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03 31
2013

セラピー・自己啓発

人は能力と愛で認められる必要がある―『自己評価の心理学』 クリストフ・アンドレ&フランソワ・ルロール

4314008776自己評価の心理学
―なぜあの人は自分に自信があるのか

クリストフ・アンドレ&フランソワ・ルロール
紀伊國屋書店 2000-09

by G-Tools


 これはおすすめできる本ですね。いい本。

 自尊心や劣等感についての本はあるのだが、いまいちそれらの言葉は距離をおきにくい。視野狭窄になって犬にふりまわされるようなものだ。

 自己評価という場所からながめれば、もう一段客観的な目でそれが高いか低いかの鳥の目でみることができる。自尊心とか自信がないという言葉ではない、自己評価という目線でくくることの意義は大きい。

 自己評価のさまざまな側面を整理して実験結果でみせるいい本なのだが、おおくの項目をとりあげた結果、ひとつのテーマでもっと掘り下げてほしかったという弱みもあるし、概括的であるから本を読み終えたあと、頭の中がごちゃごちゃしすぎてしまって、まとまらないという困惑も感じた。しっかり頭に刻みこみたい内容であったからこそなおさら感じる弱点である。

 基本的に自己評価の問題点となるとその低さが問題となるのだが、ここでは自己評価が高くなることの問題にもちゃんとふれられている。過信や意固地さ、放漫さという他人への害悪が増す。ぎゃくに自己評価の低いことの利点は、人から受け入れられやすいし、忠告も聞き入れるし、謙虚という長所もある。

 日本では学生の自尊心の低さがきわだっているのだが、自己評価の低さを尊重する文化は個人の人生をゆたかにしているだろうか。個人的に自信がないと肩を落とすだけではなく、社会的にそう仕向けられていることも忘れてはならない。

 国や文化によって自己評価の尊重のしかたは違っていて、自己紹介ではイギリス人はアメリカ人に対して「自慢話」だと非難し、ぎゃくにアメリカ人は「偽善的」と非難してきた。フランスのストラスブールでは成功や自分について話さないのが美徳であるのだが、マルセイユでは「ほらを吹く」ことが認められている。自己評価の許容のしかたはそれぞれの国で違っていて、長短と文化性をわきまえたほうがいいのだろう。

 あなたの自信のなさは日本のお国柄のゆえであって、出る杭は叩かれる文化のゆえかもしれない。しかも自尊心の低いことは謙遜であるとか高飛車でないという評価も得られる。

               *

 自己評価では能力にかんしてはいつでも自分を高く評価できるわけでない。しかし自分を愛することには条件がつかない。

「どんな欠点があっても、能力に限界があっても、またどんな失敗をしても、人は自分を愛することができる。…このように無条件に自分を愛することができるからこそ、人は逆境に耐え、挫折を乗りこえることができる」



 この能力はなくても無条件に自分を愛する、擁護できることはたいせつな要素でしょうね。

「<自信を持つ>とは、<自分の決断に確信を持てる>、すなわち<どんな重要な局面でも自分は適切な行動を取れると信じることができる>ということでもある。

<自信>がなければ、人は<行動する>ことができない。だが<自己評価>を維持し、あるいは高めるには<行動する>ことが必要。より正確に言えば、<行動し成功する>ことが…。

行動をしなければ何も起こらない。そして、何も起こらなければ自己評価は改善されようがないのである」



 行動をおこなわなければ自己評価が高まることはない。だけどその行動をおこさせるのは自信である。ポジティブ・フィードバックを形成するか、自信ももてず行動もおこなえないでネガティブ・スパイラルに陥るかの分岐点には気をつけたいものである。

自己評価の栄養源 = 愛されているという気もち + 能力があるという気もち

 私たちは愛される(感じがよいと思われる、人気がある、望まれている)と同時に、能力がある(成績がよい、才能に恵まれている、役に立っている)と感じる必要があるのだ」



 このふたつの要素に分けて、自己評価を保つことは重要なんでしょうね。どちらか一方だけに偏って、一方だけが欠如するとうまくいかなくなる。このふたつの栄養源はしっかりとおぼえておきたいものだ。

