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思考を捨てることにはこだわってきたから、確認の意味で読む。「考えない練習」という方法が30万部も売れたんだってね。
この本は考えないために五感や身体感覚に集中する方法が説かれている。でも五感って思考みたいに刺激的や魅惑的でないから、つい回想や物思いにふけってしまうのだね。そもそも思考が害悪だという前提がないからすぐに思考のわだちにはまってしまう。
「思考はよいものだ、優れたものを生み出す、思考なしでは動物だ」みたいな前提をもっていると、「考えない」ということはできないだろうね。それで考えすぎて感情のジェットコースター、牢獄に閉じ込められる。思考が病という前提がないと、この状態を一歩ひいた全体像でながめることができない。思考から距離をおいてはじめて、思考のコントロールは可能になる。
なぜ思考がよくないのかという説得力を与えてくれた本はわたしにとってはリチャード・カールソンの『楽天主義セラピー』だ。考えるということは感情の炎にまきをくべる作業だと論理的に教えてもらった。人はこの愚かな連関に気づかないから、思考と感情のじゅずつなぎをどこまでも重ねてしまうのだろうな。
それを知った上で思考の性質を知るための本にはエックハルト・トールの『超シンプルなさとり方』が参考になった。思考を時間の上で見ると、どこにも存在しない想像だということがよくわかる。この『考えない練習』にはこのふたつの大事な原理を読み込めないと思うから、ちょっと役不足かもね。
小池龍之介という人はいま本をつづけざまに出していて、売り出し中のよう。78年生まれの34歳で、東大卒の僧侶。坊さんの言葉をありがたがる層というのはいまでもよくいるのでしょうね。わたしは西洋経由の論理的説明がしっくりきたのだけど、仏教の伝統的用語というのはどうもうけつけないのだろうね。そういう舶来変換のほうが合う人はトランス・パーソナル心理学のほうがいいかもね。
![]() | リチャード・カールソンの楽天主義セラピー リチャード カールソン Richard Carlson 春秋社 1998-12 by G-Tools |
![]() | 人生が楽になる 超シンプルなさとり方 (5次元文庫) エックハルト・トール 飯田 史彦 徳間書店 2007-11-09 by G-Tools |





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