FC2ブログ

HOME   >>  書評 哲学・現代思想  >>  「真理や客観などない」―『「自分」を生きるための思想入門』 竹田 青嗣
07 21
2012

書評 哲学・現代思想

「真理や客観などない」―『「自分」を生きるための思想入門』 竹田 青嗣

4480421750「自分」を生きるための思想入門 (ちくま文庫)
竹田 青嗣
筑摩書房 2005-12

by G-Tools


 竹田青嗣は現代思想を勉強するさい、今村仁司とともに参考にさせてもらった。内田樹はそのあとに出てきた哲学者なのでブログはよく読んだが、書籍では読む機会を逸した。

 竹田青嗣の紹介でいちばん知りたかったことは、客観や真理が現代思想ではすでにそんなものはないと宣言されていたことだ。「言語ゲーム」や「ルールの網の目」でしかないというポストモダンの思想をいちばん確認したかった。

 でも学校や世間ではどうも「正解」や「真理」がある、わかるという前提で了解されているようで、この思想と常識のギャップってなんなんでしょうね。学校って「近代」までのもので、ポスト近代になったら学校というところでものを教えられないのでしょうか。

 この「真理なんてない」という考え方を確認したくて、思想のいろいろな本を漁った。やはりこの点で宣言したのは岸田秀の「唯幻論」であり、リオタールの『ポストモダンの条件』であり、ニーチェの『権力への意志』であった。ウィトゲンシュタインはこむづかしそうで、とっつけなかなった。フッサールもはじめから客観世界をあきらめているのですね。

 真理なんてないという宣言は大きな転回をもたらすものであるが、なぜか世間でそういう言葉を聞かないこともあって、わたしは確認作業に念を入れなければならなかった。なぜそんなに確認作業が必要だったかというと、自分たちのもつ「自明性」「常識」「世界観」の強固さ、頑丈さをゆるがせるのがいかにむづかしったかということだ。

「人間が持つ自=他関係の物語は、単なる理解ではなく、必ず彼のこう生きたい(ありうる)を指し示すものだからです。

「関係」が欲望を作るという言い方は、正確には、人が自分と世界をどういう関係として理解しているかが彼の欲望の内実(=形)を作る、と言い直すのが適切です。

欲望そのものがその人が何であるかを決めるのではなく、欲望に対する自己理解が、その人の態度や精神その人の人間が何であるかを決めるわけです」



 「世界観=その人の生き方・欲望」という考え方は理解するのがむづかしかったですね。世界観と欲望は別個のもの、ぜんぜん関係ない切り離されたものと捉えられるからだ。しかし世界観はそのまま欲望を指し示すものなのである。欲望の水路のあり方を切り開くといったらいいか。

 その社会の共通了解の無根拠性を確認したあとに、わたしはトランスパーソナル心理学や仏教の思考の虚構性や幻想性について読み漁ることになった。社会のつぎに思考や意識の幻想性を確認しなければならなかった。わたしたちは「頭で考えること」の根拠や絶対性をいかに頑なに信じているかということだ。現代思想はこの領域にはつっこんでいないのだけどね。

 この本は欲望やエロスについて語られているが、ひさしぶりに再読してみて、欲望を肯定しているのか、欲望をめざすことがいい生き方なのか、ちょっと憮然とした気もちをひきずったままだった。

 わたしはできることなら欲望を肯定する生き方より、欲望を削減する生き方のほうが好みだった。脱俗とか隠遁の思想には共鳴することが多い。だからこの本はちょっとね、と感じる部分も多かった。竹田青嗣は欲望を肯定しているの?、ロマン的な高い欲望は肯定するの?

 竹田青嗣は仏教や東洋哲学の理解がないようで、その面からのまなざしがあったらもっと展望が広がると思うのだけど、西洋哲学だけに頑ななのね。

 竹田青嗣はこの本もふくめて3,4冊は読ませてもらった。そのあとヘーゲルだとかフッサールの読み方を教えた哲学研究者っぽい基本書を出すことが多いようね。今村仁司みたいに思想家も精読しながら、自身も現実と格闘しながら思想を紡ぎだすというタイプではないのね。


▼真理と客観の終了宣言
ものぐさ精神分析 (中公文庫)ポスト・モダンの条件―知・社会・言語ゲーム (叢書言語の政治 (1))ニーチェ全集〈13〉権力への意志 下 (ちくま学芸文庫)自我の終焉―絶対自由への道

▼竹田青嗣の著作
竹田教授の哲学講義21講―21世紀を読み解く完全解読 フッサール『現象学の理念』 (講談社選書メチエ)超解読! はじめてのカント『純粋理性批判』 (講談社現代新書)中学生からの哲学「超」入門―自分の意志を持つということ (ちくまプリマー新書)現象学は思考の原理である (ちくま新書)

人間の未来―ヘーゲル哲学と現代資本主義 (ちくま新書)言語的思考へ- 脱構築と現象学自分探しの哲学―「ほんとうの自分」と「生きる意味」恋愛論 (ちくま学芸文庫)よみがえれ、哲学 (NHKブックス)

関連記事
Comment
Trackback
title>
Trackback URL
Comment form









管理者にだけ表示を許可する






プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

初のKindleセルフ本、発売中。他人に感情を振り回されてばかりいる人、過去を後悔してばかりいる人、必読。長年の習慣から解放される心理セラピー。



twitterはこちら→ueshinzz

google adsense
全ての記事を表示する
ブックガイド特集
月別アーカイヴ
FC2カウンター

Page Top