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10 27
2012

歴史・地理

天文知識と王と神―『星の民俗学』 野尻 抱影

51sym6cofhL__SL500_AA300_.jpg星の民俗学 (1978年) (講談社学術文庫)
野尻 抱影
講談社 1978-08

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 子どものころは夜空に興味があったような気がするのだが、大人になったら空を見上げなくなったな。星座も星の名前もよく知らない。

 わたしとしてはこの本から夜空の星により季節や天候を知り、それが権力や社会とどう結びついてきたかといったこと探られればいいなと思ったのだけど、この著者は星や星座の幅広い教養を求めているようだ。

 ポリネシア人は星について驚くべき知識をもっていた。月々にどの星がどの空のどの位置にあるのか、年ごとにいつ昇っていつ沈むのかを正確に知っていた。航海には星の知識は必須だったのである。

 ボルネオのダイヤ族は、スバルの高さによって農事作業の時期を判断していた。開墾、伐採、もみ撒き。竹筒でスバルの高さを測るのである。

 沖縄の八重山でも海に三尋のさおを立てて、スバルを観測して、稲の種の種子取り祝いをしたという。

 星は方角や季節を知るたいせつな目印、方位盤やカレンダーでもあったのである。そのカレンダーを知ることは力を付与しただろうし、もし知ることが予言や神やこの世界を支配することと思われたなら、神に近い権力者として祭り上げられただろう。神や王は古代、そういった知識から生まれ出たのではないのか。

 神社も太陽が山のどこから昇るのかを定点観察することによって、春分や秋分、冬至などを知ることができたその場所から生まれたのではないかと思われる。季節を知ることは神の意志を知ること、神がそこにやってくることではなかったのか。星や太陽は神と季節を結びつけ、その知識をもつものに権力を付与したのではないのか。天文知識とは王や神の知識であったのではないだろうか。

 エジプトではシリウスがナイル川の氾濫の時期を知らせる目印となっていた。よって元旦吉旦のめでたい星として礼拝されていた。この氾濫の時期を先に知らせることができるなら沿岸住人を避難させることができるし、乾季のあとの洪水は豊潤な実りをもたらす土壌をはこんでくる。

 天文知識は生活のうえでひじょうに大切な情報をもたらし、それが神や王と結びついてきたのだとしたら、星の知識はこんにちのロマンティックな星座神話どころではない重要な生活の死活知識であったのではないだろうか。

 神や王の生成プロセスがこの天文知識に宿ってきたのではないだろうか。

 ところで銀河は日本では天の川とよばれて七夕のイメージが強い。世界では亡くなった魂があの世へといく道へと思われていたりする。インディアンでは銀河の無数の青白い光は、亡くなった魂が旅の途中で燃やしている焚火だと捉えられていた。日本でも死んだ人は星になったという考えはよく聞くが、あの世は目に見えるものなのである。あの世は神や霊が存在する場所でもある。


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