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03 18
2013

レイライン・死と再生

民話のようにおもしろい――『マヤ神話―ポポル・ヴフ』 A. レシーノス

4122038847マヤ神話―ポポル・ヴフ (中公文庫BIBLIO)
A. レシーノス原訳
中央公論新社 2001-08-25

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 厳かな創世神話というより、おもしろくて楽しい空想小説といった趣がする物語である。空想や想像が弾んだ楽しい読み物である。民話に近い。

 このマヤ文化の神話とされる『ポポル・ヴフ』という文書はスペイン侵略後の16世紀に、それまで文字の知らなかったマヤ人がローマ字で書いたものとされる。かなり新しいもので、古くからあるマヤ神話のもとのかたちをどれほど留めているか疑問だし、キリスト教の創世神話も模倣されているといわれているので、あたらしく創作されたかもとの疑いはある。

 でもおもしろい物語である。とくに第二部の知恵比べのような神話はそれだけで一冊の読み物となるかのようだ。

 マヤといえば生け贄が思い浮かぶのだが、神がそれを要求したエピソードなどものべられているし、うぬぼれによって殺される神などインディアン文化の特徴なのかなと思ったりする。とにかく殺したり殺されたりするまでの狡知にみちた駆け引きがおもしろい。

 混沌のなかに「はじめて言葉があった」などというのはユダヤ教の創世記の影響がみとめらるのはたしかだ。山の小さな動物や鹿や鳥、「ぴゅーま」や、蛇や蝮を神は創造するのだが、神が満足しない理由がふるっている。

「われらを崇め称えることのできないおまえたちは、いつまでも食餌と住屋を谷間や森に求めているがよい。おまえたちの肉は碾臼にかけられて食べられてしまうだろう」

 神は崇拝する者たちを必要としたのは自律していない存在というか、強制されてするものではないと思うのだが。あるいは外部から強制されたキリスト教を揶揄しているのか。

 泥土でつくった人間はうまくいかず、木でつくった人間は産み増えた。しかしその人間はうつろで崇拝することもなかったので殺された。そのとき土甕も皿もなべも人間に噛みつき、犬にも復讐された。この人間はいまでも子孫がいて、それは猿だというのである。そんなわけで猿は人間に似ていると説明されるのである。猿はとんでもない役回りである。

 太陽がなかった前に太陽のような存在としてうぬぼれたヴクブ・カキシュという神は、それゆえに殺されてしまうと物語るマヤ神話は、出る杭は打たれる的な文化を想像してしまうね。

 第二部では殺す殺されるまでの巧緻な駆け引きが親子二代にわたって語られるのが、これがウィットに飛んでいておもしろい。知恵比べを楽しむような物語である。ここで人間に病気や急死の役割をもつようにされる神が出てくるのだが、病気をつかさどる神というのはそう聞かないな。

 畑の仕事のじゃまをする鹿とうさぎは尻尾だけがつかまえられた。そんなわけでいまでも鹿とうさぎは尻尾が短いのだと説明される。鼠の尻尾は焼いた。だからいまでも鼠の尻尾には毛がないそうな。

 伝言を老婆にたのまれた虱は足のはやい生き物にどんどん食べられてゆくのだが、がまは大蛇に食べられてしまい、だからいまでもがまは蛇に食べられるという。蛇は鷹にのみこまれ、だからいまも鷹に食べられるのである。神話のなかにはものごとの理由や起源がこのように説明される。納得したのかな、子どもだったらね。

 この章で出てくるふたりの若者は父の仇をうつのだが、天に昇り、太陽と月になったという。ほかに敵に殺された者たちも星になったという。この物語に太陽や星になる因果やゆえんがあったのかはハテナかな。

 人間がつくられたのはとうもろこしからとされている。日本ではさしずめ米からつくられたようなものかな。神のように世界をみわたせたのだが、神の嫉妬を買ってしまい、叡智と知恵はうちくだかれるのである。

 トヒールという神は胸と脇をさき、心臓をひっぱりだして生け贄にせよといったそうである。そのようにされることがいやだった部族は火をもらいにいかなかったそうだ。

 太陽があわらわれたとき、神と崇められた「ぴゅーま」も蛇も怪鬼も石に変わってしまった。そのために人間はかれらに食べられなかったし、栄光も得られたといっている。動物崇拝から太陽崇拝の変わり目をいっているのかな。 

 てきとうなところだけをかいつまむ抜粋をおこなったが、このマヤ神話はひじょうに素朴な、おもしろみのある、民話的な創世神話といったらいいのか。神話というより、民話なのかもしれない。

 マヤ文明とかインカ文明というのは外から遺跡ばかりが見られるわけだが、こういう神話を読んで内面から理解したほうが近づけるのかもしれないね。ただこの神話は西欧侵略化のあとだし、古来の神官たちに奉じられていた神話とおなじだったかはわからないね。


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