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06 01
2013

書評 小説

あちこち飛ばされるねw―『ミステリーの書き方』 日本推理作家協会

4344019156ミステリーの書き方
日本推理作家協会
幻冬舎 2010-12

by G-Tools


 メジャーや一流の人たちの創作論をあつめれば傑作になるだろうという本なのだが、一貫性とか一本の筋がとおってなくて、あらゆる人があらぬ方向を向いているから、ひたすら意識が拡散してしまう創作論だな。

 これは雑誌であって、ひとりの人が順番に体系的に創作論を書いたわけではないから、関心方向がぶちぶちに分断されてしまう。いいところどりのつまみ食いであちこちに飛ばされてしまうだけで、つぎのページにはまたスタートラインに立たされてしまうという感じ。

 ちなみにわたしはミステリは読みません。ドラマや映画などで原作のあるミステリを見ることになるから、この本にあつめられたミステリ作家の名前や作品くらいはわかる人が多かった。この本に期待したのは、プロット、物語のつくり方かな。

 ミステリは人工的な謎で悩んだり解いたりする理由がわからないかな。自然や世界自体が謎に満ちているのにわざわざという思いかな。

 感銘したところを抜き出す。


「物を表すということは”気”を吐き出すことでもあります。メールやネットで”気”を吐き出しすぎると、それで文字通り気が済んでしまって、せっかくの才能を浪費する結果にもなりかねません。どんなことでも、思いの丈は作品のために取っておくべきです」 福井晴敏



 ツイッターをやりだすようになってとくに感じるようになった。ブログにまとめるまでの思いや蓄積をそいでしまう。一瞬で消えてしまう言葉でもいいのなら、ツイッターで満足してもいいのかもしれないね。

「大衆が求めるのは普遍的な人間ドラマなのだ。

売れる人ほどベタなものが好きだったりします。…ミステリという大衆文学で本当に売れるものを書きたいなら、天才やマニアックであってはいけないというのが自分の結論です」 福井晴敏



 売れたいならベタなものを書かないとね。

「ラブストーリーは書けない。感動する小説も書けない。感動させるということに対して懐疑的なせいか、感動に収斂させるような書き方がどうしてもできないんです」 山田正紀 



 こういう作家もいて、小説はなにごとにも縛られる必要はないのでしょうね。

「プロットを作らないタイプではないと思うんです。かなり作っているはずなんですよね。でもそれを言語化しない、書かない。書くと逃げていくような気がするんです。

ただ、「書きはじめたら登場人物が勝手に動き出す」っていうタイプの人とは、たぶん違うんです。出来てはいるんだけど、それが言葉にならない」 宮部みゆき



 プロットを言葉にしてしまうと逃げていってしまうという感覚はわかりそうな。プロットの考え方は作者によって両極端にわかれて、それぞれの資質なんだろうね。

「これからどうなる!?と作者が愉しんで書かねば、読者だって楽しめませんよね」 逢坂剛

「設計図をていねいに引くと、それでもう書き終えてしまったような気になり、楽しみが失せる。また刻明な設計図があればあるほど、なぞることに意識が向いて、物語をふくらます努力とかけ離れていく」 大沢在昌

「大まかなプロットだけで書いたことがあるが、ひどい結果に終わった。それ以来、きっちりとプロットを作ってから書き始めるようにしている」 新野剛志

「細かくプロットを練っていると、書く意欲がそがれる。まったくプロットのない状態で小説を書けるほどの才能がない」 馳星周



 プロットが完成されすぎると書く意欲がそがれ、でもいきあたりばったりも恐いというあたりなのかな。

「恵まれた環境にある無敵のヒーローが、なんの苦労もなく成功する物語、などには感動しないようにできている。…さまざまな障害や危機や苦難を、必死の努力と、たいがいは素敵な幸運と、友情や愛情やなにかによって乗り超える、という物語に感動するようにできている」 東直己



 これは物語の基本中の基本でしょうね。


 「職業作家として成立する条件は何ですか」という問いはいちばん興味深かったかな。

「コンスタントに書き続けること」 石田衣良

「大型の文学賞の受賞歴がある作家の本は必ずおいてもらえる。…受賞歴は職業作家としてやっていくには一番必要。冠をもつことで仕事もしやすくなる」 海月ルイ

「一定レベルの作品をコンスタントに提供できること」 篠田真由美

「コンスタントに注文が来ること」 管浩江

「「自分は何を書きたい」という気持を捨てて、どう書けば読者が喜ぶか、驚くかを最優先にすること」 富樫倫太郎

「3年~5年も作品が売れないと以後、出版は困難」 橋口正明



 コンスタントに一定レベルの作品を書ける能力というものが大事なんでしょうね。


 「作家志望の方にアドバイス」

「僕は都合10年ほど投稿を続けました。そうやって、デビュウするまでどこまでもチャレンジを続けていれば、おそらくどこかの時点でデビュウしているでしょう」 浅暮三文

「年間に長編を4、5冊書ける自信があること」 梓林太郎

「ミステリの様々な新人賞に応募し始めたのが19歳、デビュー出来たのが35歳」 霞流一

「「書くんなら恥を書けよ、恥を。他人の恥を見て、読者は喜ぶんだ。イイ格好したけりゃ、お前が金を払うんだな」(小川徹)。

「自分は何を表現したい」という自己主張を捨てること。読者を”説得”しようとしないで、むしろ驚かせたり笑わせたり、怖がらせたりすることを主眼にする。”個性”や”自己表現”なんて、どんな書き方をしたって自然に滲み出て来る」 友成純一



 さいごの言葉は響きますね。作家になりたい人はカッコよく見られたいと思うんでしょうね、だけど読者が求めているのは格好悪くて、恥ずかしい、なさけない体験。人はそういう恥の開示にいちばん共感するのでしょうね。読者がお金を払うのはそういう下に見られたり同等と見なされる安心感かもね。カッコいいからお金を払うという戦略もとうぜんあるのだけどね。


▼じつのおおくの創作論が出されているのですね。むかしは「文章読本」しかなかったような。
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