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11 17
2012

歴史・地理

土地・風土のよさを求めて―『千曲川のスケッチ』 島崎 藤村

4003102363千曲川のスケッチ (岩波文庫)
島崎 藤村
岩波書店 2002-02-15

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 自然や風土のよさを楽しめるかなと読んでみたけど、個人的にはほとんど感興はなかったな。景観の美しさをたのしめるわけでもないし、民俗的な興味をそそられるわけでもない。文学者のまさにスケッチであるな。

 まあ、明治の文語体ではなく、日常に使われる言葉で書かれた文学ということで、明治の文学にとっては革命なのだろうけど、わたしのような景観論とか民俗学的興味を期待してもこの本からはあまり得ることはなかった。国木田独歩の『武蔵野』はいまでは読みにくい文章だが、藤村の文章はまったくとどこおりなく読める。

 藤村は明治32年、信州小諸に私塾の国語教師としておもむいている。6~7年のあいだそこで暮らしたあいだに書きためたものがこの本だそうだ。浅間山のふもとの町で、やはり冬の厳しさはハンパなものではなく、春から記述がはじまり、冬にかけて終わっている。

 藤村は「木曾路はすべて山の中」といわれる岐阜県の馬籠で生まれており、この本はたとえば東京と田舎の比較だけで描かれたものではないだろう。都会にしか住んだことがない人の著作ではない。

 岩波文庫の第一刷発行の日付をみると1927年であるとはおどろいた。もう80年前であり、そのあいだに戦争があり、高度成長があり、バブル崩壊があったわけだ。

 著作権も切れているらしく、わざわざお金を出さなくても青空文庫で読める。古典を出している岩波文庫や新潮文庫はとんでもない敵をむかえているわけである。もっともわたしはPCで長文は読めないなとは思っているが。タブレットでないとくつろいで長文を読めない。http://www.aozora.gr.jp/cards/000158/files/1503_14594.html

 こういう土地や風土をえがいた作品としてはわたしはつぎのような作品ならひじょうに読み応えがあったと思う。土地の人たちがどんな暮らしをし、はたらき、生活を営んだかといった人生の記などなら満足だ。以下はその書評ですね。
 
 『窮乏の農村―踏査報告』 猪俣 津南雄

 『わが住む村』 山川 菊栄

 国木田独歩の『武蔵野』はこの『千曲川のスケッチ』とおなじように感興をもたなかった。谷崎 潤一郎の『吉野葛・蘆刈』はべつの意味で感興をいだいたのだが。中上 健次の『紀州』は微妙なところだった。 

 まあ、わたしは土地・風土モノを律儀に読んできたのだけど、当りの本に出会うのはなかなかない。宮本常一はあちこちの土地を渡り歩いた俯瞰を描いているのだけど。


窮乏の農村―踏査報告 (岩波文庫 白 150-1)わが住む村 (岩波文庫 青 162-2)武蔵野 (岩波文庫)吉野葛・蘆刈 (岩波文庫 緑 55-3)紀州 木の国・根の国物語 (角川文庫)

藤村詩集 (新潮文庫 し 2-15) 夜明け前 第1部(上) (岩波文庫) 夜明け前 第二部(下) (岩波文庫) 破戒 (新潮文庫) 夜明け前 第二部(上) (岩波文庫)


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Comment

自然と風土と文章

《自然や風土のよさを楽しめるかなと読んでみたけど、個人的にはほとんど感興はなかったな。景観の美しさをたのしめるわけでもないし、民俗的な興味をそそられるわけでもない。文学者のまさにスケッチであるな。》

 自然や風土を文章で表現するというのは中々難しいものなのでしょうか?言葉で自然の美しさを表現するというのは文豪でも難しいものなのですね。

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