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02 26
2013

レイライン・死と再生

おとぎ話は史実か、自然宗教か―『桃太郎と邪馬台国』 前田 晴人

4061497375桃太郎と邪馬台国 (講談社現代新書)
前田 晴人
講談社 2004-09-18

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 まあまあ、おもしろかったかな。おとぎ話のなかから史実を読みとろうという志向の本で、さいしょの一寸法師と住吉神話の説はいちばん納得したが、つぎの桃太郎と吉備国、浦島太郎と丹後半島になるにしたがい、魅力と説得力をうしなった本かな。

 わたしはおとぎ話に古層の自然信仰を読みとりたいという気持ちが強いのだが、この著者はあくまでも史実が混入した物語だ、史実が読みとられるという立場。

 おとぎ話はそれぞれの土地の由来としてつたわるばあいが多いのだが、まずはおとぎ話がつたわってその場所に落としこまれたのか、それとも土地の史実があってのちに一般的なおとぎ話として流通するようになったか、どちらなのかと思う。たとえば浦島伝説というのはあちこちにあるもので、丹後半島に発祥するものととらえていいものだろうか。

 第一章の「一寸法師と住吉」はいちばんおもしろくて、納得されるものだった。一寸法師って古い『御伽草子』によると難波の里で住吉に参ったおかげで生まれた子であるそうだ。由来が住吉大社の物語だったのね。

 この物語が生まれた由縁はじつは住吉大社の霊験の喧伝であったというのが著者の推理。住吉に参れば立派な子どもが生まれ、高貴な姫君にめぐまれ、金銀財宝を手にし、王朝貴族の一員になれるという効用がこめられた住吉大明神の宣伝ストーリーだったと。ありそうな話だね。

 それと住吉神の系図と景行天皇から仲哀天皇、神功皇后の系図が重ねられたものではないかという推理も興味深いね。神の宣託を無視した仲哀天皇は殺されてしまい、神功皇后の腹の子応神天皇が新羅国を統治することになる。この託宣をくだしたのは住吉大明神であり、応神が航路をゆくのは椀にのった一寸法師のエピソードとおなじではないかという。たしかに住吉大社の神には神功皇后がそえられているね。

 応神天皇は仁徳天皇と同体であるという説がとなえられていて、仁徳天皇こそさいしょの始祖王という説もある。それまでの天皇は架空の神。住吉大社がなぜか重んじられている理由はそんなところにあるのかな。

 第三章では桃太郎と吉備国が検討されている。著者は吉備の鬼伝説、温羅伝説の原型は、王権への反乱と抵抗をくりかえしていた吉備国を、王権がおさえこみ鎮祭するという意図をもってつくられた神話だとしている。
 
 わたしはまた例のごとくレイラインをもちだしてくるのだが、吉備津神社と鬼城山はどうもレイラインでつながっていたらしい。太陽の夏至と冬至のラインがぴったり重なるのがこの地のナゾなんだな。

 温羅(うら)伝承はこのレイラインのたとえではないかと思う。貢船や婦女子を略奪する温羅を退治するためにイサセリヒノミコトは楯築山に石楯を立てて、交戦したが、弓矢はいつも敵方の矢と噛み合わさって海中に落ちた。矢喰宮はその矢を祀っている。二矢を一時に放ち、温羅の左目にささり、その血潮は流水のごとくほとばしった。血吸川はその跡である。温羅は鯉となってのがれたが、ミコトは鵜となって噛み揚げた。そこは鯉喰宮とよばれた。

okayamarei.jpg
岡山レイライン

 吉備津彦神社から夏至の日没には鬼城山があり、経山から冬至の日の出は吉備津神社からのぼる。矢がかみ合って落ちた矢喰宮はその中間にある。吉備津神社から夏至の日の出は吉備津彦神社からのぼり、そのぎゃくに冬至の日没は吉備津神社にしずむ。

 これは太陽信仰をかたった物語であり、鬼というのは冬季の衰退であり、夏季のパワーをあらわすものだったのだろう。吉備の桃太郎というのは古層には太陽のパワーと減退をかたどった物語があったと思われる。この伝承には古代の自然信仰が語られているのであり、史実をみいだそうとするのはムリがある気がする。

 桃太郎の猿・雉・犬は西方の方位、申酉戌を対応させているらしい。滝沢馬琴は西は金気殺伐をつかさどるといっているから、冬の鬼の邪気をそれらで追い払うということなんだろうか。春の方位のほうが強そうだが。

 第四章では浦島太郎と丹後半島が検討されているが、この章はいちばん納得性がないように感じる。浦島太郎伝説はふるくからあった伝承の型があって、そのいわれを丹後半島のあちこちに落とし込んだように思うのだが。丹後半島から浦島伝説がひろがっていったわけではないだろう。

 わたしはおとぎ話に史実や政治の話が語られていたと見るより、古層の自然信仰からの話を読み込みたいと思う。

 なお著者は堺の工業高校の教師をしており、そのかたわらに歴史研究を発表していたらしいね。堺に由縁があるわたしとしては親近感を感じるね。いまは大学の講師もしているのかな。


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