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01 19
2013

レイライン・死と再生

敵は全面的に悪だという「怪獣ごっこ」だね―『一神教の闇』 安田 喜憲

4480063315一神教の闇―アニミズムの復権 (ちくま新書)
安田 喜憲
筑摩書房 2006-11

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 なんだかなあ。一神教が全面的な悪で、アニミズムが全面的な善のような単純な切りとり方には、あきれるほどの稚拙さを感じたな。自文化中心主義の欠点ももろに出ているし。まるで「スター・ウォーズ」や子どもの怪獣番組みたいな単純な善悪二元論の世界をこれでもかも見せつけられた気分。

 一神教が「力と闘争の文明」で、アニミズムが「美と慈悲の文明」。あまりにも単純化しすぎだろ。

 環境破壊の時代には生命や自然を尊び、慈しむアニミズムの世界観を復権せよというメッセージはしごくまっとうなことだと思う。だけど一神教が破壊や殺戮だけをもたらすような単純な切りとり方はできないと思う。

 スケールの大きい文明論には単純化や要素を切りとる簡素化は必要だと思うのだけど、例外や相違点をあまりにも切り去りすぎていると思う。こんな単純な二元論は首肯できない。

 この単純な二元論がなければ、環境考古学という学問は学ぶことが大きいだろうし、参考になることも多いだろう。基本ラインはもっともなことをいっているのだと思う。だけど敵は全面的な悪だという「怪獣ごっこ」を前面に見せつけられたら、この本全体の信頼性もうしなう。

 わたしは古代宗教やアニミズムの世界になぜかひきつけられているのだが、この世界が善だとか、信仰しているという意味でしらべているのではない。ただ単純にこの世界観のことを知りたい、謎を解いてゆく過程で論理がきちっとパズルのように解ける楽しさを味わっているだけだ。

 この世界観を復権せよとか、もう一度信仰せよという主張ももっていない。世界観のロマンを味わっているだけである。ある意味、聖なるものとか崇高なものがなくなった現代合理世界で、そのような価値の高低のある世界をどこか憧憬しているのかもしれない。

 わたしの問いとして豊穣と多淫の世界観がどうして禁欲的で抑制的に変わったのかという疑問をもつにいたった。その変節の答えとして、安田喜憲のいくつかの著作にヒントがありそうな気がした。『蛇と十字架』や『大地母神の時代』などの著作にわたしの問いに近いものを得られるかもしれないと見当をつけた。

 それでこの本を読んでみたのだが、このイデオロギーにはあまりうなづけるものを見つけられなかった。でも前記の著作はいちおう当ってみる気だけど。

 この安田喜憲の主張は宮崎駿の「もののけ姫」のアニミズム世界に近いものかもしれない。しかし敵は全面的に悪という主張はまったくうけいれることができない。まるで小学生のような悪は問答無用で徹底的につぶしてもよいという独善的世界である。これは一神教のように「おぞましい」世界ではないのか。


龍の文明・太陽の文明 (PHP新書)縄文文明の発見―驚異の三内丸山遺跡森を守る文明・支配する文明 (PHP新書)文明の環境史観 (中公叢書)気候変動の文明史    NTT出版ライブラリーレゾナント006

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検索で貴方のブログ記事にたどり着き、数冊分の書評を読みました。
本ではなくて恐縮ですが、貴方の知的好奇心に【とある世界観】を捧げたいと思い、このコメントを書き込みます。

神は言葉なりきの研究会
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