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04 18
2013

セラピー・自己啓発

あなたは自分の価値を認めることができますか?―『なぜ自信が持てないのか』 根本 橘夫

なぜ自信が持てないのか 自己価値感の心理学 (PHP新書)
PHP研究所 (2011-08-26)
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 「自信が持てない」ことより、「自己価値感」についてのべたものとしてこの本はひじょうに重要である。すべての人はこの「自己価値感」を得るために人生を賭けているのではないだろうか。そういう意味で万人に価値のある本なのではないか。

 ドラマや映画でもこの「自己価値感」について語ったものがたくさんある。こないだ書いた記事では、『自虐の詩』や『イグアナの娘』、『やまとなでしこ』も自己価値観を追究する物語ではないのかと指摘した。自己否定から自己肯定をへるまでの物語はひじょうに多いと思う。

 むかしスポ根マンガなどでみなしごや捨て子の話が多かったのだが、これは母の無条件の承認がなかった=自己肯定感を得られなかったということではなかったのか。

 恋愛物語のおおくも自分を肯定するか、承認されるかという内容ではないのかと思う。自己を否定するものは人から愛される価値がないと思う。自己啓発や成功哲学でも自分の価値を追求しているのではないか。人にとってそれほどまでに自己価値は重要なのである。

 この言葉は「自尊心」とも呼ばれるし、「承認欲求」ともいわれるし、「自信」ともいわれることがある。自己価値はとりわけ「自信」ということばであらわされることが多いのだが、自信はまわり前後の関係が見えにくい。自己価値を追求しているといったほうがより展望は開けるだろう。

 自己価値には「存在への自信」と「能力への自信」のふたつがあって、このふたつを分けることが重要である。存在の自信は無条件で全体的であるが、能力の自信は断片的で限定的なものである。人は自分の価値を能力によって埋めようとするのだが、それによってゆるぎない存在の自信を得ることはできない。

「本来の自己価値感というのは、無条件性のものです。

自分の能力や容貌が劣っていようと、未熟だろうと、現在のあるがままの自分が受け入れられ、歓迎されているという実感です。

幼く未熟なままに歓迎されてきたのですから、自分の未熟さや、能力不足、欠陥、弱点をも、そのままに認め、受け入れることができ、それらにより自己価値が低減されるという感覚はありません」



 条件や能力でしか肯定を得られなかった人はこのような無条件の肯定を知ることもなかったのだろう。また経済社会でそういった無条件で肯定されるという経験は得がたいものだろう。

 存在の肯定を得られなかった自己「無価値感」人間は、社会的価値や能力を得ることによって認められようとする。けれど条件つき、限定つきの評価が無条件の価値肯定をもたらしてくれることはない。

「顕示欲求や競争意識の強い人は、一見すると自信がありそうに見え、そうした意識や行動は、自己価値観の強固さに起因するかのように思われます。しかし、実際は逆なのです。確固とした自己価値観がないために、決して負けられない、劣っている姿を見せられない」



 アラン・ド・ボトンは芸術家の遺産は「泣いているのだ」と指摘したのだが、価値観を得ようとした人間の苦闘がそこに見えるからなのだろう。クルシュナムルティも社会的に価値のある人間は、自分が無価値であることに耐えられないから、一角の人間になろうとする野望をもつのだと指摘したことと符合する。トルストイも栄光や賞賛の頂点にいながら、ふつうであることの偉大さに言及しているのだが、そういうことだったのだろう。

 だからといって自己価値観は一筋縄ではいかなくて、屈折したかたちで自己価値観は追求されることがある。すなわち、努力や競争しないことによってである。

 そうすることによって自分の無価値さに向かわざるを得なくなる事態を避けているのである。わたしたちは自己の価値感というものをたいそう大事にあつかっているものである、それは目に見えるところであったり、目に見えないところに秘匿されていたり。

 優等生でも自信がもてないことがあるといわれているのだが、その勉強の自信はスポーツの自信にはならないし、勉強の自信は社会での自信にもつながらない。限定的で断片的なものなのである。基底的な自己価値感というものはそういうものではないのである。能力や社会的価値に左右されない無条件の存在の肯定なのである。人はこの能力の価値にだけすがってしまうのだろうね。

