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04 28
2013

セラピー・自己啓発

自己愛は悪いものなのか?―『満たされない自己愛』 大渕 憲一

4480061045満たされない自己愛―現代人の心理と対人葛藤 (ちくま新書)
大渕 憲一
筑摩書房 2003-04

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 自己愛を病理的なものと捉える向きもあるが、自信や自尊心のない人にとっては自己愛こそ育てられる必要があるものではないのか。どちらかという欠如した人の多さが問題なのではないのか。

 自己愛をどうして悪者や病的なものとして捉えられることが多いのか。

 フロムだって、「自分を愛することができない人が、どうして人を愛することができようか」といっている。キリスト教などは自己愛を忌避した思想だから、フロムはそう語らなければならなかった。自己愛と無我という自己にたいする矛盾した言説はたくさん転がっていて、どっちがほんとうはいいのかがわからなくなるね。

 成功哲学や自己啓発などはまさに自己愛や自己肯定を強める側面をもつのではないのか。

 NPI(自己愛人格目録)という質問表があって、これってまさに成功哲学が成功するために自己暗示をかける項目だらけである。これって病的とみなされるのか。

 たとえば、こんなふうにならぶ。

私は、他人よりはもっと有能だと思う
もし私がこの世を支配するとしたら、もっとよいところになると思う。
私は、自分がよいリーダーだと思っている。
私は、人とは違う特別な人間だと思う。
私は、偉大な人間になるつもりだ。
私は、どちらかというと人の先頭に立ちたいほうだ。
私は、注目の的でありたいと思う。



 精神医学の本ではこのような項目に当る人は病的になるのかもしれないけど、成功哲学ではまさしくこれこそ自己暗示をかけて成功にみちびく言葉になるものである。「ところ変わればなんとやら~」といわれるけど、一方は病気のレッテルを貼り、一方ではほしくてたまらないもの。精神医学って人をつぶしたいのか。

 自己愛者の行動特徴には、自己顕示的、誇大的、自己中心的、特権意識、優越感、共感欠如、搾取的、といった特徴があり、まわりの人は迷惑をこうむったり、トラブルに巻き込まれるから困るといわれている。能力的自尊心が過剰な人は人間性や思いやりに欠ける。ゆえに自己愛はよくないらしい。

 過剰が問題なのか。欠如が問題なのか。

 たいていの人は欠如が問題ではないのか。過剰な人がそんなにいるだろうか。日本の学生の大多数は自尊心や自信に欠けるという調査結果もある。日本人は自尊心を病的なものと捉えるより、それを補強する必要こそまさに求められるのではないのか。

 ある意味、他人の自己像というのは、「わたし」にとっての序列意識を左右するものだから、人には優越感や特権意識をもってもらいたくないものかもね。精神医学は出る杭を打ちたいのか。

 ところでいぜん神秘思想も読んだことがあるので、自我は「想像上の産物」であり、それをなくすことが思考や感情に支配されない平穏の境地をうることだという思想もわたしは学んでいる。でも現実社会を渡るにはこの自己像をしっかりもつことも必要なのね。

 さいごにマズローは自尊心欲求は衣食住足りた後に求められる上位の欲求だといったのだが、著者はそれは基本欲求にふくまれるべきだといっている。わたしもそれには賛同する。親や人に認められないと赤ん坊は生きてゆけないのだ。

 飢えた人が見境もない本能的欲求につき動かされるとしたら、自尊心欲求が欠如した人もおなじように本能的欲求につき動かされるでのではないか。戦争では自国のプライドをかけた攻防がくりかえされるし、無差別殺人のようなものも自己の壊滅的な自尊心を補償するためにおこされる動機も多いのではないのか。自尊心欲求は低次元の本能的欲求にふくめるべきだろう。


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