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07 10
2012

書評 社会学

自尊心と承認欲についてのオススメの本

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 なぜわれわれは人からバカにされたり、劣っていると見られることを恐れるのだろう。なぜ自分の価値を人に認めてもらうため、他人に自分の価値を四六時中、表明しなければならないのだろう。わたしたちはどうして自尊心をこんなに求めてやまないのだろう。

 自尊心は社会学や心理学の主要テーマになってもおかしくないと思うのだが、知見が狭いためか、あまり評判の高い本のことは聞かない。人生の一大テーマな気がするのだが、だれもが探究されるべきテーマとして捉えられているように思えない。この自尊心について客観的な目を養うことは、自尊心と向き合うには益すること多いと思うのだが。

 自尊心の客観視・相対化というのは、それに埋没してふりまわされていた姿を外側から見る視点を育てる。それを引きおろしたり、覚めた目で傍観できる立場をつくる。自尊心の「使用上の用法と効果」について知ることは、その副作用や影響につぶされないためにぜひ知っておくべきだと思う。

 ということで自尊心についてふれたわたしのオススメ本を何冊か紹介する。


4569666035人生がうまくいく、とっておきの考え方―自分を信じるだけで、いいことがどんどん起こる! (PHP文庫)
ジェリー ミンチントン Jerry Minchinton
PHP研究所 2006-03

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 自尊心についての詳細な観察眼に舌を巻く著である。なんでこんなに劣等感や心のパターンがわかるのかというほど、その内実が解剖されている。たぶん個人の心のコンプレックスや自責思考は似通っているのだろう、というか同じパターンで構成されているのかもしれない。

 著者ミンチントンは自尊心は自分を責める心をとりのぞけば、しぜんによみがえるものだという。自尊心はもともとそなわっているものなのだ。親や世間から植えつけられたまちがった批判やネガティブな自己評価をとりのぞけばいいのだという。

 残念なことにこの本はPHP文庫で絶版になっており、わたし的には名著と思うのだが、どうして読まれないのだろう。自尊心とかプライドってあまり客観視したくないのかな。


4087734404もうひとつの愛を哲学する ―ステイタスの不安―
アラン・ド・ボトン 安引 宏
集英社 2005-11-04

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 自尊心や承認されることの百科全書のような本で、自尊心についてのこれほどの本を見たことがない。それにしてもこの本にかんする評判をあまり聞かないのは、わたしたちは自己を突き動かすエネルギーの正体を見極めようとしないのだろう。「なぜ」を問うときは挫折したり、それが手に入らないときである。だからかなあ。

 われわれは人から賞賛されたり、注目されたり、仲間集団と認められないと、ずいぶんと自分の価値の喪失にさいなまされる。だから必死にステータスや承認を求める。それをこの本では親の愛にたいするもうひとつの愛――世間から愛されたいことだといっている。創作や豪華な所有物はそのわたしたちが認められようとしてきて「泣いてきた」証なのである。

 わたしたちは自由で平等な社会で、前近代より過酷な承認されない、ステータスの不安に脅かされる時代につき落とされている。その不安から解放されるための古今東西のさまざまな方法がのべられたのが本書だ。名著だと思うんだけどなあ。



CIMG0001_1111_20120708114451.jpg捨てて強くなる―ひらき直りの人生論 (ワニ文庫)
桜木 健古
ベストセラーズ 1984-01

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 この本を紹介するのはおもちゃみたいなひと昔前の自己啓発書だからはばかれるのだけど、類書を知らないのでこの本を推すしかない。

 けっきょく人間は人より優れたり、勝ちたいと思うのは、人との比較をするからである。その比較競争を超越する方法が、「愚か」になったり、「無価値」になるという、逆説と脱落の方法で提示されたのが本書である。

 これは伝統的に仏教がいってきた方法である。落ちこぼれたり、脱落することによって、世間の価値観や序列から超越する。この「下に落ちる」ことによって、人間界の比較序列から自由になる。人は「負けたくない」「劣った人間に見られたくない」というプライドからいつまでも無益で徒労な比較競争から逃れられないのである。

 このような脱落が人格的な「悟り」とよばれたきたことかなと思うのだけど、「下から脱出」していった人たちって現在の日本にはあまりいないのかな。わたしたちは自分の価値を人に認められようとして、いつまでもその苦悩から離れられない。


400338041Xキリストにならいて (岩波文庫)
トマス・ア・ケンピス 大沢 章
岩波書店 1960-05-25

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 人の気持や言葉のうえに自分の価値や承認を求めてしまうから、わたしたちはいっときも休まることがなく、そしてさまざまな努力や競争から離れられない。

 キリスト教はその苦悩を「神」という視点をおくことによって、その苦しみから逃れる方法を教える。人に認められなくても、神はなにもしなくても、あなたの「存在自体」を丸ごと、承認するというのである。

