HOME   >>  書評 労働・フリーター・ニート  >>  給料の決まり方から戦略を考える―『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』 木暮 太一
12 01
2012

書評 労働・フリーター・ニート

給料の決まり方から戦略を考える―『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』 木暮 太一

406138516X僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書)
木暮 太一
講談社 2012-04-26

by G-Tools


 タイトルが泣ける。共鳴するうなり声だね。

 でも社会変革をめざした本ではなくて、個人が市場で儲かる仕事力を鍛えるための方策を示唆した本である。社会思想でない点が、マルクスを解説した前半と個人の勝ち抜け戦略を教えた内容のブッキングに違和感を感じるかな。

 前半の給料の決まり方を知る章は重要だな。給料はみんなが信じているように「がんばり」や「成果」で決まるわけではない。労働力の再生産の必要経費で決まるという。

 この認識は大事ですね。給料はあしたもおなじように働くための生活の必要経費によって決められると。がんばっても、成果を出しても変わらないのだ。

 途上国の給料が安いのはあしたも働くための生活費が安いからだ。同じ商品をつくっていても給料は十分の一とか安いのである。がんばりや成果で給料が決められているわけではない。

 商品も「おいしい/まずい」や「軽くて持ち運びに便利」だとか、「壊れやすい」だとかで決められていると思われるのだが、そうではなくてそれはあくまでも付加的な要素で、原材料の費用で決められる。人間の労働力も同じなのであると。

 この説明部分はマルクスであるとか、ひじょうにていねいにわかりやすく説明されるのだが、この親切丁寧な説明の仕方にはちょっと不快だったな。そこまでながながと図示までしなくてもわかるって。

 基本的にこの本はそういう理論と個人の生き方戦略を教えた本なのであるけど、このような本にするのならさいしょからコンサルタントのように戦略ありきの本のほうが親切であったのではないかと思うけど、まわりくどく理論をくどくど説明されるより、先に戦略から教えてくれたらよかったのにと思う。

 コンサルタントの山本真司の『30歳からの成長戦略』という本はさいしょから生きてゆく戦略を教えた本だ。みんなが習う知識や資格なんてコモディティになってしまう、「好きなもの×人気のないもの」で差別化を狙えとさいしょから戦闘状態だ。理論を説明されるより、さいしょからその戦略を教えてくれたほうが手っ取り早いと思ってしまうのだけど。

 ではどういう働き方を選択すればいいのかというテーマはさいごの5章、6章で説明される。でも給料は生きてゆくための再生産、生活資金で決まるというのなら、なにをやっても同じだとあきらめてしまうのだけど。

 労働力の価値を上げるには、「自分の労働力を消費せずに投資する」という考え方が必要だという。これは大事ですね。単純労働が安いのはその仕事につくためのスキルがすぐに身につくからだから。医者や弁護士は労働力をつくるための原材料費が高いから。

 だから目の前の高い時給に飛びついて、のちのちの資産となる技術をつちかわない仕事はキケンだということだ。過去からの積み上げで食えるようになる仕事をめざすことはひじょうに重要ですね。わたしはこの指摘を痛恨のきわみで受けとるしかないのだけど。。

 流行りものの業界にも警戒が必要だといわれている。長い時間をかけて労力をかけても報われるのは流行の最中だけで、短期間ですぐに売れなくなったり、資産としての価値をなくしてしまう。だから賞味期限の短い業界や職種はできるだけ狙わないほうがいい。

 本も古典のようにながながと売れる本と流行や旬のもので一瞬だけ売れるものがありますね。時事問題や報道はそういう一時的なものの典型であって、わたしもだからこのすぐに消費される問題にはできるだけ飛びつかないし、そんなすぐに忘れれるテーマなんて考えるに値しないと思っている。ちきりんも時事問題なんてほとんど飛びつきませんね。

 まあね、どういう働き方・戦略をもてばいいかと説明したいい本だと思う。給料の決まり方を知らないで努力しても的外れな弾うちである。だけど前半のマルクスの説明はながながとくどくどすぎるね。


[新装版]30歳からの成長戦略35歳までに読むキャリア(しごとえらび)の教科書 就・転職の絶対原則を知る (ちくま新書)10年後に食える仕事、食えない仕事21世紀のキャリア論―想定外変化と専門性細分化深化の時代のキャリア (BEST SOLUTION)僕は君たちに武器を配りたい

関連記事
Comment
Trackback
title>
Trackback URL
Comment form









管理者にだけ表示を許可する






google adsense
全ての記事を表示する
ブックガイド特集
月別アーカイヴ
プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。ビジネス書、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、精神世界、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

twitterはこちら→ueshinzz

FC2カウンター

Page Top