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09 01
2012

集団の序列争いと権力闘争

『いじめの構造』 森口 朗

4106102196いじめの構造 (新潮新書)
森口 朗
新潮社 2007-06

by G-Tools


 なんだか自信満々で語られており、この本でハイレベルな議論になる、世のいじめ本の九割は妄言だというわりにはたしいて鋭い分析には出会わない本だった。内藤朝雄とか森田洋司、藤田英典の紹介におおく割かれていて、この人たちは妄言ではない一割の人たちなのか。

 スクール・カーストの帯で興味をひかれたのだけど、その記述もべつにたいしてくわしく分析されているわけでもない。だれかスクール・カーストの詳細な分析本を出さないかな。

 いじめの問題は、校内で犯罪がおこなわれており、それがいじめの名の下に犯罪として扱われていないことがいちばんの問題というのは明確な定義。犯罪でありながら、子どもであるとか学校下であるために犯罪としてあつかわれないのは異常なことである。

 わたしも中学のころは校内暴力・暴力階層の吹き荒れる学校時代をすごしたので、二度とあんなところには戻りたくないと思っているのだが、「犯罪」を放置する学校の姿勢のせいだったと思う。暴力者をあっさりと警察につきだしていたら、わたしの中学時代はどんなに穏やかにすごせたか。

 文部省のいじめの統計によると平成17年度のばあい、いじめられた児童の数は全国平均で1000人あたりに1.5人。99.85%の人がいじめのあわなかったことになる。これがつづくと、12年間で一度もいじめの会わない確率は98%強になる。そんなことはありえないだろう。

 学校にいじめの隠蔽体質があるわけではないと著者はいう。外部から隠蔽体質と見えるだけだという。統計調査にいじめありと認めたがらないし、日常的にいじめ主張につきあわされて鈍感になっている、職員室に低次元のいじめがおこっている、危機対応の能力の欠如などでそう見えるだけという。加害者に罪を告白しなさいといっているようなものだと。

 いじめ自殺がおこれば、親は民事訴訟をおこなう。損害賠償義務を負うか否かは、学校がいじめを認識していたか、認識が可能だったか、対処をおこなったかにかかっている。それで「いじめはなかった」といわざるをえないということである。

 出席停止は最後の手段といわれることが多いのだが、学校教育法にはあっさりとほかの生徒に苦痛や損害を与える者、授業の実施を妨げる行為をした者は出席停止になると書かれている。最後の手段ではないのである。

 やっぱり内藤朝雄のいうように学校にあっさりと警察を入れるべきである。市民社会で暴行や恐喝がおこなわれていたら警察に通報するのはあたりまえである。でも学校ではできない。治外法権や警察のない国が学校内にあるのは異常すぎる。


いじめの構造―なぜ人が怪物になるのか (講談社現代新書)教室の悪魔―見えない「いじめ」を解決するために (ポプラ文庫)いじめとは何か―教室の問題、社会の問題 (中公新書)なぜ、人は平気で「いじめ」をするのか?―透明な暴力と向き合うために (どう考える?ニッポンの教育問題)いじめの社会理論―その生態学的秩序の生成と解体

いじめに立ち向かうワークブック―考え方とどうすべきかを学ぶ 小学校高学年・中学生以上用入門 いじめ対策―小・中・高のいじめ事例から自殺予防までいじめ 予防と対応Q&A73いじめの光景 (集英社文庫)いじめ自殺―12人の親の証言 (岩波現代文庫)

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Comment

うーん。
イジメに構造って…
あるといえばあるのでしょうね…。

私の場合、散々イジメられてきて、心身ともに抜け殻のようになって生きてますが。

私には「世間の人達は慢性的にストックホルム症候群にでも掛かっているんじゃないかな?」と思えてしまいます。
“暴力”というものを前にして、槍玉に挙げられる標的が自分で無い限り「長いものに巻かれろ」的に暴力の発生源に媚びて仲良くしてしまう感じ。

あと、社交的に積極的で皆を自分のペースに巻き込んでコネクションを広げていくタイプの人って曲者のように感じる。
そういう人と接している時に、「相手の想念の鏡像世界に自分のアイデンティティが吸い込まれていくような錯覚」を感じることがあるし。
他人の鏡像世界にアイデンティティを吸い取られると、倫理観が歪んでしまい、自分までストックホルム症候群的な妙な価値観がインストールされてしまう感じ。

そうしてふと気づくと、鏡像世界の中でパワーゲームやらポジションゲームを演じさせられたり…。
私にはどうしても「集団幻想」っぽいところに社会の持つ陰湿さや粘着質さの「病巣」がありそうに思えてしまう。

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