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03 20
2013

書評 ビジネス書

欠点ばかり見ていてもね――『「ハッタリ」力』 小林 昌平 大石 太郎 小峯 隆生

4062725614「ハッタリ」力
  30歳からでも間に合う人生再起動の教科書 (講談社プラスアルファ新書)

小林 昌平 大石 太郎 小峯 隆生
講談社 2009-03-19

by G-Tools


 「ハッタリ力」というのは自分を売る力、自分の長所を見せる方法といってもいいだろうね。謙遜や謙譲が尊ばれる日本ではほうっておいたら自分の欠点や短所ばかり見つめてしまい、しまいにはそういう人生しか送れなくなる。だから自分のポジティブな面を見つけることはたいせつだろうね。

 「サラリーマンの仕事のほとんどは、他人とのかかわり合いでできていて、眼前にいる採用担当者や上司やクライアントに、認められるか、認めないか? の連続だ。その僅かな、しかし結果的には大きな違いは、あなたの言葉がウソか本当か、本心から出たか偽りから出たかわからないように演じ、自分の能力を何倍にも見せて説き伏せ、信任させたりする「ハッタリ」の能力の差なのだ」

 未来の結果なんでだれにもわからない。せいぜい過去の業績や結果、それとだれかの言葉に賭けるしかない。未来というのは空想であり、ギャンブルであり、だれにとっても不確実な賭けでしかない。だから「ハッタリ力」というものは必要だ。「自分はダメだ、できない」と思っているとだれも救い出してくれないばかりか、「自己成就」してしまうだろうね。

 この本では七人の人物がとりあげられているのだが、ハッタリ力では白洲次郎や岡本太郎がいちばん当てはまるだろうけど、ほかの人たちはハッタリに当てはまるかどうか。ほかに開高健、伊丹十三、小渕恵三、黒澤明、司馬遼太郎がとりあげられている。コラムニスト、ライターが書いた雑誌系の軽い文章には失笑を買うのだが、まあスルーしよう。

 白洲次郎はマッカーサーを恫喝したエピソードが有名なのだが、アメリカ人の弱いところを知っていたという。移民の国であるアメリカ人はイギリスの伝統文化に強い憧れと劣等感をいだいていた。白洲次郎はイギリスのケンブリッジ大学出身だから、この弱点をついたという。アメリカに進出する日本人ミュージシャンが失敗するのは、日本人自身の憧れと劣等感しか見ていないかもしれないね。

 伊丹十三はバイクにこっていたが、テレビ番組をバイクだけつくるのはムリだから、桜の最前線をバイクで追うという企画を生み出したという。

 「「バイク好き」の独りよがりにならず、「桜」という一般人誰もが知っている見たいものと結び付けて、「売り力」を増して、「受け力」で得た膨大な情報の中から、「他の人があまり知らないこと」を選び出して、あっと言わせる」

 この戦略、自分の好きなもの得意なものと一般性を結びつけるワザは経営戦略でも説かれる方法だね。ちきりんはこういう戦略はもう古い、消費者は人の強みなどだれもほしがっていないと否定したのだけどね。

 岡本太郎はまさにハッタリでい生きた人だと思うのだけど、1930年にマルセル・モースに学び、バタイユらと親交があったというのはすごいね。

 「頭が悪かろうが、面がまずかろうが、財産がなかろうが、それが自分なんだ。それは『絶対』なんだ」

 「自分を大事にするのではなく、己をつきとばすことで、運命をきりひらくんだ」 『自分の中に毒を持て』

 岡本太郎の「芸術はバクハツだ」を小学校時代に見ていたわたしはこのこけら脅しの芸術家はダメだと思っていたのだが、ドラマになったりしてこの評価を見直すべきなのかな。

 「人間、思いあがらずになにができましょうか。(中略)才あるものは思いあがってこそ、十の力を十二にも発揮することができ、膂力ある者はわが力優れりと思えばこそ、ハラの底から力がわきあがってくるものでござります」

 司馬遼太郎の『国盗り物語』の言葉だ。

 「水木しげるという漫画家がいる。売れない時期は戦争体験に基づくまじめな漫画ばかり描いていたという。がある時、気づく。作者が悲壮ぶっても読者にはどうでもいいことで、ウソでもいいから単純に面白がりたいだけなのだと。そのことがわかってから、漫画が売れはじめた」

 数時間であっさり読めてしまう新書であったが、この本を読んだあと、作家はどのように売れるキッカケや読者の視点を得るにいたったのかといった作家のエピソード集があったなら読みたいと思った。そんなふうにまとめたアンソロジーっぽい本はあるのかな。

 下記に類書をならべてみてあざとさ、作為性にちょっとうんざりしたのだが、そもそも素朴とか本心から出た自分などというのは神話か、作為に気づかない無知かもしれないね。自分というのは意識するにせよ、無意識にせよ、すべて「つくりだされた」ものじゃないのかな。そういう無意識につくられた自分に縛られて身動きがとれなくなっているのが「いまの自分」かもしれないね。


▼類書はこういう本になるのかな。
自分を「売る」力―斎藤流トレーニング (講談社プラスアルファ文庫)頭がいい人の「自分を高く売る」技術 (角川Oneテーマ21)今日からでもできる! 自分を10倍高く売る人の小さな習慣自分を高く売るための心理法則―不安が自信に変わるとっておきの知恵キャリアアップ力―自分を高く売る仕事のスタイルを創造する!

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