 自己無価値感人間にとって、人生はつねにがんばりの連続であったか、がんばることにも値しない空虚なものになる。

「自分自身の人生を生きてくることができなかった、自分が夢見た人生と裏腹な人生を過ごしてしまった、そんなふうに感じられます」



 自分の価値を他者の注目と賞賛によって得ようとしたからなのだが、自己価値観があればそういうもので自己を支える必要がないのである。他者に価値をゆだねるためにますます自己の価値をうしなっていったのである。

「自己価値と感じられる行動では、比べること、勝つこと、社会的価値などは、ほとんどその色彩を失ってしまいます。そんなものよりも自分なりの楽しさ、満足感、達成感や充実感のほうが、はるかに比重を増します。そして、それをおこなっていること、おこなえること、そのこと自体に幸せを感じ、自己価値観を実感するものなのです」



 自分の価値は他者の評価や賞賛の中にではなく、自分の中にあるということである。

 といっても存在の肯定は無条件の承認を幼少期にうけて得られるものらしいが、そんな完璧な親や状況は存在しがたく、社会的にも学校的にも得られない事情はたくさん横たわっていると本書にのべられている。

 日本の子どもの自尊心の低さは世界でも際立っているのだが、学校でかなり無価値感を刷りこまれるらしい。女性は容姿の欠如をメディアなどで刷り込まれ、自尊心がほぼ壊滅状態になる。自尊心は文化的・社会的に条件づけ、規定づけられることもかなり多いようである。

 そういう壊滅的になった自己価値観は自己啓発や成功哲学によって癒され、奮起される。でもこれは能力や社会的価値によるものであり、限定的なものだ。より無条件の肯定や受容はニューエイジやインナーチャイルドといったものでおこなわれるようだ。

 自己価値観にまつわる前後はよりわけにくい。このことばは自信や自尊心、承認欲求といろいろな言葉、側面から語られることになって、そのことによって見え方、扱い方も変わってしまう。自己価値感ということばでこの現象面にしっかりと光を当てることが大事なのではないかと思う。まったく人間を生きるうえで重要な概念である。

 ところで自己価値感については、木村隆介の『悪魔への挑戦状――真の人間の価値とは何か』という本によって徹底的に論じられ、推奨するとのべられているのだが、ネットには書評もなし、書いた人は一企業人であるという意外な本でしたね。

 この自己価値感についての本はそう見つからなくて、自己肯定感にスライドすると教育関係でよく見つけられて、自尊心や承認欲求となるといろいろなジャンルで語れることになる。自信やなりたい自己とかになると自己啓発の一大産業になる。ひとつの現象を語っているのだろうけど、言葉・概念が違えば、かなり違ったもの、語り口の違ったものになるのだが、同じ現象のはずであるというふしぎなものだな。



4873020670悪魔(サタン)への挑戦状―真の人間の価値とは何か
木村 隆介
郁朋社 2000-03

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4873022894人間はそこに存在すること自体に無限の価値がある―ストレスフリーになろう
木村 隆介
郁朋社 2005-02

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▼ステータスや名声を「愛」という言葉で語った名著だね。
4087734404もうひとつの愛を哲学する ―ステイタスの不安―
アラン・ド・ボトン
集英社 2005-11-04

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▼著者の根本橘夫は自己無価値感人間から、代償的自己という側面にスライドしたんだろうね。
4166607243「いい人に見られたい」症候群―代償的自己を生きる (文春新書)
根本 橘夫
文藝春秋 2009-10

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▼自己価値感の本はすくなく、自己肯定が多い。自尊心や自信となると多くなる。違う名前であるけど、同じ事柄じゃないの。成功哲学とかポジティブ心理学とかふくめるともっと大きくなる。
生きることと自己肯定感競争社会に向き合う自己肯定感―もっとゆっくり/信じて待つ自己肯定・自尊の感情をはぐくむ援助技法 青年期・成人編―よりよい自分に出会うために日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか (光文社新書)自信をもてないあなたへ―自分でできる認知行動療法

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Comment

はじめまして。自己無価値観を検索してこちらの記事にたどり着きました。
自分自身が長年無価値観に悩まされてきて、いろんな書籍を探したのですが仰る通りこの分野のものはまだ少ないですよね。
「存在への自信」非常にわかりやすく目から鱗でした。自分の自己肯定感を育むに当たって役立ちそうです。
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