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11 10
2012

レイライン・死と再生

豊穣と再生の尽きない興味―『豊穣と不死の神話』 吉田 敦彦

4791751159豊穣と不死の神話
吉田 敦彦
青土社 1990-11

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 わたしは豊穣と再生の物語に興味があるのだが、それは古代の世界観の要にあるテーマだからだろう。

 そういう世界観にくわしい人はミルチャ・エリアーデ、井本英一、大和岩雄、そしてこの吉田敦彦という人になるだろうか。古代の世界観の基底部を垣間見せてくれるのである。

 この本のさいしょの章で語られた山姥は死んで食べ物をもたらす大地母神というのは意外だった。頭にばっくり口があいて食物や人を食べてしまう山姥は、大地に恵みをもたらす母神だったというのだ。

 昔話で山姥のたれた糞が綾錦になる話がある。山姥は宝物をもたらすのである。日本神話では大地母神は、オホゲツヒメやウケモチという名前で語られている。スサノオやツキヨミが身体から出された食べ物を汚いと切り殺してしまう神である。死体からも食べ物が芽ばえてくる。

 土偶が壊れた破片しか発見されないのは、母神が殺されて食べ物が芽ばえてくる神話に由来するものだろう。

 大地母神は汚いといって切り殺され、破壊することで豊穣がもたらされるとされ、ついには昔話では山姥という妖怪にまで零落してしまうのである。

 スクナビコは、穀粒のように小さく、漏れ落ちたり弾けたりしやすい性質から、穀霊ではないかといわれている。吉野裕子の『蛇』では精子のようなこともいわれていた。

 イザナミは火の神を生んで死んでしまったとされるが、火で焼かれて作物を生じさせる焼畑をさしているのではないかといわれている。イザナミは船や金属、粘土や水の神を生んだとされるが、文化の起源を語っているのである。

 すばるの神話を語った章では、言語の誕生とその獲得による人間の死の発生が語られている。混沌とした不連続の世界に区別がもちこまれ、秩序が発生し、人間には死がもたらされたのである。神話では脱皮をしなくなったから人間は不死ではなくなったというような説明がされている。すばるはあいまいもうことした星団であるが、その対比にはっきりとみえるオリオンが、神話にもちいられたのだろう。

 日本ではこれに近い話が浦島太郎とされていて、玉手箱は不連続の象徴だったということだ。

 メラネシアの同性愛儀礼では口唇性交による精子のうけいれで男になる通過儀礼がたっぷり語られていて、うんざりするのだが、なんでも精液を少年にふくみいれないと「男」になれないらしい。男に「脱皮」するための儀礼が精液の信仰上でなされるのである。

 この通過儀礼に相当する日本のものはナマハゲであって、もとはナマハギ、皮はぎ、脱皮をあらわしていたのだという。脱皮というのは不死のために必要な成長であって、古代に蛇が信仰された理由とつながってくるのである。

 この豊穣と再生のテーマは空間地理的なレイラインの興味を掘っているうちにあらわれてきたテーマだが、まだ興味をつきない。なぜなんだろうかと思うけど、われわれは古代の世界観を表面上はすっかりと忘れているけど、根本は変わらないということに由来しているのではないかと思う。



不死と性の神話日本神話の源流 (講談社学術文庫)神話と民俗のかたちエリアーデ著作集 第2巻 豊饒と再生神々の考古学

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Re: 再度、すいません

> shiny blueさんへ。

リンクも自由になさってもらってもいいですし、批判・検討・解釈も歓迎しております。

初めて書き込みします。

≪なんでも精液を少年にふくみいれないと「男」になれないらしい。男に「脱皮」するための儀礼が精液の信仰上でなされるのである。≫

 この部分は印象的でした。精液の信仰上でなされるというのは驚きました。

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矢部 善城寺の一言

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