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06 29
2013

書評 小説

影とはなにか―『影をなくした男』 シャミッソー

4003241711影をなくした男 (岩波文庫)
シャミッソー Adelbert von Chamisso
岩波書店 1985-03-18

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 イタロ・カルヴィーノ風の寓話は好きだなあ。『木のぼり男爵』とか『まっぷたつの子爵』とか。といっても『影をなくした男』は1814年の本だから、ぎゃくなんだけどね。

 影とはなにか。この小説のなかでは影がなにを意味するのかさっぱり読みとれなかった。影の代わりに金のいくらでも出てくる幸福の袋と交換するのだけど、影がないことに人から怖れられて恋にも敗れるし。影がないことに人はそんなに気づいたり、こだわったりするものかと思ったけど。

 解説によると作者はフランス生まれだけど、ドイツ人化してしまった祖国喪失が象徴されているとされるが、作品にはまるでそんな手がかりは出てこなかったように思えるのだけど。

 ふつう金と影を交換したなら、金のために身を売った男になるね。ユングや河合隼雄によると、期待や評価のために「いつわりの仮面」をかむることによって、「ほんとうの自分」をうしなってしまうことが「影の部分」とよばれる。

 ブログの解釈を読むと人はいろいろ賢明な解釈をほどこしているようなのだけど、影という「人があたりまえにもっているもの」を失うことの悲劇が描かれているともいわれているね。

 後半になると影と金をうしなった主人公は失意の旅をつづけるが、魔法の靴を手に入れて世界中を股にかけて植物学とかに邁進することになる。金の幸福ではなくて、自分にとってのほんとうに必要なもの、ほしかったものを手に入れたことになるね。

 「影をなくした男」というのは、「ほんとうの自分を見失った」男の物語として読んでいいのかな。

 寓話というのは現実にありえない空想物語をたんのうさせてくれるし、なんらかの意味の凝縮化・単純化をへたうえでの警告をおしえてれるね。そこがいいのかもね。


木のぼり男爵 (白水Uブックス)まっぷたつの子爵 (ベスト版 文学のおくりもの)影との戦い―ゲド戦記〈1〉 (岩波少年文庫)寓話セラピー―目からウロコの51話影の現象学 (講談社学術文庫)

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