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12 22
2012

レイライン・死と再生

神々と交合する神聖なる性―『世界の神々と性』 黒沼 健

世界の神々と性 (1967年) (ノンフィクション・シリーズ)
黒沼 健
山王書房 1967

by G-Tools


 アマゾンで「性神」について検索するとそういう日本の土俗信仰について語った本は70年代、80年代を境にほとんどとぎれている。興味も関心もうすれ、神を媒介にした性といった世界観は途絶したかのようだ。

 わたしが興味あるのは世界の創造・再生としての性の役割であり、性は神とどう結びつけられていたのかという世界観だ。放縦だった日本のむかしの性風俗の論理性もそこから見えてくると思うし、人間の私的所有物だけに限定された性観念はあまりにも貧しいし、相対化の視点ももちたいものだ。

 古本で見つけたページが赤茶けて変色したこの本は67年の出版で、もう四十年の月日がたっている。神と性のつながりについて語った本は多くの人の関心をうしなったというよりか、個人所有物としての性観念によって嫌悪の感のほうが近くなっているのではないだろうか。

 この本は神話から性のエピソードをひいてきたり、生殖器崇拝や性の土俗信仰、こんにちでは異常性愛といわれるものが語られている。世界の歴史的性ダイジェストといった本で、性観念を世界にさぐるという好奇心がのこっていた時代をしのばせる。「神聖」な恋愛結婚観に閉じこもってゆくさいごのあだ花だろうか。

 神に捧げる性が神聖で位の高いものであった時代から、私的所有に閉じこめられない性は低くて汚らわしいという性観念の転換。この変化になにを見出し、なにを問うべきだろうか。

 この本からいくつかのエピソードをひろってみる。

 エジプトの太陽神オシリスは牛としてあがめられ、独特の模様がある牛はその神牛とされた。この神牛を生んだ母牛もめでたい奇跡を生んだ牛として、寺の坊さんがこの牛と交わる栄光に浴したということである。一般庶民もお賽銭でこの神牛と交わることができたという。

 桃は女陰崇拝の対象にされていたようで、中国では桃は鬼を追い払うものとして霊力のあるものとされた。桃太郎も「股から生まれた」と解釈することができる。近江の神社には瓦の上に桃が飾られているところも多かったですね。

 愛知県犬山市大県姫宮社では3月15日の前の日曜日に「おそそ祭り」といって、女陰をかたちどった山車が練り歩くそうですね。田県神社では男根のご神体ですね。世界的に有名みたいで、明治の風俗取締りの中でよく生き残っていましたね。

 太陽神オシリスは春の神であり、生殖のシンボルであり、それを人間化したものが隆起した男根像であり、エジプトの女たちは休日になるとこの人形をひっぱって町を練り歩いたという。上記の日本の祭りと同じですね。

 インドでは交合崇拝の歓喜天があり、シバ神も再生の神ということでリンガ(男根)として崇拝されるようになった。ヨニ(女陰)もそえられるようになった。現在のインドでも十月の末、新月の夜にはカリ祭りがおこなわれ、この夜にはいろいろな性的行為がくりひろげられるということですね。

 ラマ教でも両性交構の修法がとかれ、霊肉一致の修法がおこなわれる。歓喜天はこの男女二身の抱擁・交接が具体的に象徴された像ですね。日本では陰陽道と融合した立川流真言がありますね。

 ギリシャでは公娼制度がととのっていて、ヘタイラという階級の公娼は日本の芸をたしなんだ花魁に近く、政治学や哲学の教養もつんでいたそうだ。

 初夜権は文明初期には僧侶や神父、神官がもっていたことがあったのだが、神聖売春の名残り、神の怒りにたいする謝罪、個人的結婚のムラにたいする謝罪、また出血にたいする恐れなどのいろいろの説がとなえられている。

 私秘化、個人所有化した性道徳からは、むかしの人の性規範や性的アナーキーはとんでもないものであったように思われるわけだが、むかしの人はそれなりの性観念や論理性をもっていたと思う。

 自分たちの社会と時代が正しくてほかは異常で病気だと断罪する「自文化中心主義」の愚にはおちいりたくないものである。それは他人の事情や都合をまったくかえりみない自己中の人に通じるのではないかな。同時にそれは自分の視野や生も貧しいものにするのだけどね、拘束着となってね。


▼性神についてはかような本がむかしに出されていたようですね。
性神大成―日本における性器崇拝の史的研究 (1956年) 西岡 秀雄
神がみのエロス―古代日本人の性意識 (1976年) 鳥越 憲三郎
日本性神史 (1961年) 西岡 秀雄
性神の謎―土にまみれた民衆文化史 (1985年) 鯨 清
道祖神のふるさと―性の石神と民間習俗 伊藤 堅吉 遠藤 秀男
性神探訪―東京に残る土俗信仰跡 (1970年) 梶原 景浩
性の神 (1976年) (淡交選書) 橋本 峰雄


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