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02 19
2013

レイライン・死と再生

大地母神と穀物神から読み解きたい―『「世界の神々」がよくわかる本』 東 ゆみこ監修

4569665519「世界の神々」がよくわかる本 ゼウス・アポロンからシヴァ、ギルガメシュまで (PHP文庫)
東 ゆみこ 監修
造事務所 著
PHP研究所 2005-12-02

by G-Tools


 わたしのいまの興味は太陽神や豊穣神の死と再生の世界観なのだが、その接合部分となる性風俗についてさぐったあと、こんどは世界の神話にスライドしてみようと思いいたった。原始宗教、古代自然宗教の解釈から神話を読みとることができるのではないかという推察だ。民話も心理学的解釈ではなくて、自然宗教で解きたいのだけどね。

 世界の神話についての廉価な文庫本はそう充実しているわけではなくて、散発的に出ている程度のようだ。学問的な解釈本から先に読まないとまったく意味もわからない気がしないわけでもないが、まずは内容と物語りも知らないとならないということでPHP文庫のこの本にめぼしをつけた。

 神話というのはゲームやマンガに親和性があるようで、この本に出ているイラストなんてゲーム的な世界だね。世界神話というのは物語的興味から近寄られることが多いようだね。「スター・ウォーズ」とかジョセフ・キャンベルの接近などは小耳にはさむね。

 原始宗教的解釈から世界神話に近づいた人はだれだろうね。吉田敦彦なんて自然宗教と神話が結びついた人のようですでに二冊ほど読んだ。中沢新一もそういうことをやっているようだね。海外ではだれなのだろう。

 この本では七つの世界神話から神のキャラがそれぞれのべられている本で、まるでゲームの登場人物のような紹介。それでも七つの世界神話がかんたんにのべられているので、ざっくり神話をとらえるにはお手軽だね。そういう世界神話を横断して紹介する廉価な入門書があまりないよう。

 わたしの興味はメソポタミア神話がいちばん強いかな。井本英一によりペルシャと日本習俗の共通性を教えられたからかな。エジプト神話は太陽信仰が強かったので日本神話とかなり共通性があると思うので、エジプト神話には多く学ぶことがあるかな。西洋文化の教養としてはギリシャ神話がいちばん流入しているわけだが、古代自然宗教の痕跡をあまり残していないのではないかとすこし興味はうすい。インド神話は神の名前がそれぞれ日本名を与えられているように、かなり流入しているのね。

 それぞれの神話には大地母神や穀物神というものが存在していて、これが古代の世界観の要になると思うのだけど、それが主役でなければないほど新しい神話になるということかな。

 ギリシャでは穀物母神はデメテル。大地の女神はガイア。豊穣の神はアフロディーテとされるが、エロスの要素が強い。ハデスは冥府の王だが、花を咲かせるペルセポネというデメテルの娘を冥府につれさってしまう。怒ったデメテルは穀物の仕事を放棄して地上は荒廃してしまう。ペルセポネを地上にもどすさい、冥府のザクロを食べさせたために一年の三分の一を冥府ですごさなければならない身になってしまう。冬に花や穀物がならないことを説明しているのだろうね。

 北欧神話では大地の女神はフィヨルギンで、豊穣の女神はフリッグ。ケルト神話では大母神はダヌとよばれ、ダヌの乳房というふたつの丘がある。太陽神はブリジッド。インド神話では農業の神はラクシュミーとよばれ、日本では吉祥天女とよばれている。太陽神はスーリヤ。

 メソポタミア神話では豊穣の女神はイシュタルであり、この神の名(「ミュリッタ」ともよばれた)においてバビロニアのイシュタル神殿で、女性は見知らぬ男に生涯にいちど抱かれる義務を負った。イシュタルは冥界に下りてゆくさい、ひとつひとつ身につけていたものを脱いでいき、祭事で読まれたそれはストリップショーのようなものだったといわれている。冥界に監禁されたせいで地上ではあらゆる生殖活動が停止してしまっため、身代わりになった愛人ドゥムジは半年だけ地上に帰ることを許された。作物のサイクルと符合していて、冬の不毛の理由を説明したものだろう。先ほどのギリシャ神話と似ているね。

 農耕の神はマルドゥク。メソポタミアでは太陽より、月の神であるシンのほうが重視されていた。月の満ち欠けによって時を刻み、暦の王だったのである。

 エジプト神話では太陽神ラーが最高の神とされていて、太陽信仰がひときわさかんな文明だった。ラーは昼のあいだは天空を旅し、夜は地底の川を船で移動する。また夜になると天空の女神ヌトにのみこまれ、また翌朝生み出される。死と再生の世界観が色濃く残っているのはエジプト神話だ。フンコロガシのケプリが神とされたのは、糞の中から再生するからであり、玉をころがすすがたが太陽を動かしているすがたに見られたからだ。

 オシリスは農業の神であったが、死者の世界の神となった。穀物は一度冬に死に絶えても、春にふたたびよみがえる。死は恐れられることではなくて、魂の不滅が信じられていたエジプトでは死は再生につながる道であった。ミンは雨の神であり、豊穣と生殖力をつかさどる神であり、男根を屹立させていたという。エジプト神話って日本の神話や民俗を説明するのにいちばん近い気がするのだけど。

 神話というの自然の世界のなりたちやありようを擬人化もしくは動物や神によってたとえられた物語だと思う。物語によって自然が説明されている。自然の現象は神という概念、あるいは超自然物の存在なくして説明することができなかったのだろうね。

 神話は自然がどう捉えられていたか、どう生成するものかと説明された物語だったのだろうね。コスモロジー(宇宙観)だね。どういう意味でその神は捉えられていたのか知りたいね。神のありかたは人々の規範やルールになったのだから、神のありかたを知ることは人々の儀礼や習俗の意味も捉えられることになるね。


不死と性の神話豊穣と不死の神話太陽の神話と祭り人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ(1) (講談社選書メチエ)神話と民俗のかたち

神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)女神の神話学―処女母神の誕生 (平凡社選書 (197))北欧神話と伝説 (講談社学術文庫)オリエント神話エジプト神話

ホモ・ネカーンス―古代ギリシアの犠牲儀礼と神話女神 -生ける自然の母-     イメージの博物誌 30死と豊穣の民俗文化 (日本歴史民俗叢書)シュメル神話の世界―粘土板に刻まれた最古のロマン (中公新書)ケルト神話と中世騎士物語―「他界」への旅と冒険 (中公新書)

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