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 自己評価で異性と自分の価値を交換することになる恋愛にはとりわけ自分の価値評価という側面があらわれることになる。価値が低いと思っている女性は男性からの求愛に自分に価値がない、ふさわしくないと思ってしまうし、男性も価値が低いと思っていると女性に積極的に行動に出れない。恋愛というのは自分の価値の値踏みでもある。

「誰かを魅了したいと思うのは危険を冒すことだ。誘いをかけるということは、相手に<拒否する権利>を与えるということでもあるからだ。

<浮気な夫を持つ妻に対する教訓>。それは夫に対して「あなたは自分が思っているほど素敵じゃない」とささやきつづけること。

女性は自己評価が下がった時に誘惑に弱い。誘惑とは賞賛のことだ」



 実験でたしかめられているのだが、男性は自己評価が高まったとき女性を誘いやすいし、女性は自己評価が低くなったとき誘いに乗りやすい。わかりますね、この意味。

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「企業はこれまで長い間、社員の自己評価は業績とだけ関連づけて考えるべきだという見方をしてきた。…最近になって告発されはじめている。すなわち、業績をあげることだけを自己評価の基準に置いてしまうと、高いけれども非常に不安定な自己評価が形成され、競争心をむきだしにするいっぽうで、失敗に弱く、解雇されるとぼろぼろになってしまう人間ができあがるのである」



 自己評価の栄養源には愛と能力のふたつの評価が必要と先ほど引用したが、能力だけに特化した自己評価は崖っぷちのように危うい。いつも転落を恐れていたら肯定感は得られない。こういう片一方だけの評価を求めつづけて失敗する人は多いのでしょうね。

 女性は自分の自信がもてない比率が思春期になって高まるということだが、その原因にファッションや美容の理想水準がどんどん高められていることがあげられている。この商業とか雑誌などの情報に自己評価を意図的に下げられているという側面もしっかりと見なければならないでしょうね。

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 自己評価が高いことと自己愛性人格障害はどう違うのかという項では、

「その多くは自分がどう見られるかの不安を抱いていて、そのために自分の価値を高く見せようとしていることが多い。

 自分の価値に本当に自信が持てないので、無理にでも自分が優れていると思い込み、まわりにもそう思わせようとするのだ」



 こういう人たちへのセラピストの役割は自己評価を上げるのではなく、下げるという珍しい例である。

「他人からの賞賛や社会的地位に頼ったりしなくても、自信を持って生きていけるようにする」



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 自己評価が低く、心のなかの批判がうずまいている人にはいい質問がある。

「<そう考えるのは現実的だろうか?>
<そう考えることによって楽しい気分になるだろうか?>
<そう考えることによって、現在の状況に立ち向かうことができるだろうか?>
<そう考えることによって、この次の機会にはもっとよくなると期待できるだろうか?>



 これらの<現実吟味テスト>は自己批判がいったいなんのためになされるのかという疑問がうきあがるね。楽しい気分やなにかの解決、向上をめざす建設的なものが求められているのか。たんに自分をつき落とすために、いったいだれのための考え方かと思うね。心の中で考えることは自分にとって有益なものでありたいね。

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 この本は自己評価の整理と実験においてひじょうに興味深い内容をたくさん見せてくれるのだが、内容もりだくさんでぎゃくに頭の中の整理ができなくなってしまう(笑)。でも「自己評価」という目線はとても大切だと思った。自尊心、劣等感についての本はいくらかあるのだが、もうひとつ客観的な目を養ってくれるね。

 それにしても自己評価であるとか、自尊心、承認欲求の話になると、なにか概念的なもの、区切り的なものがひじょうにあいまいになって、雲をつかむような感覚になってくる。とらえどころがない感がするのである。しっかりとつかんでおきたい事柄なんだけどね。

 なお続刊におなじ著者による『自己評価メソッド』という本があるようですね。こちらのほうが実践的・方法的なセラピー書になっているのでしょうね。読むべきなのか。自信にかんしては認知療法からの本があるようだが、効果のほどはどうなのだろう。

 この本のような自己評価にかんする本をつづけて読みたいと思ったのが、自己評価と冠された本はいがいに少ないね。


自己評価メソッド―自分とうまくつきあうための心理学他人がこわい―あがり症・内気・社会恐怖の心理学自信をもてないあなたへ―自分でできる認知行動療法自信を育てる心理学―「自己評価」入門日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか (光文社新書)

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