいしたことをいっていない。さぞかしむかしの人の西洋観というものはいまと違うものだろうと思っていたが、さして代わり映えもしないし、てんで異なった西洋観を聞けるわけでもない。

 もっと古い明治のはじめくらいの西洋観と思っていたけど、昭和はじめではそう異ならないのかな。福沢諭吉の西洋観なら時代の違うおもしろい西洋観を見せてくれるのかな。

 新渡戸稲造はむかし五千円札の顔になっていたし、人生の三分の一を外国でくらし、ドイツ語と英語で本を書き、国連事務局次長とはたらいた国際人としての評価が高かったのかな。

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 ▲1984年から2007年までが新渡戸稲造。

 いぜんまではよく西洋となんでもかんでも比べて遅れているとニュースになっていたものだが、さいきんは聞かなくなった。日本はもう西洋に学ぶ時期を肌感覚でもうしなったのかな。

 アメリカのテレビドラマが日常生活や消費のモデルや理想として人々を魅了した時代も去って、CMのモデルに「ガイジンさん」が使われることもめっきり減った。もういまの日本のありかたに満足するようになって、西洋に理想と劣等感をいだいていたころはほんとうに去ってしまったのだろうか。

 そういう時代にもう一度、西洋の理想や劣等感とはどんなものだったのかとあらためて問い直してみることはなにかの発見や意外な見方を得られるかなと思ったのだけど、この本にはほとんどなにも感銘をうけることはなかった。

 モデルや理想となっていたころの「熱い憧憬」は、それらを手に入れてしまいもう学ぶことはないと慢心できるほどの時代になったげんざい、憧れと手に入れた現実とのギャップにこっけいさや憐れみを見出す落差をわれわれにつきつけるかもしれない。むかしの西洋観はそういうものを見せてくれるかなと思ったのだけど。

 モデルなき時代にモデルや憧憬があったころの時代は郷愁や懐古を生み出すものである。昭和三十年代がブームになったようにね。西洋の坂の上の雲があったころがなつかしいという郷愁の時代がまだきていないということは、まだわれわれはそれらをなくしてしまった、うしなってしまったという自覚をもっていないのかもしれない。

 いつか西洋というモデルと憧憬があったころはよかった、なつかしいという時代はくるのだろうか。まだわれわれは西洋の吸収と学習を、完全に離反するほど離れていないのだろうね。


自警録 (講談社学術文庫 (567))武士道 (岩波文庫)逆境を越えてゆく者へ自分をもっと深く掘れ!―名著『世渡りの道』を読む (知的生きかた文庫)新渡戸稲造論集 (岩波文庫)


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