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10 12
2013

日本崩壊80年周期説

坂の上の失楽園――『「一九〇五年」の彼ら』 関川 夏央

4140883782「一九〇五年」の彼ら
―「現代」の発端を生きた十二人の文学者 (NHK出版新書 378)

関川 夏央
NHK出版 2012-05-08

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 なぜ1905年なのか。それは1905年が西洋の「一等国」の仲間入りをした年だからである。西欧の列強入りをめざした明治日本が日露戦争に勝利した国民国家のピークが1905年なのである。つまり「坂の上の雲」を達成した年である。

 この年、ポーツマス条約に不満をもった国民たちが日比谷をはじめ各地で暴動をおこした。大衆が政治的実力をもつ時代、大衆文化が花咲く時代、1905年は「現代のはじまった年」だと考えられるのである。

 この1905年に青春期または人生の最盛期にあった人たちこそ、現代人の原型だろうと関川夏央は読み解くのである。

 そのような1905年の文学者たちのすがたと、晩年を点描することで、現代日本の成立と成熟、衰退までも暗示できるのではないかというのが関川夏央の意図である。

 わたしもこの本の狙いが読めたのは、日本は80年周期で上昇と下降をくりかえすという80年周期説を知っていたからだ。ひとつの目標に狙いを定めた日本の新体制は40年ころにピークをむかえ、あとは坂道を転げ落ちるような40年をへて、昭和敗戦のような惨事をむかえる。

 昭和の今サイクルも44年目の1989年のバブル経済のピークをむかえてから、坂道を転がり落ちるように戦前のわだちを踏むような衰退の道を歩んでいる。もし未来を占うなら、明治のピークをこえた文学者たちは世相や時代をどう生きたかがわかれば、この行く末をすこしは推測できるかもしれない。

 いぜんにそのような記事を書いた。

 「近代の文豪が生きた時代から未来を読み解けるか

 グラフを掲げれば、このようになる。 

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 ピークの1906年に文学者たちは何歳であり、その年齢の境遇はかれらにどのような状況や運命をあたえたかとわたしは問うてみた。

 ピークのころに成人した文学者たちが1885年生まれの武者小路実篤、86年生まれの谷崎潤一郎、石川啄木といった人たちだ。前二者は順調な実績をのこし、啄木は短命。啄木は「大学は出たけれど」や高等遊民といったピーク後の停滞の時代のとば口に立っていた人だろうね。

 無頼派とよばれる人たちは、坂口安吾がピークの1906年に生まれ、世界恐慌の1929年を23歳で経験している。自殺未遂をくりかえした太宰治が1909年生まれ、大恐慌は20歳のとき、壇一雄は1912年、織田作之助は1913年生まれだ。『蟹工船』でリバイバルヒットした小林多喜二は1903年生まれだ。ピークのころに生まれた人はいずれも不幸で短命の人生を送っているね。今サイクルでいえば、1990年生まれくらいかな。

 ピークなどまったく知らない20年代に生まれた人たちは、司馬遼太郎、遠藤周作、安部公房、三島由紀夫であるが、暗く傾斜してゆく時代に生育したが、戦後の復興期と成長の糧を得ることができた世代ということができるね。今サイクルでいえば、00年代に生まれた人たちがあてはまるかもね。

 今サイクルの終焉が予想されているのは2025年ころにあたる。はたしてそれまでに戦前の破滅へとむかった時代をふたたび経験することになるのだろうか。これからあと十年余で激動の時代をむかえてしまうことになるのだろうか。

 本の話に戻るが、わたしが読みたいと思っていたどんぴしゃりの本が出たと思っていたのが、個人の行跡と世相や時代の背景をクロスさせて読み込むことはわたしの力量にはあまりあることであって、そこから時代のうねりを読むとることはほとんできなかった。個人の行跡と時代背景がべつべつのものにしか捉えられなかった。

 関川夏央は『「坂の上の雲」と日本人』という本も書いているね。日本人にとって大事なのは一致団結して駆け上る「坂の上をめざす時代」ではなくて、その山の上にのぼりつめて降りる時代のほうが難題なのだろうね。「過去の成功よ、ふたたび」の暴走で日本は破滅してしまったといえるからね。

 破滅してしまったほうが日本は新体制を構築しやすくなるのなら、ご破算を経験したほうがいいかもね。未開社会には「王殺し」の風習があったのだが、文明国はそんな「野蛮」ではないので、みずから破滅するしか「王」を殺せないのかもね。


「坂の上の雲」と日本人 (文春文庫)日露戦争と世界史に登場した日本「坂の上の雲」と日本近現代史『坂の上の雲』と司馬史観初版 金枝篇〈上〉 (ちくま学芸文庫)


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