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08 11
2012

書評 ビジネス書

納得するカラクリ―『「即戦力」に頼る会社は必ずダメになる』 松本 順市

4344981464「即戦力」に頼る会社は必ずダメになる (幻冬舎新書)
松本 順市
幻冬舎 2009-09

by G-Tools


 なかなかおもしろかったのではないかな。

 転職で経験者ばかり募集している企業ばかりだから、その理由をさぐれないかなと思って読んでみた。

 まあ、この本は「歩合給」や「ノルマ」「競争」を導入する会社がなぜダメになるのか説得力のある説明をしてくれる。こういうカラクリを理解すると、企業組織の評価のしかたにひとつの見方を得ることができる。

 歩合給の社員は孤立し、思ったような成果をあげられない。なぜならすべての社員は個人事業主のように仕事をして、おたがいに協力することもなく、組織の一員である意識もないからだ。

 歩合給社員はだれかに指導してもらって高い成果をあげられるようになったわけではなく、マネージャーや役職になんのメリットも感じない。組織は教えるとか、助けるの協力体制をもちえず、ばらばらになる。

 給料の多さで転職する人も転職回数が多くなるといわれている。職場で問題が発生すると、解決するよりまず転職を考えるようになる。その問題解決の能力や成長こそが、仕事に求められているものなのだが。

 中途採用している会社の経営者は口をそろえていうそうである。「面接時に聞いたとおりに仕事ができる人はまずいない」。その確率は10%以下だという。

 定着率の低い会社は、求人広告にかける募集費が、ほかの社員の人件費を圧迫して給料が減ることになる。給料が払われるパイの元となる会社の業績をなんら増やしているわけではないからだ。

 「ノルマ」や「競争」、「残業」も会社の成長を止めるといわれている。

 目標管理は上場企業の八割が導入しているという。でも達成率で評価されるなら、低い目標のほうが有利になる。

 競争が会社の成長を止めるのは、優秀な社員は評価されるのはダメ社員がいるからこそだと知っている。ほかの人の成長を助けるより、妨げるほうが自分の評価を上げることになるという皮肉な結果になってしまう。

 この著者は成果主義を自分の成果だけを優先した結果、自分の力も組織の力も落としたと見る。組織の協力や教えあっても安全だという意識をなくして、組織をばらばらにするからだという。

 その理由やカラクリはひじょうに納得できた。ただ年功序列や終身雇用の企業がほんとうにいいのかという安易な直結には進みたくないというばくぜんとした気持ちはのこるのだが。

 残業が多い会社が儲からない理由も、おトクな説明を聞いた。残業は25%の割増料金を払っているのだから、その分だけ生産性を上げられているのか。たんに同じ条件を延長しているだけではないのか。

 また仕事が20%増えたからといって、仕事をする時間も20%増えただけなら、なんら工夫もないことになるといっている。

 ただ漫然と残業した部下を評価する風土ができあがると、会社は割増料金の損金をずっと出しつづけることになる。残業を防ぐためのいい論理を聞いた。

 かくして著者は後輩に安心して教えたり、協力し合う年功序列型の会社を評価することになる。組織を成長させるのはそのような社員同士の協調や協力だったというのである。カラクリには納得するのだけど、この結論には違和感が残る部分である。

 資格については「足の裏の米粒」といわれている。「とった」としても、食べることはできないからだ。

 顧客が求めているのは資格をもっていることではなくて、自社の問題を解決して、元気にしてくれる知恵と力だ。そうした問題解決能力というのは資格で得られるのではなく、目の前の組織の問題を解決することで身につけるものだという。

 問題を解決することによって、人は成長し、強くなってゆくのである。

 なかなか納得できるカラクリを教えてくれて組織に生かせそうな論理を教えてくれる本なのだが、年功序列、終身雇用のような組織を礼賛するようなカタチは情緒的に防御感が残ったなという本だった。


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