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07 14
2012

書評 社会学

「常識」や「自明性」の奴隷にならないために―『現代社会学の名著』 杉山光信編

syakaigaku.jpg現代社会学の名著 (中公新書)
杉山 光信
中央公論社 1989-07

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 社会学はどのようなテーマをあつかっているのか知りたかったら、こういう名著を集めたガイドブックを読めばいいのではないだろうか。社会学があつかっているテーマを知ることができる。

 でも社会学なんてテーマは多岐にわたって、それぞれの学者や時代によってもテーマは違うだろう。なによりも自分自身がなにを知りたいかのほうが大事なのであって、その自分の知りたいことにいちばん近い本を読むほうが有益である。

 なまじ学問として教科書に接するとその魅力や醍醐味をそがれてしまう。社会学は日常を生きるうえでの疑問や謎を解き明かす学問であって、それは自分のふだんの生活や思いから立ち上がるものだ。だれか学者のテーマや学問のテーマに沿うかたちで学ぼうとしたら、たぶんに自分の興味をうしなうだろう。

 この本は89年に出された本で、わたしは社会学の本を読むための羅針盤としてひじょうに重宝した本だ。いまはちくま新書から同類の本が出されていて、こちらのほうが最新で魅力的なピンナップがそろっているかな。(『社会学の名著30』ブックリスト)

 この本の中では16冊の社会学およびその関連の名著が紹介されている。軽くその本にコメントをつけくわえる。

 わたしはここで紹介されている本の中でリースマンの『孤独な群集』がいちばん好きかな。リースマンのアメリカ社会の分析は日本の社会にもある、ありふれた行動・現象でいっぱいな気がした。

4622019086孤独な群衆
デイヴィッド・リースマン 加藤 秀俊
みすず書房 1964-02

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 ボードリヤールの消費記号論はまだバブルの記号消費の雰囲気をひきずっていることはものすごく魅力的な本に思えたのだが、自分の記号消費の減退とともにかなり興味をうしなった。でも記号消費が健在な社会はまだまだ存在しているのですよね。

4314007001消費社会の神話と構造 普及版
ジャン ボードリヤール Jean Baudrillard
紀伊國屋書店 1995-02

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 フーコーの『監獄の誕生』も社会学の名著としてとりあげられているが、思想としてくくられることが多いのだが、たしかに問題圏は社会学と歴史学あたりなのかな。そういえば、ニーチェの著作も社会学の範囲に収まるテーマも多いかもね。

4105067036監獄の誕生―監視と処罰
ミシェル・フーコー Michel Foucault
新潮社 1977-09

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 ポール・ウィルスの『ハマータウンの野郎ども』は魅力的な本ですね。学校への反抗が下層階級の労働へとつながる道をつくるのだという指摘はなるほど。わたしは労働について考えるなら、職業貴賎とか職業階層といったものをいちばん知りたかったかな。

4480082964ハマータウンの野郎ども (ちくま学芸文庫)
ポール・E. ウィリス Paul E. Willis
筑摩書房 1996-09

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 ベルの『資本主義の文化的矛盾』はアメリカの文化的状況が克明に描かれていた記憶があり、勤勉な労働と享楽的な消費のあいだに人はひきさかれているといったそうだが、文化的記述にもまれているあいだにそのテーマを見失ったような。

4061580841資本主義の文化的矛盾 上 (講談社学術文庫 84)
ダニエル・ベル 林 雄二郎
講談社 1976-11

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 ゴッフマンの『行為と演技』はカルト的な興味をもちたくなる社会学者だった。この著作しか読んでいないのだが、ほかの著作も読みたいという気もちをずっともっていた。微視的社会学とよばれるエスノメソドロジーとか興味が強かった。

51ZhBgmF8CL.jpg行為と演技―日常生活における自己呈示 (ゴッフマンの社会学 1)
E.ゴッフマン 石黒 毅
誠信書房 1974-11

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 バルトの『神話作用』は「自明なことは暴力である」というテーゼにいちばん興味をひかれていたので読んだのだが、そう強い印象はのこらなかった。バルトは思想家であるが、文芸評論家と思われることが多いのだが、社会学の領域でも捉えることができるようだ。

4329000598神話作用
ロラン・バルト 篠沢 秀夫
現代思潮新社 1967-07-31

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 この紹介本のなかで『ストリート・コーナー・ソサエティ』と『オルレアンのうわさ』は読みたいと思っていたのだが、未読だな。

4641076251ストリート・コーナーソサエティ
ウィリアム・フット ホワイト William Foote Whyte
有斐閣 2000-05

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4622049074オルレアンのうわさ―女性誘拐のうわさとその神話作用
エドガール モラン Edgar Morin
みすず書房 1997-06

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 ハーバーマスはむづかしすぎたのか、ぴんとこなかった。柳田國男の『明治大正世相史』は社会学の本としては読まなかったが、社会史とは捉えることができるのだろうな。

4624011236公共性の構造転換―市民社会の一カテゴリーについての探究
ユルゲン ハーバーマス Jurgen Habermas
未来社 1994-06

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4061590820明治大正史 世相篇 新装版 (講談社学術文庫)
柳田 國男
講談社 1993-07-05

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 以下の本はあまり興味をひかれなかったかな。

61yItXGS4-L__SL500_AA300_.jpg管理社会と民衆理性―日常意識の政治社会学 (1982年)
栗原 彬
新曜社 1982-06

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4480087664貧困の文化―メキシコの“五つの家族” (ちくま学芸文庫)
オスカー ルイス Oscar Lewis
筑摩書房 2003-06

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4622049880玩具と理性―経験の儀式化の諸段階
エリク・H. エリクソン Erik H. Erikson
みすず書房 2000-10

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4006001088時間の比較社会学 (岩波現代文庫)
真木 悠介
岩波書店 2003-08-20

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 社会学というのはこれまでの社会学者や思想家が考えたいと思ったテーマをとりあげているので、どちらかというと自分の疑問や謎をもったものについて考えるのがいちばんだと思う。権威であるとか学説史の流れに添うかたちで考えなければならないことなんてない。自分の疑問や謎をねばりづよく追究するのがいちばんだ。

 社会学は自明性やあたりまえといったものを疑う学問である。「人はどうしてそう行動するのか」「どうしてこれはこう考えられるのか」「これはどうしてこういう決まりになっているのか」という社会のあたりまえや常識となった行動や考えに疑問をさしはさむことである。

 人は社会のあたりまえを疑問に思わないでそれを人に押しつけ、または自分を縛る。あたりまえを自然や超常現象のように思ってしまうと、それが人によってつくられたり、決められたとりきめにすぎないといったことや、比較的最近につくられた現象やとりきめにすぎないことが知られないままになり、その決まりや慣習に盲従してしまうことになってしまう。集合的無意識にして、それに盲従してしまうことは愚かなことではないか。

 社会学はそういったあたりまえ、集合的無意識になったものをもういちど言葉や意識にして、その有効性や合理性を問うものである。はたしていまもこれを採用する妥当性、合理性はあるのかといった問いを意識にとりもどせるだろう。

 社会学は「眠り」や「無意識」になっている慣習や常識をもういちど考えなおす思考のスタイルである。それに従う必要はあるのかという問いは無意識になっている鎖や首輪を解き放ってくれるだろう。社会学とは「解放」と「覚醒」の機会をあたえるのである。

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