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07 03
2013

書評 小説

性的な慰めと堕落―『ララピポ』 奥田 英朗

ララピポ (幻冬舎文庫)
幻冬舎 (2012-09-12)
売り上げランキング: 2,446


 「下流文学の白眉」という解説につられて読んだが、下流文学というよりか、性的なことに救いと慰めをもとめた人たちの醜悪さや破滅が、赤裸々に描かれたどうしようもないお下劣な本w

 6人の主役の連作短編集なのだが、それぞれ外側に見えていた人たちの内面が連作で見えるようになっていて、ここは鮮やかでおもしろいね。島村洋子の『こんなにもひとりぽっち』という連作短編集もおなじようなつくりになっていたけど、見かけと内面の違いはおもしろいね。

 売れないライター、風俗のスカウトマン、AV出演の主婦、カラオケボックス店員、官能小説家、テープリライターの女性のそれぞれ6人が主役になるが、内容はすべて仮借なき性描写のオンパレード。性だけにのめりこんでゆく人たちの醜悪さ、堕落とその転落が描かれてゆく。なんでこんな赤裸々な性描写を書かなければならなかったのだろうね。

「世の中には成功体験のない人間がいる。何かを達成したこともなければ、人から羨まれたこともない。才能はなく、容姿に恵まれず、自慢できることは何もない。それでも、人生は続く。この不公平に、みんなはどうやって耐えているのだろう」



 といったことがテーマなようだね。『ララピポ』というタイトルは「a lot of peaple」という「その他大勢の人たち」の早口で聞こえた言葉。こういう人たちが性的なことだけに慰めと快楽を見出していった先に破滅と堕落が待っているといったような内容。

 これを読んで「こんなふうに墜ちないようにしよう」と思うことができるのかな。ということは主人公たちに不快感や嫌悪感をいだけば成功ということで、この本の効用は「反面教師」だね、性的な堕落に落ちないための。

 この作品には自分は「そういう人間ではない」という認識が思い切り否定されるライターのすがたが冒頭におかれるように、「自分はそういう境遇の人間」であることの受容がメッセージされているのかもしれないね。

 「下流文学」というならもうすこし非正規雇用の閉塞感のような描写が必要だろうね。

 ちなみにこの小説は映画化されているのだが、露骨で赤裸々な性描写をどのように映画にうつしかえたのか、しょうしょう興味がある。感想は後日。

              *



 映画のほうを見た。エピソードがかなり短縮されていて、映画で見る人はなにがなんだかわからないだろうね。「みんなのシネマビュー」では評点3.60点。まれにみる低得点だけど、不快感や嫌悪感をいだかせたことは成功なんだろうね、この作品のばあい。

 でも下流から抜け出す希望を与えるには性的な堕落を描くことで、その境遇から逃れる発奮をえられるかというとそういうことはなくて、嫌悪は嫌悪でしかないだろうね。原作も成功したとはいえないかもしれないのによく映画化したと思うね。

 中村ゆりという女優がこういうヨゴレ役をやったのはすこしスキャンダル的かな。濱田マリの性描写はさすがに避けられていて、さいごの火事から夫を救い出したシーンの満足げな顔にはすごみがあったね。蛭子能収の官能小説家のエピソードはカットされていたね。


ララピポ [DVD]こんなにもひとりぽっち (角川文庫)空中ブランコ (文春文庫)最悪 (講談社文庫)マドンナ (講談社文庫)


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