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07 08
2013

社会批評

少子化は経済の本質ではないのか

 『ルポ 産ませない社会』(小林美希)という本が出ているね。

 でもこれって経済の本質であって、生産に参加しない子どもは消費や浪費でしかないわけで、経済の帰結というのはもともと子どもを産ませないようになるのではないかと思うね。

 子どもは19世紀なら安い労働力として経済にくみこめた。でもいまはほぼ20歳まで教育をうけて消費するだけで労働力にならない存在。そういった存在をだれが経済社会で歓迎するのかという話になるね。

 経済は人と人のあいだにおいて交換するものに価値があるのであって、交換できない子どもの価値は、親や家族のあいだにしかない。しかも成人したところで価値の大部分は企業にもっていかれるし、老後に親の面倒をみてくれるという家族の形態もこわれた。経済的にはだれがトクするのかということになるね。

 経済は人と人とのあいだで交換するものに価値があるのであって、お金をみずから稼いで回すわけではない子どもの金銭的価値は低い。

 消費社会は生命の継承に価値をおくより、みずからの人生、一度限りの人生に価値をおき消費を一代でたのしむ人生観にシフトしている。

 生命の継承より、個人の人生を輝かせるほうが消費経済を回すのに好都合なのだろう。人と人とのあいだの「つくられるもの」「欲望を牽引するもの」に価値がおかれると、出産・育児といった自然な営みより、モノをはなばなしく消費する女性や独身時代の価値のほうが魅力的になる。消費経済は生命の継承、生命を殺して行くようだね。

 企業も出産・育児で時間をとられる女性より、長時間労働、何時間でも残業にたえうる男性のほうが働き手として好都合だ。日本ではこの男性の長時間労働が標準なので、女性の働きは標準以下、基準以下の働き手となる。よって女性の立場は肩身が狭く、子どもをもつ早く帰る母はなおさらだ。

 けっきょくのところ、経済に特化しすぎた社会は共同体や種の存続という生命にとっていちばん大切なものをないがしろにするようだね。種の存続を至上価値におかない社会や種はその生命をいずれ枯渇させる。「企業栄えて、人類滅ぶ」だ。愚かな帰結である。

 種の存続という生命にとっていちばん大切な目的を経済は殺してしまう。このコストはだれがひきうけ、だれが分担すべきなのか。

 企業が生命の再生産に加担しないで、労働マシーンの男だけを労働力にすることでなりたってきたのが日本国家である。ために共同体の存続、人口の増加という生命の大きな目的を殺してしまった。戦後の日本が軍事力というパワーを超大国に依存したように、生命の存続という課題もどこかに丸投げしてしまった。

 丸投げしたのは金銭労働から排除された女性たちだったのか。しかしそのような男の経済力によって女性の出産・育児をささえるという形態も、男性の収入減、非正規化によって不可能になりつつあるのが現在だ。この丸投げの再生産も崩壊の危機にたたされているのである。

 解決策はあるのだろうか。子どもが稼がない消費するだけの存在だとしたら、児童労働の復活という方法もある。道徳的忌避観もつよく、タブーとしてふみこめない領域であるが、子どもが稼げないことによって親の生活費、教育費を稼ぐ労力はなみたいていのものではないだろう。子どもの成人するまでの期間がどんどん長くなってきたわけだが、逆流の可能性も視野に入れないと少子化はとどめようがないものかもしれない。

 企業も社会的存在として、子どもの再生産、養育にまったくノータッチでいいものか。企業はこれまで労働力というしぜんに育ってくると思われていた人間の成育をタダで手に入れてきただけではないのか。負担してきたのは親だけである。もちろん企業は福利厚生として家族手当などもつけてきた。しかしそのような負担も競争激化という名目のもとに減少させられている。

 企業も大人たちも子どもの再生産という負担・重荷からみんな逃走しようとしている。共同体も国家もこのままでは存続できるわけがない。

 子孫の存続が共同体の最大目的という社会や思想を中心に組みなおすべき時期にきているのかもしれないね。「人はパンのみにて生きるのにあらず」。

 経済や企業を中心にした枠組みではこの最大目的は殺される。生命の存続を殺してゆく経済が共同体の目的や基軸であっていいわけがない。愚かすぎるというものである。


ルポ 産ませない社会少子化論: なぜまだ結婚・出産しやすい国にならないのか少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)シャドウ・ワーク―生活のあり方を問う (岩波現代文庫)


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