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06 17
2012

社会批評

この四十年でおこった変化

 四十半ばまで生きてきて、四十年間も生きた気もちがまったくない。四十年もたったなんて信じられない。わたしは変わらず、時間という概念だけが飛び去っていった感がひとしおにするだけである。

 子どもの時には四十年前はすごいむかしに思えるのだろうけど、本人には四十年の月日の重みはまったくない。生まれる前の時間はものすごくむかしに感じるのだろうけど、生きて過ごした期間はあっという間というか、四十年という月日の積み重ねを感じさせるものではない。

 四十年というのはひとむかし前、あるいは二十年をひとむかしと考えるとふたむかしも年月がたったのだなあ。むかしの常識やあたりまえの風景を知っているものとして、三十年、四十年前の常識がどのように変貌したのか、その点をぬきだして考えてみたい。

 コンビニができはじめたのは三十年前ほどである。駅前にできないでぽつりと駅からはなれた辺境にコンビニができたときはどう関わっていいかわからない存在であった。小学校近くの文房具屋や近所のパン屋に近い存在であったか。駅前の商店街から離れたところに店ができるという感覚がわからなかった。

 この十年、二十年の大変化というのは繁栄の中心が鉄道の駅から、クルマのロードサイドに店の繁栄が移ったことである。クルマとモータリゼーションが駅前の繁栄地図を変えてしまった。駅前の商店街がまさかシャッターロードになるとは思わなかった。

 スーパーももっと品揃えが充実していた気がするのだが、いまは食品中心の店が多くなって衣料とか雑貨は都心の中心街・専門街で買うことが多くなった。イオン・モールのような郊外型のロードショップの繁栄はひとむかし前では考えられなかったことだろう。アメリカのようなモータリゼーションがこの狭い日本でこれほどまでに浸透するとは思わなかった。

 ジュースの自販機が町のあちこちにおかれるようになったのもこの数十年のことだろう。子どものころは家でいれた麦茶のボトルを持ち歩いたものだ。どこへいっても喉の渇きを感じればそこで携帯できる飲み物缶が買えるというのは新しい行動形態だろう。飲み物の心配を家を出る前にしなくていいのだ。むかしは喉が渇いたときは喫茶店で休んだり、あるいは自分でもって出かけたものだろうか。

 駅前の本屋がなくなったのもこの数十年の大きな変化だろう。大型の古本屋が郊外にたくさんできるなんてことも考えられなかった。マンガの古本がこんなにかんたんに手に入るようなことはむかしはなかった。

 駅前とか商店街、近郊の店がつぎつぎと閉まっていったのはロードショップに繁栄を奪われたというのもあるだろうが、それよりか高齢化によって店主や後継者をうしなったことも大きいのだろう。平日の昼間に高齢者が公園にたむろするという風景はひと昔前には見なかったものだ。

 二十年前は日本のクルマや家電は世界を席巻して、世界の繁栄の中心に躍り出るまさにそのときだという雰囲気が充満していたのだけど、いまは見る影もなく没落のあきらめと受容の雰囲気をこうむりつづけている。若者が未来の希望や夢を抱けなくなった転げ落ちる時代というのももう二十年も月日を重ねている。

 この数十年の変化の中でいちばん大きな萌芽はインターネットの出現とケータイの普及だろう。変化は個人のメディア化という状況を現在も拡大中である。この変化が後の社会にあたえる影響は後年でないと計り知れるものではないのだろう。

 ネットは鉄道やクルマがあたえた変化ほどの大きさで社会を変えてゆくのだろう。鉄道や車は空間の編集をおこなったのだが、ネットは空間やモノを移動させないで情報を移動させるだけで変化や結果を変えるインパクトをあたえる。モノや空間に付随していた情報を、情報だけの移動ですませることができる。空間を移動しなくても情報を知ることができる変化は大きな変貌をもたらすだろう。

 四十年という月日は変わったことと、変わらないことの比重はどちらが大きいかと問うと、たぶん変わらなかったことのほうが大きいと思う。育った街をひさしぶりに訪ねてみると駅前は大きく変わったとしても、街のつくりやありようの根本は変わった感じがしない。四十年は長い気もするが、変化は少ないと思う。

 四十年という月日ははるかむかしのことなのか、短い期間なのか、わたしの中ではうまく定まっていない。四十年は長い期間なのか、短い期間なのか、ただ年月のたつ早さに呆然と立ちつくすだけである。浦島太郎の気分がよくわかる。


生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)明治大正史 世相篇 新装版 (講談社学術文庫)なぜ年をとると時間の経つのが速くなるのか 記憶と時間の心理学大人の時間はなぜ短いのか  (集英社新書)

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