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03 16
2013

レイライン・死と再生

悲劇性のある神話――『ペルシアの神話』 岡田 恵美子

4480329056ペルシアの神話 光と闇のたたかい 世界の神話 (5)
岡田 恵美子
筑摩書房 1982-01

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 中高生あたりを主読者層にした本かな。ペルシャ神話にめぼしいほかの本が見あたらなかったのでこの本を読む。司馬遼太郎だってわかりにくいときは子どもの本を読むとかいっていたねw

 ペルシアは井本英一が日本の宗教民俗を比較する際にもちいた共通項のある民俗なので興味があり、その基礎の神話にふれたいと思っていた。

 『飛鳥とペルシア』においてイザナギとイシュタルの冥界下りに共通項をみいだし、ペルセポリスの有翼円盤に正月飾りを見るといった比較化をおこなっていた。松本清張も古代ペルシアと日本のつながりに興味をもっていたらしいから、ちょっと前にそういうブームがあったのかもね。いまはあまり聞かないのだけど。

 この本を読むと古層の神話が多いというより、王の英雄譚が多く占めていて、わたしの知りたいところと若干ズレがあったのだが、英雄の悲劇は胸の打つところがある物語だった。

 善政をしいたとされるファリードゥーン王の三人の息子に末子の王子に国をつがせ、兄たちにほかの国をつがせたために欲をもった兄たちに弟を殺されてしまう。復讐を誓った父ファリードゥーンはひ孫にその兄弟たちを殺させてしまうのである。この悲劇は胸にせまるものがある。

 また英雄ロスタムのおたがいの名を知らないばかりに息子と闘い合い、息子を殺してしまう物語にも悲劇性がつきまとう。父子、兄弟たちが殺し合いをしてしまう悲劇にペルシアはどうして囚われていたのだろうか。

 白髪に生まれたために父から捨てられ、霊鳥スィームルグに育てられたザールに与えられた知恵問答が象徴性に富むのでここにあげておく。

 第一の問い。「三十本の枝をもつみごとな十二本の木を見た。木はなにを意味しているか」
 第二の問い。「二頭の駿馬を見た。一頭は雪のように白く、他の一頭はタールのように黒い。二頭は輪を描いてたがいに後を追いかけつづけるが、追いつくことはできない。この意味は何か」
 第三の問い。「青草の繁る美しい草地を見た。鋭い鎌をもった男があらわれて、ぬれた草も乾いた草も刈りとった。草にも命はあるもの――しかし泣こうが嘆こうがおかまいなし。これは何か」
 第四の問い。「海上に二本の糸杉がそびえ立っていた。そこには一羽の鳥が巣をかけている。鳥が宿っている方は青々と枝葉を繁らせているが、もう一方は枯れている。なぜか」
 第五の問い。「美しい町がイバラだらけの荒野のかたわらにあった。人びとは美しい町のことは考えず、荒れたイバラの野に家をたてた。ある日、地震がおこり、イバラの野に建てた国はことごとく滅亡してしまった。人びとはこの時になって美しい町のことを思い出した」




 答えを順番に。一問「十二ヶ月と三十日」、二問「夜と昼、たがいにいかにかけようと追いつくことはない」、三問「青草はわれわれ人間で、鎌は時。死の時がやってくれば、若かろうと老人であろうと、泣こうと嘆こうと容赦なく刈りとられる」、四問「鳥は太陽のこと。二本の糸杉は一年の半分。片方に鳥がとまっている春と夏は草木が青々と繁るが、とまっていない方は秋と冬で、草木は枯れている」、五問「美しい町とは永遠の館――あの世のこと。イバラの荒野とは仮の世とよぶ現世。この世にあるうちはあの世を考えない。死はこの世の生涯を一瞬に破壊する。あの世のことを考えておけばよかったと思っても間に合わない」


410MDPn8CGL__SL500_.jpg飛鳥とペルシア―死と再生の構図にみる (小学館創造選書 (76))
井本 英一
小学館 1984-06

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517cnTSUNPL__SL500_AA300_.jpgペルセポリスから飛鳥へ―清張古代史をゆく (新コンパクト・シリーズ)
松本 清張
日本放送出版協会 1988-05

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▼マンガもあるのね。
409133315X西(シナル)の国の物語〜ペルシア神話より〜 (フラワーコミックスアルファ)
諏訪 緑
小学館 2010-07-09

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