 キリスト教は人に認められたいという根源的な欲求を、神というエクスキューズをおくことによって、見事にその苦痛から解放される考え方を提示したといえる。

 だからなにもキリスト教をすすめるわけではない。キリスト教には人間の苦悩を解放させる知恵の方法がいくつも提示されている。その世俗的なかたちを多くあらわした著が、トマス・ア・ケンピスのこの書である。人間界の苦悩の解放の仕方は、このようにすればいいのかというテクニックの面で参考になる書だと思う。


4896914988わたしを認めよ! (新書y)
勢古 浩爾
洋泉社 2000-11

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 人はどうして認められたいと思うのかという本は山ほど出ていてもおかしくないと思うのだが、そう問う本はめったに見当たらないし、人々の口にのぼったり関心を集めるわけではない。なぜなんだろう。

 新書で手に入る承認欲求についての本である。むかしは家族や性、社会から承認を求める時代だった。しかし80年代ころから、自己とカネとセックスによる承認が肥大化してきたという。メディアから承認されたい欲求も強くてそれはアイドルとか俳優に人気にあらわれていただろうし、ネットの拡大もそのメディアによる承認の延長線上にあるものだろう。

 いまは他人が認めてくれなくてもいい、自分だけが認めればいいという風潮が増えてきているという。でもそれゆえに激しく他者の承認は求められるのだという。

 承認を求めてしまう人間のすがたを客観的に見るために参考になる本だろう。


4102033017幸福について―人生論 (新潮文庫)
ショーペンハウアー 橋本 文夫
新潮社 1958-10

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ショーペンハウアーはこの本のなかで人に頼らない孤独な精神の自由をすすめた。人に認められたり、価値を認められるためにする社交の努力は自分を損なったり、無益な気苦労を増すばかりで、おおよそ自分のためにならないと説いた。

 人に認められたいという気持を引き下げれば、個人の自由な生きかたが孤独な自由とともに手に入るといった。

 こんにちでは友だちがいないだとか、孤独だとか、非社交性はなにかの欠陥や障害だと思われている。ショーペンハウアーはその風潮にまったく対立する意見を吐く。じつは社交にしか価値を見いだせない人が欠陥なのであると。

 人に自分の価値や有用性を認めてもらう恐れから退却すると、人は自由にいきられるのではないだろうか。ま、極端に走らないで中庸のバランスも必要だと思うけど。



4003361016自省録 (岩波文庫)
マルクスアウレーリウス 神谷 美恵子
岩波書店 2007-02-16

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 アウレーリウスはそう多くは自尊心について語ったわけではないけど、死後の名声に囚われることの解放を説いている。

 人は死後に人々に名前を覚えられることが生きている証だとか、死のつらさを緩和する価値だと思うようである。でも死んでしまえば、それを知ることも、感じる肉体もいっさい滅びているのである。この慰めのためにこの生を苦闘や焦りに終わらせるほうが問題なのではないか。

 わたしたちは想像上の慰めを大事にあつかいすぎているのである。


4795223661グルジェフとクリシュナムルティ―エソテリック心理学入門
ハリー ベンジャミン Harry Benjamin
コスモスライブラリー 2000-09

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 わたしたちが認められようとしていることはすべて想像上の出来事にすぎないのではないのか。

 頭のなかの「わたし」というのはたんに想像上の存在、概念、イメージのかたまりにすぎないのではないのか。わたしたちはこの想像上の存在を守っているのにすぎないのではないのか。

 「自我」というのは頭のなかの「おしゃべり」として存在している。人に侮辱されたり、軽いあつかいをうければ、頭のなかのおしゃべりは自己の価値を回復させるべき、ひとりごとをはじめる。

 「自我」というのは自己賛美と自己正当化のキャンペーンにすぎないのではないのか。その想像上の存在を脱落させたり、スルーする訓練を、禅や仏教、神秘思想はおこなってきたのではないか。

 このことを知れば、自尊心のつきあいかたはだいぶ変わるのではないだろうか。宗教や神秘思想だけの知識にしておくのはもったいない見解である。



▼自尊心、承認欲求の関連書
自尊心を育てるワークブックなぜ自信が持てないのか―自己価値感の心理学 (PHP新書)恥と自尊心―その起源から心理療法へ自己評価の心理学―なぜあの人は自分に自信があるのかプライド――アメリカ社会と黒人

ステータス症候群―社会格差という病「認められたい」の正体 ― 承認不安の時代 (講談社現代新書)承認欲求―「認められたい」をどう活かすか?人はなぜ認められたいのか―アイデンティティ依存の社会学認められたい欲望と過剰な自分語り―そして居合わせた他者・過去とともにある私へ

人に認められなくてもいい (PHP新書)承認をめぐる闘争―社会的コンフリクトの道徳的文法 (叢書・ウニベルシタス)歴史の終わり〈上〉歴史の「終点」に立つ最後の人間有閑階級の理論―制度の進化に関する経済学的研究 (ちくま学芸文庫)


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全く新しい自尊心の解釈

最近このサイトを見つけました。
http://ameblo.jp/gaikotsu-jin/

どうなんでしょうか?本当に憂鬱質が原因なのでしょうか?

「考えるための書評集」素晴らしいサイトですね
参考にさせていただきます
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