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09 18
2012

書評 社会学

劣等感の補償としての日本人論はいらない―『「日本らしさ」の再発見』 浜口 恵俊

4061588281「日本らしさ」の再発見 (講談社学術文庫)
浜口 恵俊
講談社 1988-05

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 山岸俊男の『心でっかちの日本人』を読んで、日本人は集団主義ではなかったという説を知って、あらためて集団主義について考えたくなったから、この本を読んだのだけど、完全に失敗。

 この本は77年に出た「日本人論ブーム」のころの著作で、問題意識がまったく違う。このころの日本人論ブームというのはアメリカや西欧に遅れた日本人の劣等感の補償や克服というテーマが最大の探究エネルギーであったと思う。そういうルサンチマンの著作や時代のものをいま読んでも意味はないと思う。

 70年代ころに中根千枝の『タテ社会の人間関係』や土居健郎『「甘え」の構造』、木村敏『人と人との間』、公文俊平らの『文明としてのイエ社会』といった著作がブームになっていた。ルース・ベネディクトの『菊と刀』において罪の文化と恥の文化の対比で、日本文化が蔑視されていたから、その克服と補償が大きなテーマになっていた。でもいまはそんな問題意識をほりおこす価値もないだろう。

 文化論といったってしょせんは劣等感の補償や克服なのである。進んだ西欧、遅れた日本という優劣図式で日本の文化人は日本論に熱中していたのだ。

 日本人は集団に隷属し、自立心を欠き、個人主義をもたず、人の評判を気にするという批判を、文化人たちは進んだアメリカや西欧との対比においてくりかえしてた。そのような問題土壌から出た問いは、問いのなかに探究される事柄が閉じ込められている。ほかの問題意識から問うさいに有益なほかの解釈を許すものではない。

 もうあのころの日本人論にふれるのは不快感があるので、これ以上のツッコミはやめておこう。



タテ社会の人間関係 (講談社現代新書 105) 日本 権力構造の謎〈上〉 (ハヤカワ文庫NF) 「日本文化論」の変容―戦後日本の文化とアイデンティティー (中公文庫) 「甘え」の構造 [増補普及版] 「世間体」の構造  社会心理史への試み (講談社学術文庫)
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